昨日はゼレンスキー・ウクライナ大統領のオンライン国会演説をご覧になった方も多いと思います。政治的なことを一個人事務所のHPで取り上げるべきではありませんし、これから個人的な主義主張を述べるものでもありません。同大統領の演説から、学ぶべきプレゼン能力を検証してみたいと思います。
 

 
 原稿は多数の専門家からなる側近の皆さんと作成したと思います。演説先の国によって、その国の事件や歴史に関わるキーワードを散りばめ、主張のニュアンスや言葉の強弱も実に計算されたものに感じました。アメリカ議会では、「真珠湾攻撃」「9.11テロ」が挙げられました。イギリスでは有名な第二次大戦中のチャーチルの演説、ドイツは「ベルリンの壁」、イスラエルでは「ホロコースト」、ヨーロッパ諸国では必ず「ナチス」に触れました。それでは、日本向けキーワードを挙げてみましょう。

 

(1)日本に関するキーワード
 
① 大惨事が起きた原子力発電所

 チェルノブイリの原発事故、その後何十年も続く放射性物質の除去・・震災による福島の原発事故に重ねてきました。現在進行形で苦しむ日本の痛みです。
 
② サリン

 ロシア軍が生物化学兵器を使うかもしれない・・その恐怖、世界中が震撼したオウム真理教事件を想起させます。毒ガス・生物化学兵器「サリン」、これを忘れた日本人はいないでしょう。
 
③ 核兵器

 人類で唯一、無差別核攻撃を受けた国は日本だけです。
 
④ 津波

 ウクライナが(ロシア軍の)残忍な侵略の津波に・・。ちょっと強引、津波に例えています。他国の演説でこのような比喩はありません。表現の是非はともかく、この辺に”あざとさ”を感じるところです。
 
⑤ オデッサ作戦(これは空想)

 さらに、「現在、ロシア軍はオデッサ作戦の展開中で、撤退となれば核を使うかもしれない」などと表現すれば、推定400万人と言われる日本国内のガンオタが狂喜したに違いありません。私が大統領の側近なら、日本向けにこれを盛り込みます。

 「我々も負けたくないのでな」 
  
(2)キーワードの効果
 
 わかり易くウクライナの窮状を伝える場合、多くを語らずとも対象国に起きた事件・事故など、そのトラウマを持ち出す手法は、聞く者の感情に訴える最良の手段です。短い演説では、このワンワードによる想起は、最も効果的ではないでしょうか。

 日本に至っては、「あざとさ」全開です。この場合の「あざとさ」は決して悪い意味で使っていません。評価するなら、ディフェンディングチャンピオンの田中 みな実さんに代わり、今年のあざと(演説力)大賞はゼレンスキー大統領に決まりです。

 本来、「あざとい」の意味ですが、「小聡明い」と書き、意味は「悪知恵が働く」「小賢しい」「たちが悪い」など、良い意味ではありません。しかし、田中 みな実さんは、「あざとい」に「かわいい」がくっついています。つまり、「あざとかわいい」とは・・計算ずくだが、それを分かった上で、ひっくるめて、可愛らしい、一種の誉め言葉に変容していると思います。この点、田中 みな実さんの功績はでかいと思います。
 
 大統領の各国に向けた演説こそ、リップサービスやあざとさを感じるも、最悪の状況を訴える切実さ、誠実さが込められており、「あざと演説力」になっていると思います。あらゆるスピーチ・演説が中途半端な「あざとさ」なら、聴衆は白けるでしょう。田中 みな実さんやゼレンスキー大統領のように、わかっちゃいるけど認めちゃう、振り切った「あざとさ」なら逆に聴衆の心を掴むもの、学ぶ点は多いと思います。
 
 あれから、毎日お水2リットルに挑戦も1.5リットルが限界です。恐るべき、田中 みな実さんやモデルの皆さん。そのプロ意識に脱帽です。