有頭骨骨折(ゆうとうこつこっせつ)

(1)病態

 有頭骨とは、中指の中手骨の真下にある手根骨の1つで、右手では有鈎骨の左横に位置しています。交通事故では、転倒した際に手をつく、あるいは、直接の打撲で骨折することが多く、自転車やバイクの事故で多く損傷する場所です。有頭骨の骨折では、手首の可動域制限と運動時の疼痛を残すことが予想されます。

 手根骨は8つの骨で構成されていますが、交通事故では、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、有鉤骨、有頭骨で骨折が多発しています。これらの複数が骨折・脱臼していることもあります。被害者の方から激痛の訴えがなされることは少なく、平面画像のXPでは確認しにくいことが特徴です。すべての手根骨に言えますが、立体的にぐるっと観る事ができるCTが有用です。出来るだけ早期にCT検査が望まれます。
 
(2)治療

 骨折部が亀裂程度では、保存的に癒合を待つことになります。骨折部が離開してしまうと、当然に癒合に時間がかかります。その場合、手術となりますが、2本のスクリュー(headless compression screwなど)にて固定します。骨の欠損部が大きい場合、自家骨移植を行った上で固定します。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. 早期に、画像で立証された確定診断を受けること

 訴えに乏しく、初診のXPで確認されないまま3ヶ月以上経過すると、その後に骨折が発見されても、自賠責・調査事務所は本件事故との因果関係を疑います。これを被害者側で立証できなければ、骨折が認められているのに、非該当となってしまいます。見逃さないようにするには、なるべく早期に(最悪でも受傷3ヶ月以内)、手の外科専門医を探し出して、受診しなければなりません。
 
◆ 専門医であれば、CT、MRIを駆使し、手根骨の骨折、脱臼の確定診断が可能です。日本手外科学会のホームページでは、全国の専門医が紹介されています。http://www.jssh.or.jp/
 
Ⅱ. 近年、手根骨の骨折に対しては、積極的に手術による固定が実施されています。しかし、骨折の形状、合併症状から、手術でどこまで改善するのかを検証しておく必要があります。固定術を受けた結果、手関節の可動域が背屈60°掌屈80°となれば、運動制限による支障が認められるにもかかわらず、可動域制限が4分の3を超えているため、機能障害としての12級6号は非該当になります。骨折部の変形癒合を立証し、痛みを訴えても、神経症状で14級9号が限度となります。変形があれば、それをCTで描出して12級13号を狙いますが、中々にハードルは高いと思います。
  
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