中手骨基底部骨折 (ちゅうしゅこつきていぶこっせつ)

(1)病態

 基底部骨折は、直接の打撲などで発症しています。脱臼骨折では、手部の隆起、突出、手指の顕著な変形が見られます。親指の中手骨骨折は、付け根部分に発生することが多いのですが、親指の中手骨基底部関節内の脱臼骨折では、尺側基底部に骨片を残し、遠位骨片が橈側近位へ向けてズレるものをベネット骨折と呼んでいます。
 
 ベネット骨折の実例 👉 10級7号:ベネット骨折(40代男性・埼玉県)
 
 交通事故では、手を固く握った状態で、打撃、打撲などの衝撃が加わって発症しています。この骨折は整復位保持が困難な骨折として知られており、わずかなズレが残っても痛みが持続し、親指に機能障害を残すことから、手術が選択されています。
 
(2)治療

 基本的に先の中手骨「頚部骨折」に同じです。軽度であれば、例えば亀裂骨折(ひびが入っただけ)は、サポーター等の外固定、保存療法で癒合を待ちます。およそ6週間程度の固定で改善が得られますが、重度の腱損傷や骨折を伴うときは、手術が選択されています。骨折部が連続性を失っている(折れた骨が離れている)場合は、小型のプレート&スクリューで固定します。あるいは、髄内にキルシュナー鋼線を通して固定します。さらに、転位(骨折部がズレてしまう)を防ぐため、外側からシーネで外固定も加えます。

 骨折型、粉砕の程度、軟部組織の損傷の程度によっては、手術後に指拘縮が起こりやすく、また、発生部位に関わらず、整復が不完全なときは、運動障害や運動痛を残します。
 
(3)後遺障害のポイント
 
 基底部骨折も、MP関節の可動域制限が予想されます。機能障害にまで至らない場合でも、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。
 
 以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。
 
 👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~ 手指の機能障害
     
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