再開します。
傷害保険として自社基準で支払いたい「人身傷害保険」。各社約款の修正、その前に運用基準の明示に入りだしました。
A、後遺障害を伴わないケガについてはこちらを優先適用します。
人身傷害の支払基準は約款にほぼ明示されています。各社対人賠償の基準に準じていますが、その対人賠償と同じく、後遺障害を負った被害者に対する逸失利益の計算などは約款上、「被害者の障害の部位・程度、年齢、職業、現実収入等を勘案して決定します」としています。したがって担当者がそれらを考慮して決定するのです。この決定に関わる細かなルールを運用基準(影の支払基準)としています。私も会社のサービスセンター(保険金支払い係)研修の際、この「運用基準を見せて」とお願いしましたが、「これは社員でも担当以外は見せられない」と拒否されました。これは保険の自由化後の現在でもマル秘ファイルであることは変わりません。
対人賠償や人身傷害の積算(損害額の計算)の際、この運用基準は用いられます。逸失利益だけではなく、慰謝料や休業損害、その他多肢にわたるはずです。支払保険金の削減が至上命題である担当者にとって、この運用基準の中で保険会社有利に計算することで支払額の抑制が容易に可能となります。
さらに無保険車による受傷で自分の任意保険に請求する際、「後遺障害を伴わないケガについては人身傷害保険で」とのルールが運用基準に存在し、それを証券、パンフレット上にも明示したと推察できます。無保険車傷害特約を請求する際、各社口をそろえて「人身傷害保険で支払います」と回答し、「人身傷害が優先です!」との社内ルール(運用基準か?)を押し出してくることからそう思うのです。一方、契約者が請求したい特約を自ら選べないのはおかしな印象を受けます。
もっとも後遺障害を伴わないケガの場合、3000万円を超えるような損害はほとんどありえません。実際の運用上、的を得たルールです。しかし、無保険車の相手に対し、後遺障害が残らないケガでも裁判をする場合もありえます。判決された賠償額について、相手の支払い能力がないため、自分の任意保険会社に請求するとします、その場合「後遺障害がないのでAのルールを適用します。したがって任意保険会社の基準で支払います」となり、裁判の判決額は払えない事になります。
これでは困ります。やはり両保険が併存して契約されている限り、永遠にこの問題が付きまといます。
そして、先進的に約款改定を行う東京海上、損保ジャパンは、思い切った修正をしたのです。
つづく