令和元年、日本の人口比率では、60歳以上は3人に1人、70歳以上は5人に1人です。統計上、交通事故被害者の比率もほぼ同じになります。高齢者ドライバーの、逆走、ブレーキとアクセルの踏み間違いなど、加害事故がニュースで取り立たされていますが、実は、高齢者の被害事故の方が圧倒的に数が多く、深刻であると思っております。秋葉事務所でも開業以来、60歳以上の被害者さんがおよそ25%を占めています。

 高齢者は若い人と違い、ケガも重篤になり、治療期間も長くなり、なによりより障害が残りやすくなります。そして、80歳を超えるような方は、些細なケガであっても、それがきっかけで、歩行困難⇒寝たきりとなることが少なくありません。さらに、事故のショックから認知症を発症⇒わずか2週間の入院で認知症が劇的に進行するケースも珍しくありません。

 そのような、加齢による損害の拡大を、加害者側の保険会社はいつも警戒しているのです。高齢者に対しては早期の治療費打切りに力が入ります。交通事故による直接(因果関係が明白な)被害は当然に賠償の対象としますが、高齢による傷病の進行、二次的な症状は、いつも争点となります。その点、自賠責保険の後遺障害審査で、今まで多くのケースで助けられてきたと思います。自賠責保険の審査基準でも、当然に直接因果関係を検討します。しかし、高齢者~若年者を分け隔てしない自賠責の認定等級は、加齢の影響を加味しない認定等級となることがあります。以下の実例は高齢者であるが故、通常よりケガが重篤になってしまったケースです。
 
 実例の一つ=併合3級:下肢切断・足関節機能障害+足趾用廃(90代女性・千葉県)
 
 そして、無職・年金受給者の被害者さんが80歳を超えると、自賠責・後遺障害等級の定額化した慰謝料・逸失利益は、等級が上がる程、裁判等で争う賠償金額を上回るケースが増えます。被害者に過失がある場合はそれがより顕著となります。自賠責保険では被害者に70%も責任がない限り、過失減額しないからです。
 
 実例の一つ=別表Ⅰ 1級1号・加重障害:高次脳機能障害(80代女性・静岡県)
 
 高齢者の被害事故の場合、上記実例が示す通り、あたかも自賠責保険請求が勝負を決するのです。交通事故の解決とは法的な争いではありますが、保険請求だけで十分な賠償金を確保できたことになります。つまり、自賠責保険を熟知し、それに連なる医療立証、請求実務をマスターすることが、交通事故の解決力となります。秋葉はその力を持つ事務所であると自負しています。弁護士の賠償交渉・訴訟の陰になることが多い秋葉事務所の働きですが、高齢化社会において益々活躍の機会があると思っています。