三角・月状骨間 解離 (さんかく・げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、三角・月状骨間の靭帯が断裂して発症します。

 手関節の疼痛、可動域制限などがあり、月状骨と三角骨のある尺側部分に圧痛点が見られます。XPの舟状・月状骨角は20°以下で手根掌屈変形が認められます。XP、手関節正面像では、月状骨三角骨間での両骨間に間隙が存在します。月状・三角骨 開離は、前回の舟状・月状骨 開離に次いで高頻度に発生するものです。両骨間の靭帯が過伸展、あるいは断裂した状態なので、手根靱帯損傷(LT靱帯開離)とも言われます。
  
(2)治療

 単独損傷の場合、発見が難しいもので、通常のXPでは見逃されることが多く、ジクジクした痛みが続くときは、専門医によるMRI、各種ストレス撮影や関節造影検査などで立証しなければなりません。

 初期には保存療法とし、ギプスや装具で外固定します。ただし、改善の無いまま放置すると、慢性の手関節痛となります。また、TFCC損傷を併発することもあり、次いで、尺骨突き上げ症候群となれば、TFCCの円盤部の摩耗や断裂が生じ、進行するとLT靱帯が断裂します。

 痛みどころか、手関節の可動域制限が生じたとなれば手術適用です。まず、関節鏡から術式の検討をします。損傷程度により、鏡視下デブリードマンを実施、開離2mm以上でピンニング固定します。簡単に言いますと、デブリードマンは、両骨の間隙にある離開の原因となる不要な組織を取り除く掃除です。ピンニングは、両骨を細い金属ピンでホチキス止めのようにくっつけます。
 
(3)後遺障害のポイント 

Ⅰ. 後遺障害等級は、手関節の機能障害で12級6号を視野に入れます。オペが上手くいけば、10級以上の可動域制限は残らないはずです。10級以上は、周辺の骨折を併発した複合的な障害のようです。


  
Ⅱ. オペで離開を修復できた場合でも、痛みや不具合が残ることがあります。その場合、神経症状:14級9号の審査に付します。どの傷病名でも言えますが、確定診断が遅れた場合は、事故との因果関係が疑われます。つまり、14級すら逃すことになります。町の整形外科で、この診断名にたどりつくことは難しいものです。確定診断ができる専門医に早く受診することが大事です。手根骨のケガで最大の問題は、手関節の専門科・専門医が少ないことでしょうか。
 
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