手根不安定症(しゅこんふあんていしょう)

(1)病態

 手根骨脱臼・骨折に伴う、外傷性の二次性疾患のことです。手根骨は2列に配列された8つの小さな骨が、関節と靭帯で結合して構成されていますが、手根不安定症は、それぞれを連結する靭帯が断裂あるいは弛緩することにより、発症します。

 手関節の可動域制限、運動時痛、握力の低下、有痛性のクリック音等の症状をもたらす症候群を、手根不安定症といいます。やはり、通常のXPでは見逃されることが多く、専門医によるMRI、各種ストレス撮影や関節造影検査などで立証しなければなりません。
 
(2)対策

 本来の捻挫とは、靭帯、半月板、関節包、腱などの軟部組織の部分的な損傷のことです。今でも、XPで骨折や脱臼が認められないものは単なる捻挫の扱いで、治療が軽視されています。手がジクジク痛み、握力が低下しているときは、受傷から2ヶ月以内に、専門医を受診することをお勧めします。

 確かに、数週間の安静、固定で治癒するものが多数であることも事実ですが、不十分な固定と、その後の不適切なリハビリにより、部分的な損傷が完全な断裂に発展することや、本当は、完全に断裂していて、手術以外の治療では、改善が得られないものの見落としも発生しています。
 
(3)後遺障害のポイント 

Ⅰ. 初期に適切な治療が実施されなかったことを理由として、不安定性を残し、痛みや握力の低下などの後遺障害を残したことになります。可動域制限に至れば、可動域によって10級10号12級6号が検討されます。

Ⅱ. 痛みの残存では、画像上、手根骨の癒合不良や転位が明らかであれば12級13号が検討されます。画像上、問題がない場合でも、症状の一貫性から14級9号の余地を残します。
 
◆ 手根骨の不安定症が診断される時期は、受傷からしばらく経った後が多いと思います。手根骨の骨折を含め、腕の橈骨・尺骨の骨折の治療を経た後に、結果的に残存した症状です。すると、事故外傷との因果関係で、自賠責は慎重に調査することになります。具体的には、受診したすべての病院に医療調査・回答書を送ります。専門医は正確な回答が期待できますが、直後の救急救命では、直後の状態しかわかりません。将来の不安定症など予想は難しいものです。また、町の整形外科で予後のリハビリを担ったはずですが、可動域回復の訓練や消炎鎮痛の処置が限界です。そこで頓珍漢な回答がされることがありませす。専門医以外への回答は不安なのです。

 秋葉事務所では、申請後の医療照会に備えて、すべての病院に同行するなど、大変にきめ細かく、手間のかかる調査を強いられています。なにより、不安定症に至らないよう、専門医にお連れして、的確な治療と理学療法を実施させています。後遺症など残さないに限ります。
 
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