ショーファー骨折 = 橈骨茎状突起骨折(とうこつけいじょうとっきこっせつ)


 
(1)病態

 ショーファー骨折とは、橈骨茎状突起部の手関節内骨折であり、運転手骨折とも呼ばれています。交通事故では、運転手がハンドルを握った状態で骨折することが多く、この別名がついています。自転車で横断中、自動車との衝突で、手のひらをついて転倒したときにも、この骨折が起こります。

 手関節において背屈・橈屈の強制で起こり、茎状突起が舟状骨と衝突します。よって、舟状骨骨折も視野に入れて治療が行われています。


は橈骨茎状突起、は尺骨茎状突起

 
◆ 秋葉事務所の経験則では、圧倒的に尺骨茎状突起の方が折れています。上図の通り、橈骨の突起より細長く折れやすそうです。単独のでこの突起が折れることより、橈骨や尺骨自体の骨折と併発することが多いようです。その場合、この突起部が癒合せず骨片になったとしても、処置なく見逃されてます。診断名すら無いことが珍しくありません。
 
(2)治療

 橈骨茎状突起部は、手関節を構成している骨であり、本来、元通りの位置に整復されなければなりません。それを理由として、現在では、ほとんどの場合、手術が選択されています。しかし、交通事故による粉砕骨折では、手術であっても安定性が得られず、予後不良です。つまり、変形性手関節症に発展する可能性が予想されるのです。

 逆に、ひびが入った程度、先端部が少し折れた程度で、手関節に深刻な問題がないと・・そのままにされます。積極的に癒合させる程ではないと考えるからです。
 

 
(3)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 骨折後の骨癒合が得られていても、手関節として整合性が保たれているか、この点を検証しなければなりません。骨折部の骨癒合状況は、3DCTで立証します。(手関節の)関節面の不整や異常は、左右の手関節の背側・掌側のXP写真を比較しつつ検証します。
  
◆ 変形性手関節症は、受傷後の二次的障害です。症状固定時には問題とならなくても、時間の経過で発展することが予想されます。示談書には、将来の可能性と、そうなったときの対処法を明記しておかなければなりません。また、労災が適用される事故であれば、再発申請が利用できるかもしれません。できれば、労災も併用すべき理由の一つです。
 
Ⅱ. 当面の後遺障害の対象は、手関節の機能障害として、多くは12級6号が認定されています。10級10号は、粉砕骨折等で完全な整復に至らなかった場合、関節内に相当な破壊があった場合に検討されます。関節可動域制限がありながら、手術せず放置された場合も含みます。


 
Ⅲ. 可動域制限は残らなかったが、癒合状態が不完全、変形や転位が画像上明らかであれば、「局部に頑固な神経症状を残すもの」12級13号となります。癒合状態が良好、整復も問題なし、それでも痛みや不具合が残存した場合、「局部に神経症状を残すもの」14級9号が検討されます。
  
 見逃されたが、大逆転の例 👉 非該当⇒12級13号:橈骨茎状突起骨折 異議申立(50代男性・東京都)
  
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