反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)
 
 読んで字のごとく、繰り返す脱臼です。脱臼ぐせとも言います、体操選手などアスリートに多く、力士では千代の富士を苦しめた症例です。
 
(1)病態

 肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっている頼りのないもので、関節部には骨の連結がなく、大きな可動域を有しているます。そのため、脱臼しやすい構造となっています。10・20代の若年者の外傷性肩関節脱臼では、とくに反復性を予想しておかなければなりません。つまり、若年者では初回脱臼後、これを繰り返す、つまり反復性に移行する確率が高いことが注目されています。体操選手も一度脱臼すると、脱臼ぐせが残る方がいるそうです。
 
 縄抜けの術? 👉 肩の後遺障害 4 肩関節の脱臼
 
 肩関節は、肩甲骨面に吸盤の役割をしている2つの関節唇という軟骨に、靭帯と関節の袋である関節包が付着し、これが上腕骨頭を覆うことによって安定化しています。脱臼時に関節唇が肩甲骨面から剝離し、これが治癒しないと、脱臼する道ができてしまっているため、再び脱臼するような力が加わると脱臼を繰り返すことになるのです。極端な例では、背伸びの運動でも肩関節が外れてしまうことがあります。

(2)治療

 脱臼の整復操作後の話になりますが、整復されても脱臼を繰り返してしまう場合には手術適用です。状態によって、直視下手術か鏡視下手術の選択になります。
  
(3)後遺障害のポイント

 反復性肩関節脱臼が認められるときには、損保料率算出機構の調査事務所では、12級6号(肩関節の機能障害)の認定を予定しています。したがって、反復性肩関節脱臼が認められるときには、まずは症状固定を先行し、後遺障害等級の認定を得たほうがいい場合が多いと思います。秋葉事務所での認定はありませんが、連携弁護士から、肩関節の脱臼ぐせ=動揺性を立証して12級6号認定の記録をみました。
 
 近年、反復性肩関節脱臼に関しては、その治療方法が発展しており、内視鏡を用いた手術(「鏡視下バンカート修復術」などが行われます。)で剥がれた関節唇を肩甲骨面の元の位置に戻すことが可能になっています。この手術は、3~4日程度の入院で行うことができます。この手術がうまくいけば、反復性肩関節脱臼は治癒しますので、状況を見ながら、手術を検討していただいております。なお、症状固定後の手術費用は、原則として、自分負担となりますので、それも踏まえて、症状固定かどうかということを判断していくことになります。
  
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