ムチウチの患者に、神経学的所見が認められると、後遺障害が認められやすくなります。
「神経学的所見がある」とは、端的に言えば、健全な神経が通っていれば起きないであろう症状があることをいいます。
神経学的所見の検査の中で代表的なものとして、
(1)ジャクソン・スパーリング検査
(2)腱反射テスト
(3)知覚検査 等があげられます。
ただ、これらがあれば絶対に後遺障害の等級が認められるというわけではありません。
理由としては、以下の3点があげられます。
理由その1
本シリーズで以前に説明しました、自覚症状や通院日数、MRI画像所見の場合も同じですが、これら神経学的所見も、判断材料に過ぎないのです。
大多数である14級9号レベルのムチウチを認めてもらうには、「保険会社(自賠責・調査事務所)に信じてもらうこと」と述べました。乱暴な言い方ですが、14級9号の後遺障害が認められるための要件として、「保険会社(自賠責・調査事務所)が信じたこと」と言い換えることが出来ます。
つまり、神経学的所見が揃っていたとしても、保険会社(自賠責・調査事務所)が信じるとは限らないのです。実際に、前回までに述べた要素及び、上記した(1)~(3)の要素が揃っていても、等級が認められなかった依頼者も存在しています。
ただ、神経学的所見があるにも関わらず、医者に記載してもらわない理由にはなりません。所見があるということは、それだけ交通事故での怪我が重かったことを意味するからです。
理由その2
上記したこれらの検査の中には、患者が演技できるものもあります。
この記事を読まれている交通事故の患者の皆様は嘘をつくようなことはしないと思いますが、患者の中には、陽性反応がないにも関わらず、装う人がいるそうです。
自覚症状にも言えることかもしれませんが、自己申告である以上、他人からはわからない場合もあります。しかし、本当に辛い患者もおり、実際に神経学的所見も認められる場合もあります。 よって、保険会社(自賠責・調査事務所)も無視はできませんが、確実ではないので、あくまで付随的な判断材料として扱う検査となります。
理由その3
大変申し上げにくいのですが、今まで病院同行してきたところ、お医者様が検査そのものを苦手としている方もいらっしゃいます。
この点、お医者様は人を治療することを生業とする者です。後遺障害があるかどうかを判断するというのは、お医者様が治療しきれなかったことを自ら証明するという見方をする方も少なくありません。 そのため、神経学的所見についての検査が苦手とするお医者様がいても無理はないのです。
また、仮にお医者様が出来たとしても、お医者様は後遺障害の有無の判断で検査をやりたがらない場合が多いこともあげられます。というのも、お医者様が治療をしても治しきれなかったことを自ら積極的に証明したいという方は常識的にいないといってもいいです。
※ 中には、全力で治療してくださり、それでもどうしても治療しきれないところあった場合には後遺障害を認めるという、自身の治療に自信があり、かつ謙虚で素晴らしいお医者様もいらっしゃいます。
以上から、神経学的所見の検査は、後遺障害を判断する材料の一部であり、信用性や、検査がお医者様次第となる恐れがある以上、検査で陽性反応が認められても確実に後遺障害が認められるという事ではないというものとして考えております。