有鈎骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)

(1)病態

 鉤骨折(こうこっせつ)とも呼ばれ、右手では、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。交通事故以外では、ラケットやバット、ゴルフのグリップを振ることで、有鈎骨骨折が発生しています。


 
(2)治療

 ズレのない骨折(転位なし)では、6週間前後の前腕部以下のギプス固定、ズレ=転位の大きいときは、骨折している鉤の切除が実施されています。切除術では、1週間の外固定で手を使用できるようになりますが、スポーツの開始は、4週間以降となります。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. スポーツでの骨折なら、一般的には、後遺障害を残しません。スポーツに伴う有鈎骨骨折では、ギプス固定であっても切除術であっても、後遺障害を残すことなく治癒しています。
 
Ⅱ. ところが交通事故では、衝撃力、破壊力が、スポーツとは大きく違います。骨折部の痛みが長期に続くことが予想されます。骨折部の変形を3DCTで立証し、骨癒合に異常があれば神経症状の12級13号、正常に癒合した場合は、14級9号の獲得を目指します。

 手根骨すべてに言えますが、手根骨単独の骨折から手関節の可動域に制限が加わることは稀です。癒合せず、骨片が手関節の可動に障害する場合、手術で除去することになります。やはり、可動域制限は、↓の実例のように、橈骨、尺骨を含めた骨折になるようです。
 
 単独の骨折ではないですが、可動域制限の認定例 👉 有鉤骨骨折12級6号(40代男性・東京都)
 
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