肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)
 
(1)病態

 転倒の際、肘を路面に強打した時に頻発します。痛みや腫れが生じ、肘の可動域制限と異常可動がみられ、単純XP撮影で骨折が認められます。


 
 肘への衝撃により骨折が生じますが、肘頭骨折とは、橈骨ではなく、尺骨の近位端部の骨折です。また、肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により転位が生じます。


  
(2)治療
 
 骨折した肘頭の骨の欠片が多数のときは、AOプレートを用いて固定されています。転位の少ないものは肘関節を90°曲げた状態で4週間程度のギプス固定が行われ、転位の大きなもの、粉砕骨折では、手術が適用になります。


 
 髄内釘・螺子による固定、フックプレートによる固定、Kワイヤーを8の字状に締結する引き寄せ締結法、Zuggurtung(ツークグルツング)法が行われています。これは、膝のお皿、膝蓋骨骨折の際に用いられる固定術です。関節を完全に固定するわけではなく、関節可動とリハビリを早く実施できますので、関節拘縮を防ぐ点で有効です。

 先の説明の通り、肘頭は上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、転位しやすいもので、骨がズレて癒合しないように固定します。執刀医の腕が試されると思います。
  
(3)後遺障害のポイント
 
 癒合後、痛みや不具合が残存すれば、12級13号か14級9号の判定になります。他の部位に同じく、12級は骨癒合に明らかな変形や転位が残った場合、関節面の不正が残存した場合です。それらがなく正常癒合、または不明瞭な場合は、症状の一貫性から14級の対象になります。
 
 整復が良好の例 👉 14級9号:肘頭骨折(60代男性・東京都)
  
 後遺障害申請が遅れ、12級を逃した反省例 👉 14級9号:肘頭骨折(30代女性・東京都)
 
 この部位の骨折では、肘関節に可動域制限などの機能障害は残らない事が一般的です。例外的に可動域制限が残った場合は、画像から検討されます。その他、周辺の筋腱の損傷が原因であれば、その損傷をMRIなどからを明らかにする必要があります。これらの立証は医師の協力が不可欠です。画像での立証と医師の確定診断・・これらを備えることは簡単ではありません。多くの医師は、「骨がくっついたら終わり」と考えるものです。
  
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