(1)病態

 手指のまん中の関節の骨折です。手指の関節の骨折では、もっとも治療が困難で、手術が選択されることが多い骨折です。

 指先から2つ目の関節を脱臼することをPIP関節脱臼といい、しばしば骨折を伴う脱臼骨折となります。これは、突き指をしたときや、関節が本来動く範囲を超えて強制的に動かされたときに生じます。
 
(2)治療

 関節が安定していればシーネなどで外固定して治療します。指専用のアルフェンスシーネ(↓写真)で外固定します。関節が不安定で、関節面に40%以上のズレが認められるときは、手術が選択されます。細い骨の固定では毎度おなじみ、キルシュナー鋼線(という専用の針金)で固定します。靱帯断裂では、骨髄内からの陥没骨片の整復、ピンを用いた骨折の安定化などをおこないます。

 拘縮や変形が進み、強く固定する必要がある時は、創外固定器という持続牽引装置が用いられてきました。最近は変形癒合のときは、良好な機能は期待できないため、再建手術を要します。矯正骨切り手術や、肋骨肋軟骨を移植して関節を再建する手術が行われます。手指であっても、人工関節置換術や関節固定術などが選択されることがあります。
  
(3)後遺障害のポイント

 処置が良好でも指関節の拘縮が避けられず、関節可動域制限を残した場合は、機能障害として可動域の計測を行い申請します。序論 手指の機能障害をご参照下さい。
 
 👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~ 手指の機能障害
 
 また、可動域制限は基準に満たない程度に回復したが、脱臼骨折した部分に骨片(骨のかけら)が癒合せずに残った認定例も載せます。可動域が回復したから後遺障害は取れません・・・ではなく、癒合不良はないか?、痛みや不具合はどうか?、障害を複眼的にみる必要があるのです。世の多くの被害者さんは、その観察が及ばず、頼んだ弁護士も気づかず・・取りこぼしていると憂慮しています。
 
 骨片の存在から認定を受けた例 👉 14級6号:第5指PIP関節脱臼骨折(30代女性・静岡県) 
 
◆ 以前の特集ページにもまとめてあります。こちらも参考して下さい。 👉 手指の骨折・脱臼 5選 ④ PIP関節脱臼骨折
 
 次回 ⇒ 母指CM関節脱臼