第9話:「肩関節亜脱臼による肩関節の動揺性をストレスXPで立証?」(秋葉が勝手につけかえたタイトル)
第9話も秋葉事務所の仕事と丸被りでした。前話で、転倒した甘春先生(本田つばさ さん)に対して、レントゲンに加え、頭部はCT検査、痛めた肩関節はMRI検査を行いました。その画像うを観た辻村先生(同僚の甘春先生に💗)は、MRIの矢状断から肩関節の亜脱臼と診断し、保存的治療で対処することを決めました。しかし、毎度のお約束で、五十嵐技師(子供の頃から甘春先生に💗)は、MRI画像からバンカート病変(※1)を疑い、ストレスXP(関節を引っ張って伸びた状態をレントゲンで撮る)もすべきではないか、その結果、損傷があれば(関節唇損傷・スラップ損傷※2)、肩関節の動揺性(関節が緩んでぐらぐらになってしまう)が後遺症として残らないよう、鏡視下手術をすべきと意見しました。それに対して辻村先生は、「技師が思いつきで言うな!(怒)」と拒否、読影判断をめぐる恋敵の対立となります(ヒロインの宿命ながら患者にとって迷惑な話)。
※1 バンカート病変 ⇒ 肩関節 脱臼
※2 関節唇損傷・スラップ損傷 ⇒ スラップとは関節唇の上部ことで、上腕骨が肩関節内で円滑に動くよう作用する軟骨です。これが、スポーツや事故での外力で、裂ける、剥がれる、あるいは骨ごと剥がれる(骨性バンカート病変)ことがあります。これらを総称してスラップ損傷と言います。肩関節脱臼の多くはバンカート脱臼かヒルサックス脱臼です。
←関節唇(MRI・T1冠状断)
結局、辻村先生はストレスXPをオーダー(撮影場面はなかったですが)、結果としてバンカート病変の診断から、関節鏡下手術(詳しく語られませんでしたが、手術場面から剥離した関節唇の縫合をしたと思われる)となりました。
バンカート病変・関節唇損傷は、交通事故外傷でも肩関節の脱臼で経験しています。ドラマのような亜脱臼(関節が外れたがすぐ戻った状態)では珍しいと思いました。いずれにしても、激痛、とくに外旋(五十嵐技師は甘春先生の上腕を外側に開いて気付いたよう)痛から、バンカート病変を疑うことは基本と思います。辻村医師の初期判断は甘いと誹りを受けても仕方ないでしょう。
これが町の個人開業医だったら、そもそもMRI設備がなく、レントゲンで「骨折はありませんね」、次いで「しばらく様子をみましょう」となるのが普通です。そのまま、医師に強く主張せず、漫然と通院、関節唇が切れたまま、無為に時間が経過します。いつまでも痛みや不調を訴える患者を前に、半年後にようやく検査、手術となったケースもありました。ただし、半年も経ってからのバンカート病変です。これが賠償問題が絡む交通事故外傷であれば、後遺障害申請をしても、自賠責はまず疑いの目でみることになります。本例のように骨折が無ければ、事故外傷との因果関係が厳しく審査されるのです。また、処置が遅れたことにより、当然に予後の回復に悪影響をもたらします。
辻村先生は個人開業医ではなく、検査設備の整ったそれなりの総合病院の整形外科医なのですから、最初の判断はまったくのNGです。その後、別件の患者で、大学病院でも発見でいなかったガンを見つけた(検査を渋っていたが、放射線科チームの技術と熱意でスキルス性胃がんを発見!)こと目の当りして、五十嵐技師の読影力・診断力を認め、放射線科技師チームへの(下にみていたような)態度を改めました。つまり、医師として、人として、成長しました。まぁ、ドラマですから、主人公の恋敵を描くには必要なエピソードだったと思います。
昨夜から続編となる新番組「ラジエーションハウス2」が放送です。録画して観ますが、しばらく業務日誌のネタに困らないかと。