肘関節脱臼 (ちゅうかんせつだっきゅう)


 
(1)病態

 外傷性の脱臼では肩関節に次いで発症します。交通事故では、自転車やバイクを運転中、手をつくように転倒した際に発症しています。

 大部分は肘の後ろに抜ける後方脱臼です。後方脱臼では尺骨が上腕骨の後方に脱臼し、強い痛み、肘の曲げ伸ばしができなくなります。XPでチェックできるのですが、外見からでも尺骨が後方に飛び出していることが確認できます。

 前方脱臼は肘を曲げた状態で肘をぶつけたときなどに発症することが多く、上腕骨の先端が飛び出し、肘頭の骨折を合併することがほとんどです。脱臼に骨折を合併するときは、動揺関節や可動域制限などの後遺障害を残します。


 
(2)治療

 治療は、全身麻酔下に徒手整復、肘関節を90°に曲げた状態で3週間程度のギプス固定がなされ、このレベルでは、後遺障害を残すことなく改善が得られます。

 まず、外れた関節を戻します。整復時の痛みが激しいので、痛み止めの注射を打ってからになります。

 
(3)後遺障害のポイント

 肘関節の脱臼と同時に内・外側副靭帯の損傷や橈骨頭骨折、尺骨鉤状突起骨折、上腕骨内上顆骨折、上腕骨小頭骨折、上腕動脈損傷、尺骨神経麻痺等を合併するものは、手術の適用となります。

 このレベルになると、肘に動揺関節、可動域の制限を残すことが考えられます。いずれも、12級6号以上が認められます。毎度のことですが、自賠責保険は、整復後の画像から機能障害を判断します。関節が正常に戻れば、「そのような高度な可動域制限は起きません」との回答になります。機能障害で等級を求める為には、CT等で骨癒合の異常、関節面の不正を描出させる、または、MRIやエコーで靭帯損傷などを明らかにする必要があります。
 

 
 骨折を伴い、可動域制限となった例 👉 12級6号:肘関節脱臼骨折(50代男性・東京都)
 
 回内・回外の可動域もチェックすべきでしょう。
 
 
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