胸・腰椎圧迫骨折(きょう・ようついあっぱくこっせつ)
 

 
(1)病態

 自動車の横転や転落、バイク、自転車の転倒で、ドスンと尻もちをついたときに発症しています。つまり、脊椎を構成する椎体に縦方向の重力がかかると、上下に押し潰されて圧迫骨折するのです。好発部位は、第11胸椎、T11~第2腰椎、L2です。XPの側面像では、脊椎の椎体前方、腹側が、楔状変形しているのが確認できます。

(2)症状

 骨折部に激痛が走ります。腰部を動かすと痛みが増強するので、起き上がること、立ち上がることができません。ただし、半年もすれば、痛みは軽減・消失しているようです。弊所の30人に及ぶ圧迫骨折の被害者さん(11級、8級の認定)を追跡すると、重篤な後遺症なく、改善傾向です。
 
 逆に高齢者の場合は、受傷時の痛みは若者程でもないのですが、骨再生が遅く、あるいは再生しないまま腰が曲がり、痛みも残る方が多かった印象です。

 お年寄りで腰の曲がった方のXP・MRI画像を観ると、歳と共に複数の胸椎・腰椎が変性し、自然な圧迫骨折のように潰れています。加齢に伴い、筋力の衰えと椎間板の変性によって老人性円背(ろうじんせいえんぱい)が起きます。その円背が進むと胸椎・腰椎が多発性圧迫骨折に発展するようです。
 
 高齢者ゆえに圧迫骨折が見逃された実例 👉 11級7号:胸椎・腰椎圧迫骨折(80代女性・東京都)
 
(3)治療

 治療は、骨折部が安定していれば、入院下でギプスやコルセットで固定し仮骨形成を待ちます。骨折部位が不安定なときは、手術が選択されています。上肢や下肢に麻痺が残ったときは、装具の装用や、リハビリ治療で改善を目指します。

 骨粗鬆症が進行している高齢者では、軽微な追突事故であっても、その衝撃で、胸椎や胸椎と腰椎の移行部で圧迫骨折を発症することがあります。こうなると、損害賠償では、素因減額が議論されることになります。自賠責保険の後遺障害認定は、骨粗鬆症の関与にわりと寛容でしょうか。
 
※ 骨粗鬆症

 新陳代謝のバランスが崩れ、吸収=壊される骨が、新しく作られる骨よりも多くなってしまう疾患のことで、骨密度が減少し骨が脆くなります。

 高齢者に起こる圧迫骨折では、治療は短期間のベッド上の安静で骨癒合を待ちますが、コルセッ卜やギプスを巻いて、体動時の痛みを和らげます。椎体の骨折の程度が大きく、骨片が椎体の後方の脊髄や神経根を圧迫し、下肢の感覚を失う、力が入らないときは、手術で圧迫された神経を解放します。骨粗鬆症のレベルが高く、数カ月を経過しても骨癒合が得られず、疼痛が緩和しないときは、人工骨や骨セメントを骨折部へ注入する治療が行われています。
 

経皮的椎体形成術 (BKP)

※左の図から「①」・「②」・「③」

 ① 骨折部分にバルーンの挿入 ⇒ ② バルーンを膨らませ骨折部を持ち上げる ⇒ ③ 骨セメントを充填

 2011-1より、経皮的椎体形成術に健康保険の適用が認められています。
 
 佐藤の祖母の実例 👉 経皮的椎体形成術について
 
(4)後遺障害のポイント


Ⅰ.  圧迫骨折による椎体の楔状変形が後遺障害の対象になります。さて、骨を構成する組織は、毎日、吸収=壊されては、新しく作られています。圧迫骨折でも、若年者であれば、時間の経過で仮骨が形成され、形状がやや戻ることがあります。若年者で、保存療法のときは、受傷から6カ月で症状固定とし、11級7号を目指します。
 
 若者は急げ!認定例 👉 11級7号:腰椎圧迫骨折(20代男性・埼玉県)
 
Ⅱ.  高齢者でBKP術を受けたときでも、受傷から6カ月で症状固定を決断、11級7号を目指します。
  
Ⅲ. 椎体の50%を超えるような圧壊、あるいは2椎体以上を併せて50%に及べば、「中程度の変形」8級2号が認定となります。
  
 ギリ8級となった幸運例 👉 8級相当:胸椎圧迫骨折(40代男性・群馬県)
  
Ⅳ.  新鮮骨折か、陳旧性か?

 
T1強調画像(左)  T2強調画像(右)
 
 新鮮な圧迫骨折のMRIでは、椎体は出血により他の椎体と違う濃度で描出されます。元からあった陳旧性骨折か、新鮮骨折かの判断は、受傷直後のMRIで判断ができるのです。

 上記は、62歳女性の第11胸椎圧迫骨折のMRI画像、新鮮骨折ですが、左のT1強調画像では、黒く描出されており、右のT2強調画像では、一部が白く描出されています。このことを専門的には、T1強調において低輝度、T2強調において高輝度がみられるといいます。圧迫骨折では、受傷直後のMRIにより、新鮮骨折であることを立証しておかなければなりません。先の説明の通り、腰が曲がった高齢者は自然に椎体が潰れているからです。
 
 MRIで新鮮骨折を立証した高齢者の実例 👉 11級7号:胸椎圧迫骨折(80代男性・長野県)
 
 他にも老若男女、多数の認定例は専門ページ 👉 脊椎の障害における3つのポイント
 
 圧迫骨折はその受任・認定数の多さから、秋葉事務所の十八番です。
  
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