(1)等級表

 指の切断です。一覧表を見て頂いた方が早いと思います。


 
(2)治療

 鋭利な刃物で、スパッと切り落としたギロチン切断では、血管や神経の切り口も綺麗で、再接着の成功率は高いのですが、それに比べ、何かに巻き込まれ指肢を切断してしまった引き抜き切断は、血管も神経もズタズタで、再接着の成功率は、ほとんどありません。再接着は、専門医の領域で、現在はマイクロサージャリー(※)、顕微鏡下での手術により、細い神経や血管の接合術が行われています。
 
※ マイクロサージャリー・・・手術用ルーペや手術用顕微鏡を用いた術式。世界初の切断指の再接着や、遊離皮弁移植術は日本で実施されました。
 
 医師に教わったのですが、切断面がきれいな場合は再接合の可能性が高いので、切断された指をビニールに入れ、そのビニールごと氷水の袋に入れて、病院に急いで行くように、とのことです。
 
 切断はそもそも非可逆的損傷ですから、切断肢の断端形成が完了し、幻肢痛が改善したときが、症状固定のタイミングとなります。断端形成とは、切断端を皮膚で覆う形成術のことです。
  
(3)後遺障害のポイント
 
 指1本の切断で見ていきますと、以下の通りです。
 
Ⅰ. 手指は母指(親指)、示指(人差し指)、中指、環指(薬指)、小指の5本で構成されています。機能的な面で、一番大切なのは母指です。母指は手指全体の機能の40%を占めるとされており、これを失うと後遺障害等級も9級12号と重い等級が認定されます。
 
Ⅱ. 次に大事なのは、小指と言われています。母指と小指で物を挟めるだけで、その手の能力は高まると言われており、小指の欠損は、12級9号が認定されています。
 
Ⅲ. 3番目に大事なのは薬指で、等級序列では2番目、11級6号が認定されています。示指・中指・環指の切断は、同列の扱いです。
 
Ⅳ. 4番目に大事なのは中指で、優先順位の最後は示指とされています。確かに示指は日常ではあまり使わないのかもしれません。でもPCを使用する方にとっては命取りと思います。

 手指を失ったものとは、母指では、指節間関節=IPより先、その他の指では、近位指節間関節=PIPより先となります。

 母指以外では、第1関節=DIPより先を失っても、14級6号が認定されるに過ぎません。このケースでは、DIPより先の2分の1以上を失っていれば、14級6号の認定です。

 爪の生え際から先の部分の欠損は、DIPより先の1/2に満たない場合が多く、切断指の等級を逃します。この場合、痛みの残存で14級9号の対象になるかと思います。

 指は人体にとって、作業をする、道具を使うなど、大事な機能を有していますが、今一つ、等級が軽く感じてしまいます。
 
◆ その世界では、エンコ詰める(※)ことは落とし前をつける行為とされています。多くは、小指の第2関節部分から落とすようです(12級9号)。次いで、薬指でしょうか(11級8号)。

 また、かつて国内に多く存在した炭鉱ですが、石油が主流となって閉鎖が続出しました。炭鉱夫の一部は先の生活に困ることから保険金の為に、事故を装って自ら指を落としたそうです。これを「タコ」と呼んでいました。タコはお腹がすくと、自らの指を食べてしまうことを例えたものです。保険金が最も高い親指が多かったそうです。タコはまた生えてきますが、当然ですが人間は生えてきません。

※ エンコ詰める=指詰め(ゆびつめ)とは、指を刃物で切断する行為である。 主に暴力団に見られる慣習であり、反省、抗議、謝罪などの意思表示として用いられる。<ウィキペディアより> 
  
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