キーンベック病 = 月状骨軟化症(げつじょうこつなんかしょう)

(1)病態

 キーンベック病は、月状骨無腐性壊死・月状骨軟化症とも呼ばれており、外傷後だけでなく、振動ドリル等で手を酷使する人、大工、農林漁業などで、手をよく使う人にも発症しています。

 月状骨は、周囲が軟骨に囲まれており、血行に乏しく、容易に壊死するのです。交通事故では、前腕骨、橈骨、尺骨の脱臼や骨折により、2つの骨のバランスが崩れ、手関節内で月状骨にかかる圧力が強くなり、二次的障害として発症しています。

 また、月状骨の不顕性骨折を見落としたことで、キーンベック病を発症することも予想されます。症状は、手首の疼痛、痛みを原因とした手関節の可動域制限、握力の低下です。月状骨が潰れる外傷で、初期では、血行不良により、XPやMRIで月状骨の輝度変化が出現します。末期には、無腐性壊死となり、潰れて扁平化します。

↑ 末期の月状骨は、潰れて扁平化します

 
(2)治療

 軽症では、サポーターの装用や、手を休ませることで、改善が得られます。重症例では、橈骨、尺骨のバランスを整える骨切り術が行われていま。そこでまひどくしないよう、専門医の受診を急ぐべきと思います。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. 専門医が適切に対処したときは、後遺障害を残すことなく、改善が得られています。
 
Ⅱ. XP検査は実施したが、MRIの撮影を怠り、月状骨の不顕性骨折を見落としてしまうことが、治療現場で多く見られます。よって、ほとんどで、後遺障害は残ってしまいます。
 
Ⅲ. 手関節の可動域が制限されたときは、手関節の可動域制限で12級6号が認定されます。
 
 可動域によって10級10号か12級6号の認定を先に受けてから、骨切り術を検討することになります。
 
Ⅳ. 先に手術を選択場合ですが、術後のリハビリで可動域制限が回避できた場合でも、痛み・不具合が残存から14級9号は取っておくべきと思います。
 
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