舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)

(1)病態

 舟状骨(しゅうじょうこつ)は親指のつけ根に存在しています。転んで手のひらを強くつくと、手関節を構成する手根骨の1つ、舟状骨が骨折することがあります。交通事故では、自転車とバイクの運転者に多く起こります。経験上、手根骨では一番骨折の多い骨と思っています。

 舟状骨骨折の症状は、手関節を動かすと痛みが強く、手のひらの親指側を押すと痛みが出現することで、握力は低下します。

 相談会では、被害者さんの訴えで予想を2分しています。親指のつけ根が痛んだら舟状骨骨折、小指のつけ根が痛んだらTFCC損傷を疑います。舟状骨は手関節にある8つの手根骨の1つで親指側にあり、手根骨の中でも重要なものの1つです。船底のような彎曲をしているので船のような形の骨ということで舟状骨と呼びます。舟状骨は、親指の列にあり、他の指の列とは45°傾斜して存在しています。そのため舟状骨の骨折は、通常のXPでは見えにくく、見逃されることが多いのです。やはり、他の手根骨同様、XPよりもCTが有用です。

 舟状骨は血液の流れが悪いため、骨が付きにくく、偽関節になりやすい特徴があります。骨折と骨の血行状態を知るには、MRIが役立ちます。骨癒合の経過観察に医師から指示されるはずです。と言うか、MRI検査をしてくれないと困ります。
 
(2)治療

 前回の有頭骨に同じく、骨折部が亀裂程度では、保存的に癒合を待つことになります。骨折部が離開してしまうと、癒合しない=偽関節になる可能性が高い骨ですから、手術必至となります。スクリュー(headless compression screwなど)で固定、骨の欠損部が大きい場合、自家骨移植を行った上で固定します。

 レントゲンで「異常なし」と言われ、だらだら湿布をもらいに通うだけ・・・。手首の痛みが、なかなかとれないときには、舟状骨骨折を疑って専門医を受診してください。骨折を見逃した医師を恨むより、自ら動かなかければなりません。
 
(3)後遺障害のポイント 

 舟状骨単独の骨折から、手関節に深刻な可動域制限は起きないものです。機能障害が認定されたものは、他の手根骨の骨折・脱臼や橈骨・尺骨・中手骨骨折を併発していました。適切な治療をすれば、通常、手関節の機能障害は防げるはずです。
 
 手関節の多発骨折が重なった例 👉 傷害保険 併合9級:両舟状骨骨折(40代男性・東京都)
 
 骨折部に痛みを残しており、変形骨癒合が確認できれば12級13号、変形が微妙であれば、14級9号に下がります。
 
 痛みの残存で認定 👉 14級9号:舟状骨骨折(50代女性・埼玉県)
  
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