ハンドルを誤って崖から転落、電信柱に衝突などの自爆事故や、止まっている前車に追突してケガ=100:0(100%自分責任)事故などでは当然ですが相手からなんの補償もされません。そうなると自分の加入している保険からのでるものを探します。この場合、自動車任意保険からは自損事故保険(特約)が適用されます。しかしかなりの受傷者が保険をもらいそびれているのではないかと危惧しています。

 では実際にあった自損事故保険(特約)が適用されたエピソードで解説します。

 

 A君は運送会社の新米ドライバーで入社半年目、ようやく2tトラックの運転も慣れてきました。しかしあるときハンドル操作を誤ってセンターラインをオーバーし、対向車に衝突、右足首を骨折してしまいました。幸い対向車も大型トラックで、相手ドライバーも軽傷でした。 

てこの2tトラックには会社で加入している任意保険があったので、ここから相手のケガに対人賠償を、相手の車の修理費に対物賠償をそれぞれ適用し、無事に解決できました。ただし、運送会社ではたくさんの車両に任意保険をかけているので、自動車保険を最低限に切り詰めています。相手への補償は対人:無制限、対物:1000万まで掛けていますが、運転者に対する補償である、人身傷害特約、搭乗者傷害特約は付けていません。つまりA君のケガに保険金はおりません。それでも業務中ということで労災が適用され、治療費や休業損害の支払いはありました。

 その後ケガの治療は進みましたが、足首の骨折は脛骨と距骨、腓骨の3顆部骨折のため、足首がよく曲がりません。右足首なのでペダルが踏めず、運転の仕事への復帰は困難です。いつまでもリハビリを続けるA君に会社も解雇やむなしの状態です。A君も運転の仕事を諦めざるを得ません。しかし足の後遺障害を残して会社を放り出されても、当面のお金に困ります。会社も「申し訳ないが労災以外は何も支払えない」と冷たい対応です。

  しばらくしてA君の友人から私に相談がもちこまれました。まず適用される保険を探し当てるべく、まず2tトラックの任意保険を吟味しました。確かに旧型の保険で、なおかつ掛け金の節約から、対人・対物のみ、人身傷害特約はおろか搭乗者傷害保険も入っていません。しかし証券の片隅にひっそりと自損事故特約の記載が・・・。そうです対人賠償がついている場合、この特約は自動付帯されているのです。最近は人身傷害特約に吸収されて、ますます存在感が無くなっていますが、生きた化石のように存在しています。

自損事故保険(特約)の補償内容は・・

※ 以下スタンダードな内容(各社多少違いはあります)

① 死亡 1500万円

② 後遺障害は等級に応じて

後遺障害等級別保険金支払額  (単位:万円)
1等級 1500 8等級 470
2等級 1295 9等級 365
3等級 1110 10等級 280
4等級 960 11等級 210
5等級 825 12等級 145
6等級 700 13等級 95
7等級 585 14等級 50

③ さらに介護が必要となった場合 介護費用200万円

④ 入院6000円/1日

⑤ 通院4000円/1日

 これでA君は救われた!のでしょうか? この後、保険金を手にするまで様々なハードルが用意されていました・・・

 つづく