(1)病態

 リスフラン関節は、足の甲の中央付近にある関節で、具体的には、第1、2、3楔状骨と立方骨と中足骨近位部で、この関節は構成されています。

 リスフラン関節脱臼骨折は、リスフラン関節に強い力が加わることで生じます。交通事故では、歩行者がタイヤに踏みつけられること、自転車・バイクを運転中の衝突で、転倒時に、足が石などを強く踏み抜いたときに発症しています。

 歩行者では、ハイヒールで歩行中の女性が自動車との接触で中足骨に強い力が加わり、その影響で、リスフラン関節が脱臼・骨折したことも経験しています。    (2)症状

 激痛と腫れ、足部の変形で、歩行不能となります。   (3)治療

 XPでは、前後、側面、斜位の方向から撮影されていますが、脱臼を見逃すことがあり、追加的に、CT、MRI検査が行われ、確定診断がなされています。

 多くで、第2中足骨の基部の脱臼・骨折ですが、転位が小さく、整復できれば、6週間のギプス固定、中足骨の多発脱臼・骨折で、転位が大きいときは内固定術、中足部の固定術が行われます。

 術後はギブスシーネ固定がなされ、8週でギプスはカット、リハビリが開始されます。予後の経過は良好で、リスフラン関節単独では、機能障害としての後遺障害を残すことはありません。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 ショパール関節脱臼骨折

  (1)病態

 ショパール関節とは、上記の関節で、横足根関節とも呼ばれています。

 交通事故110番では、①歩行中にトラックが接近し、足を踏まれた、②バイクで直進中、交差点で他車と出合い頭衝突してスピンした相手自動車の衝突を受け、道路脇のブロック塀に激突、左足を挟まれた、③工場内で積み降ろし中に、重量物が左足に落下した、④軽トラックを運転中、11トントラックとの衝突で、運転席部分が大きくクラッシュし、右足を挟まれた状況でショパール関節の脱臼骨折を経験しています。足を強く挟まれ、内側に捻挫したとき、つま先が足の裏を向く、内返しの力が加えられたときに、ショパール関節は脱臼骨折するのです。   (2)症状

 足の甲の激痛、腫れ、皮下出血、脱臼骨折では、変形が確認でき、歩くことができません。    (3)治療

 XP、CT、MRI検査で確定診断が行われています。ショパール関節の脱臼骨折では、立方骨、舟状骨、距骨、踵骨が影響を受けます。治療は、まず、徒手整復が試みられ、整復不能なときは、内固定による整復が行われています。

 後療法は6~8週のギプス固定後に、アーチサポートを装着し、歩行リハビリが開始されます。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)

(1)病態

 足根洞は、外果(外くるぶし)の前方にあって、踵骨と距骨の窪みのことです。足根洞の中は、洞窟構造になっており、骨間距踵靱帯と血管が走行しています。また、骨間距踵靱帯の中には、固有知覚を司る神経自由終末が存在していて、歩くときには、安定性を保つ役割を果たしています。

 足首の捻挫は、大半が外くるぶしの靱帯損傷で、多くは手術なしで完治しています。ところが、痛みが続くこともあり、その1つが、足根洞症候群です。   (2)症状

 でこぼこ道の歩行、足関節の内返しや底屈で痛みが増強するとの訴えがなされます。また、足の後ろの方に不安定感や下腿の外側に、だるさや痺れを訴えることもあります。   (3)治療

 受傷機転は、重度の足関節捻挫によって、足根洞内の靭帯が部分断裂し、足根洞内で出血、その血が凝固し、変性することで、踵骨と距骨の間の滑らかな動きを妨げ、骨膜炎や浮腫を生じて、痛みが出ると考えられています。XP、CT、MRI撮影で検証しますが、確定診断には、MRIが有用です。

 治療は、保存療法で、足関節の内返しを制限するテーピングや足底挿板などで足根洞部分へかかる負荷を軽減します。痛みに対しては、局所麻酔剤とステロイドを混ぜて、注射すると効果が現れます。症状が安定すると、足関節の可動域の改善や筋力トレーニング、バランス訓練といったリハビリが行われます。これらの保存療法で改善が得られないときは、足根洞の瘢痕組織の郭清術を行いし、2、3週間のギプス固定を行います。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 モートン病、MORTON病

  (1)病態

 人間は2本足で直立歩行する唯一の哺乳動物です。4本足で歩行する哺乳動物は、かかとの部分を浮かせて足の先だけで歩きますが、人間は足の裏全体を地面につけて歩いています。人間の体重は、股関節や膝関節でも支えてくれますが、なんといっても全体重を支えているのは地面に接している足なのです。全体重を支える必要から、足には衝撃を吸収するシステムが組み込まれています。

 三角の部分の3つのアーチがそれに該当します。アーチを弓に例えると、弦に相当するのが筋肉と靭帯です。足に体重がかかったときには、この弓と弦が伸びたり縮んだりして衝撃を吸収しているのです。

 さらに、足は第2の心臓とも呼ばれています。心臓はポンプの働きで全身に血液を巡らせていますが、足にたまった血液はふくらはぎや足の裏の筋肉の収縮によって心臓に送り返されているのです。

 足のむくみについては、コンパートメント症候群で解説していますが、人間は立ったままでも足の裏に刺激を受けていれば、足のポンプがうまく機能して血行を促進させるのです。近年、足の裏のつぼをマッサージすることが流行していますが、血行をよくすることによって自律神経やホルモンの働きを活性化させているのです。   (2)症状

 交通事故110番では、交通事故によるものは1例だけ経験があります。自動二輪を時速70kmで運転中に2トントラックの側面に激突し、右下腿骨の開放性粉砕骨折と右足関節果部の挫滅骨折等で、奇跡的に切断を逃れた被害者でした。

 受傷後1年7カ月目に症状固定、偽関節と足関節の運動障害で併合7級の後遺障害を獲得したのですが、右足指の3・4番目に疼痛を訴え、モートン病と診断されました。

 これは、先に説明した足根管症候群と同じ、絞扼性神経障害です。後𦙾骨神経から枝分かれした内側足底神経の外側に分岐した趾間神経が圧迫されたことによって発症します。調べてみると、ハイヒールを履く中年の女性に多い疾患です。2・3趾または3・4趾の痺れ感と灼熱感と疼痛を訴えることが多いのです。

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 足根骨 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)   (1)病態

 足底腱膜炎は、先の足底腱膜断裂の前段階、足底筋の一部の断裂や炎症です。

 足底筋はアーチ状の構造を持つ足の骨に対して、弓の弦のように張られていて、ジャンプや走ることで、足が受ける衝撃を吸収する役目を担っています。足底筋膜炎は主に、踵の骨の周辺に発生し、痛みを引き起こします。   (2)症状

 足底腱膜炎の主な症状は、かかと周辺の痛みです。この痛みは、踵を地面に付けたときに、増強します。   (3)治療

 足底筋膜炎の治癒は、個人差、年齢差がありますが、早ければ3カ月、長くて2、3年です。

 非ステロイド性抗炎症剤、NSAIDsやステロイド剤の投与で炎症の悪化を抑え、マッサージ、ストレッチ運動などで痛みを緩和させるリハビリが続けられ、日常歩行には、アーチサポートやヒールカップといった、足の構造を支援する装具を装着することもあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 足底腱膜断裂(そくていけんまくだんれつ)   (1)病態

 ラグビー、サッカーなどのコンタクトスポーツで、足を強く蹴り出してダッシュしたときに発症しています。交通事故でも、バイクや自転車と自動車の出合い頭衝突で、足の裏に強い衝撃がかかったとき、道路から田畑や崖下に転落、着地の際に、大きな負荷がかかり、足底筋膜が断裂することがあります。

 ほとんどは、踵骨に近い位置の足底腱膜が断裂しています。また、足底筋膜断裂では、断裂した筋膜組織から出血し、内出血を起こし、内出血は、足裏の土踏まずの部分に拡がります。   (2)症状

 受傷直後は、激痛で歩くことができず、みるみるうちに、足裏の内出血が拡がり、腫れが増大、土踏まず部分が、広く平に見えるので、診断は容易です。足首の捻挫と見過ごされることは、ありません。   (3)診断と治療

 エコー検査やMRIの撮影で、足底腱膜断裂を確認することができ、診断は確定します。治療は、断裂部位の縫合術がなされ、その後、1カ月程度のギプス固定がなされます。ギプスカット後は、足底板を装用し、リハビリが始まります。   (4)後遺障害のポイント

 平均的には、受傷から2カ月で就労復帰でき、後遺障害を残すことはありません。    次回 ⇒ 足底腱膜炎  

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 足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)

  (1)病態

 上肢の外傷に、よく似た傷病名で手根管症候群があります。これは、上肢を走行する正中神経が、手根管のトンネル部で圧迫、締め付けられたことにより、麻痺したもので、交通事故では、橈骨の遠位端骨折や月状骨の脱臼に合併して発症しています。

 足根管症候群も、手根管症候群と同じく、絞扼性(こうやくせい)神経障害で、後脛骨神経が麻痺する症状です。脛骨神経は、下腿から足の方へ向って走行、足の内くるぶしの付近で枝分かれをして、足の裏の感覚を支配しています。内くるぶし付近では、足根管というトンネルが存在して、後脛骨神経がその中を通り、交通事故では、脛骨内果・距骨・踵骨の骨折、脱臼に合併して発症しています。   (2)症状

 症状は、足指や足底部の痺れ感や疼痛を訴えるのですが、痛みの領域が足首以下に限定され、かかとや足関節、足裏に痛みが生じていること、足の親指の底屈不能、痛くて眠れないほど、夜間に痛みが増強するが、足の甲には痛みやしびれが出現しないのが典型的な症状です。   (3)診断と治療

 足根管部に圧痛や放散痛が認められ、皮膚の表面から軽く叩いただけで、極めて激しい痛みが放散するチネルサインも陽性となります。神経の障害ですから、後脛骨神経が支配している筋肉の筋電図をとると異常が認められます。

 治療としては、保存的に、ステロイド剤の局注、鎮痛消炎剤の内服、足底板の装用、安静で改善を見ることもありますが、効果が得られなければ、屈筋支帯を切離し、神経剥離術を実施します。神経剥離術は、整形外科・スポーツ外来、専門医の領域です。予後は良好であり、絞扼性神経障害では、後遺障害を残すことは稀な状況です。    (4)後遺障害のポイント

 交通事故では、脛骨内果・距骨・踵骨の骨折や脱臼に合併して、このトンネルが圧迫を受け、足根管症候群を発症しています。したがって、後遺障害は、脛骨、距骨、踵骨の骨折後の変形、疼痛、可動域制限となります。

 しかし、足根管症候群は、積極的な治療で、完治を目指します。軽度な足関節捻挫でも、足根管症候群を発症することがあります。ほとんどは、保存的な治療で完治しています。弊所の経験則でも、骨折後に足根管症候群の兆候を示す方も、ほとんどリハビリの過程で軽快したようでした。     次回 ⇒ 足底腱膜断裂  

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 踵骨不顕性骨折(しょうこつ ふけんせいこっせつ)  

右足の骨格を外側から見ています

  (1)病態

 かつて、京都で開催した交通事故無料相談会に、「2カ月前、自動車の後部座席から外に出たときに追突を受け、歩道の段差を踏み外した?」 として、かかと部の痛みを訴える65歳の高齢者が参加されました。幸い、先に降りていた妻が支えてくれたので、転倒は免れたそうです。しかし、かかと部がみるみる腫れだし、とても痛くて歩けなかったので、そのまま自動車で、整形外科に直行し、診察を受けたのです。

 整形外科でのXP検査では、骨折は認められず、かかとの打撲と診断されたのですが、2カ月を経過しても、腫れが引くこともなく、今も松葉杖歩行しています。相談は、「本当に打撲なのでしょうか?」「このままの治療で治るのでしょうか?」右足を拝見すると、現在も踵骨部が腫れており、押さえると激痛を訴えます。そこで、チーム110が懇意にしている専門医を紹介、一緒に受診することになりました。

 専門医の見立ては、断定はできないが、右踵骨不顕性骨折ではないか、というものでした。   ※ 不顕性・・・病気の過程が始まっているが、まだ所見が表れていないことを示す医学用語です。 続きを読む »

(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 踵骨骨折では、骨折部の疼痛が後遺障害の対象となります。症状としては、歩行時の痛み、坂道や凸凹道の歩行や長時間の立位が困難なこと、高所での作業が不可能であることが代表的です。この状態が2年以上続くこともあり、症状固定の決断に頭を悩ますことがあります。

 事務職であれば、問題を残しませんが、営業職や現業職では就労復帰が遅れることになります。当面の配置転換が可能であれば、この問題はクリアーできますが、全員がそうではありません。こんな状況でも、骨癒合が完了した時点で、症状固定とすべきと考えています。XP、CTで骨折後の骨癒合状況を立証し、なんとか、12級13号を獲得する方向です。   ① これ以外には、ベーラー角度の減少による外傷性偏平足があるかどうか?

 ベーラー角は、20~40°が正常ですが、健側と比較して問題提起をしています。これもONISのソフトで、秋葉事務所では、たちどころに計測できます。   ② 距踵関節面に、僅かでも変形が認められるかどうか?   ③ MRIで、内外果の周囲の腱や靱帯、軟部組織に瘢痕性癒着が認められるかどうか?    これらのチェックも怠りません。配置転換もなく、就労復帰が遅れていたとしても、受傷から2年以上、休業損害を払い続ける相手の損保は、1社もありません。治療の打ち切り、示談解決が督促されることになります。どうせ打ち切られるのであれば、予想される休業損害を含めた示談交渉をすればいいのです。

 さすがに、被害者の言い分を損保が丸呑みすることはありませんが、有能な弁護士なら、慰謝料の増額交渉で、これを実現しています。   Ⅱ.

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 足根骨 距骨 骨軟骨損傷(きょこつこつなんこつそんしょう)

    (1)病態

 距骨骨折のところで、「距骨表面の80%は関節軟骨で覆われ、筋肉が付着していないこともあって、血流が乏しいのを特徴としています。」と解説しています。足関節を骨のパーツで見ると、距骨は、脛骨と腓骨で挟み込まれるソケット構造となっています。そして、距骨は、距骨滑車で脛骨や腓骨と、距骨頭で舟状骨と、前・中・後距骨で踵骨と関節面を形成しており、これらの表面は、軟骨で覆われているのです。

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 足根骨 距骨々折(きょこつこっせつ)

(1)病態

 距骨(きょこつ)は、踵骨の上方にあり、脛骨、腓骨と連結して足関節を形成しています。距骨表面の80%は関節軟骨で覆われ、筋肉が付着していないこともあって、血流が乏しく、骨折では、血行障害となり、壊死・偽関節・関節症変化による機能障害を残すことが多く見られます。

 交通事故では、自転車やバイクVS自動車の衝突で、転倒時に、背屈を強制され、脛骨や腓骨に挟まって骨折することがほとんどですが、自動車を運転中に、センターラインオーバーの相手車を発見、急ブレーキをするも間に合わず正面衝突を受けた例でも、距骨骨折を経験しています。   (2)症状

 足首の激痛、腫れ、歩行はできません。   (3)治療

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(5)医学論文の紹介   『整形外科と災害外科47』の、「外傷性足部尖足変形の治療成績」 から引用します。   ① 概要  仕事中に、鉄柱が右大腿に倒れて受傷、傷病名は、右大腿骨開放粉砕骨折、右膝窩動脈損傷、右膝窩動脈は、血管吻合、創外固定、植皮を施行される。

 その後、血管造影検査で、膝窩動脈に80%の狭窄を認め、PTA(※1)を施行される。受傷後3カ月で、髄内釘による大腿骨骨接合術施行され、術後LLB装具(※2)を使用するも、右外傷後麻痺性尖足、大腿短縮を認め、受傷後9カ月目に紹介転院となる。   ※ PTA・・・血管の狭窄に対して、ピッグテールカテーテルを留置する治療法、

※ LLB装具・・・長下肢装具long leg brace    転院時、右大腿の短縮と右麻痺性尖足変形を認める。MMTにて、右前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の筋力は、0であった。X線所見では、右足関節脛踵角110°右足部Hibbs角116°右足部Meary角27°右足部MTB角79° であり、内反凹尖足変形を認めた。   ② 治療  この症例に対し、右足関節、距骨関節、踵骨l関節の3関節固定術を施行した。

 踵立方関節を切除し、距骨下関節は懊状に切除した。

 骨萎縮を認め、距骨と踵骨,距骨と立方骨をステープル2本にて固定した。

 足底よりK-wire2本を刺入、更に1本を距舟間の固定のため刺入した。

 術後6週間ギプスによる外固定を施行し、その後、脚長差を補正したSLB装具にて荷重開始した。

 術後7ヵ月にて尖足の矯正は良好であるが、患者は右大腿短縮による生活上の支障を訴え、右下腿脚延長目的にて入院となる。現状、右大腿骨にて4.7cmの下肢短縮を認める。

 右大腿骨は変形癒合しており、髄内釘抜去により骨折する可能性が高く、また受傷時、膝窩動脈損傷があり、大腿骨での骨延長は危険であると判断し、右下腿にイリザロフ骨延長器を設置した。

 術後1週より1mm/日にて骨延長を開始すると同時に尖足変形防止のため、前足部背屈を開始した。現在約6cmの骨延長を得ており、尖足変形もみられておらず骨癒合待機中である。   ③ 結び  距骨下関節の高度変形が存在し、そのために足部痛や尖足変形を生じているときは、足関節固定術の適応となる。また尖足変形を矯正することにより下肢短縮が著明となることがあり、2~3cmの短縮であれば足底挿板にて矯正可能であるが、5cm近い短縮であれば跛行も著しく、両股関節以下、両下肢への悪影響が懸念され、脚延長術を施行すべきであると考える。

 外傷性足部尖足変形は、足部及び足関節部への直接外力によるものが圧倒的であるが、コンパートメント症候群によるもの、下腿骨折加療中の固縮、火傷後、大腿骨骨折後の腓骨神経麻痺によるものが報告されています。   ④ 交通事故110番 宮尾氏のコメント

 本件は、労災事故ですが、被害者は、右大腿骨開放粉砕骨折、右膝窩動脈損傷の重症です。右膝窩動脈は端々縫合でつながり、膝上切断は免れましたが、膝窩動脈に80%の狭窄が認められ、PTAカテーテルが留置されています。右大腿骨は開放性粉砕骨折であり、髄内釘による大腿骨骨接合術が行われたのですが、変形癒合しています。骨短縮と右外傷後麻痺性尖足の治療目的に、受傷後9カ月目に転院しています。

 この症例に対し、右足関節、距骨関節、踵骨l関節の3関節固定術が行われました。術後6週間ギプスによる外固定を施行し、その後、脚長差を補正したSLB装具にて荷重を開始、右外傷後麻痺性尖足は矯正されていますが、右大腿骨では、4.7cmの短縮が認められています。

 この段階で症状固定とすれば、右大腿骨の変形を無視しても、右足関節の用廃で8級7号、1下肢の3cm以上の短縮で10級8号、併合7級となります。

 被害者は、下腿骨にイリザロフを設置して骨延長術を受けており、仮骨形成では6cmの骨延長が実現できたので、短縮による10級8号はなくなりました。

 この症例で驚かされたのは、足関節に傷病名がないことです。右大腿骨開放粉砕骨折後の骨短縮と変形骨癒合、そして右膝窩動脈損傷後の血流障害によって、負傷をしていない右足関節と右足部に右外傷後麻痺性尖足を発症したことです。重症例の後遺障害では、受傷部位にこだわることなく、俯瞰的に全体を見ていかなくてはなりません。    次回 ⇒ 足根骨 距骨々折  

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 足根骨 外傷性内反足(がいしょうせいないはんそく)

  (1)病態

 足の裏が内側を向き、外側部だけが地についている状態を内反足といいます。先天性のものが圧倒的ですが、交通事故外傷でも発症しています。

 外傷性内反足に遭遇したときの、被害者10歳、女子の傷病名です。短腓骨筋腱完全断裂、長腓骨筋腱部分断裂、距骨外反、前足・中足部内反、右腓骨遠位端骨折、右腓骨遠位端線損傷、足関節の捻挫に伴って発症するものに、短腓骨筋腱縦断裂があります。

 足の捻挫のあと、いつまで経っても外踝(くるぶし)の後部に疼痛があるときは、短腓骨筋腱断裂が疑われるのです。上図は、オレンジ色が短腓骨筋、青色が長腓骨筋で、どちらも、足首を外へ返す働きをしています。○印は、外踝(くるぶし)の後部ですが、そこでは、長・短腓骨筋腱が並んで走行しています。足首を内側に捻挫したとき、短腓骨筋腱は、長腓骨筋腱と外踝の骨である、腓骨の間に挟まり、ストレスがかかり、縦に断裂することがあります。また、短腓骨筋腱が外踝の後ろで亜脱臼して、縦に断裂することもあります。   (2)症状

 外踝の後ろで、短腓骨筋腱が断裂したときは、外踝の後部が腫れ、疼痛を発症します。内反足は、外反扁平足とは逆の、「く」の字の変形をきたします。

 今回は、交通事故による外傷性内反足に遭遇しました。10歳女子の右足は15°内反しており、左右の下腿部の比較で、右下腿が1.5cm筋萎縮しています。足の外側縁の接地であることから、第5中足骨々頭と基部にタコができていました。足の内返しとともに尖足(せんそく)を伴うことが多いのですが、その徴候は認められていません。

 ※ 尖足(せんそく) 続きを読む »

(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 変形性足関節症は、変形に伴う痛みと、足関節の可動域制限が後遺障害の対象となります。

① レベルⅠは、常識的には、痛みで14級9号となります。   ② レベルⅡ、Ⅲでは、多くが、足関節の可動域制限で12級7号となっています。

 ただし、下位脛骨骨切り術が成功したときは、14級9号に下がることがあります。   ③ レベルⅣで足関節固定術がなされたときは、足関節の用廃で8級7号となります。

 人工足関節置換術では、10級11号が認定されますが、人工足関節置換術は、少数例です。   Ⅱ.

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 腓骨筋腱周囲炎(ひこつきんけんしゅういえん)    2015年5月3日、広島の黒田博樹投手が、出場選手登録を抹消されました。チームドクターの診察では、右腓骨筋腱周囲炎と発表されています。開幕から、慢性的な痛みがあり、アイシング治療を続けてきたが、改善していないとのことです。そこで、箸休めですが、腓骨筋腱炎を検証してみます。直接の交通事故外傷では、まず、みられませんが、予後に二次的発症の可能性はあります。

(1)病態

 上図は、オレンジ色が短腓骨筋、青色が長腓骨筋で、どちらも、足首を外へ返す働きをしています。印は、腱鞘の中を、長・短腓骨筋腱が並んで走行しています。腓骨の下部骨端に付着した腓骨筋腱は、膝の外側の下から足首の外くるぶしの後を通り、足の甲に付いていて、足を外返しするときに使う筋肉で、下半分は腱で構成されています。

 そうです、右腓骨筋腱炎は、下腿に発症する腱鞘炎なのです。黒田博樹投手は右投げですから、右が軸足となります。右足を強く踏ん張る動作の繰り返しで、炎症を起こしたものではないかと予想されるのです。   (2)症状

 腱鞘炎ですから、患部の痛みと腫れです。メジャーに比較して、日本球界のマウンドは、やわらかい?マウンドの斜面では、日本球界の角度は、急である?マスコミでは、こんな指摘がなされていますが、右足への負担がどうだったのか、今のところ不明です。   (3)治療

 発症の原因となっている動作が制限されます。保存的に、テーピングや外用剤で湿布を行いますが、関節の拘縮を防止する必要から、リハビリでは、軽いストレッチが行われています。痛みが激しいときは、ステロイド注射を併用します。

 いよいよ改善が得られないときは、腱鞘の切開術が行われ、圧迫を開放しています。   (4)後遺障害のポイント

 ほとんどは、保存療法で改善が得られます。改善が得られなくても、腱鞘の切開術で完治しますから、後遺障害は残しません。    次回 ⇒ 変形性足関節症  

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 足関節離断性骨軟骨炎(そくかんせつりだんせいこつなんこつえん)

外側の前距腓靱帯が断裂し、距骨と脛骨が衝突しています

  (1)病態

 足関節離断性骨軟骨炎は、足首の捻挫に伴う二次的な損傷ですから、受傷直後は、足首に痛みを感じることはなく、違和感を自覚する程度です。

 そして、この症例は、骨端線が閉鎖する以前の小・中学生に多く見られるのが特徴です。後段の55距骨軟骨損傷でも解説していますが、足首の内返し捻挫で、距骨と脛骨が衝突すると、その衝撃で、前距腓靱帯は部分断裂を起こします。   (2)症状

 足関節の痛みと腫れ、足首の不安定な感じ、捻挫を繰り返す、適切な治療が行われず、靱帯損傷が放置されても、安静にしていれば、腫れや痛みは引いてくるのですが、足関節には不安定性が残り、歩行や運動で、捻挫を繰り返すことになります。

 内返し捻挫の回数を重ねるうちに、脛骨の衝突を受けた距骨軟骨が傷つき、さらに症状が進行すると、距骨軟骨下の骨が壊死を起こし、軟骨が剥がれてしまいます。剥がれた軟骨は、関節遊離体(※)となって関節の中を動き回り、激痛、関節水腫を発症、また、関節の間に挟まって、ロッキングを起こすこともあります。 続きを読む »

 𦙾腓靱帯損傷(けいひじんたいそんしょう)   (1)病態

 前距腓靭帯よりも、上側に位置し、前方を前脛腓靱帯、後方は、後脛腓靱帯と呼び、脛骨と腓骨の下部を離れないように締結しています。

 

 脛骨と腓骨は距骨を内外側から挟み込むソケットであり、その役目を果たすため、脛腓靱帯により、脛腓間をしっかり連結しています。脛腓靱帯損傷で、脛腓間の連結が緩むと、距骨の円滑な運動が損なわれて、距骨軟骨面である滑車が、脛骨や腓骨の関節面と衝突、関節軟骨の骨折や変形を生ずる原因となるのです。転落で着地するときに、足首を捻ると、その衝撃で距骨が脛骨と腓骨の間に潜り込み、脛骨と腓骨間が拡がり、この2つの骨を締結している前脛腓靭帯が損傷するのです。   (2)症状

 症状は、足首前方の痛みと腫れですが、引き延ばされた、もしくは部分断裂では、大きな腫れや、強い痛みはありません。しかし、前脛腓靭帯と前距腓靱帯の2つが断裂したときは、激痛で、歩けなくなります。   (3)治療

 前脛腓靱帯は、他の靭帯よりやや上にあり、触診でこの部分に圧痛があれば、この靭帯の損傷が疑われ、治療は、引き延ばされたものや部分断裂であれば、包帯やテーピングなどでしっかりと固定し、靭帯がくっつくのを待つことになります。

 重症の断裂では、腫脹をとるためにスポンジ圧迫のテーピングを5日前後行い、以後は、原則としてギプス包帯固定が行われています。固定をしっかり行わないと靭帯が緩んだまま癒着し、関節が不安定になります。このグレードであれば、4週間前後で痛みはなくなり、6週目からは運動を再開することができます。

 しかし、前距腓靱帯と前脛腓靱帯が断裂しているときは、難治性であり、アンカーボルトで固定する手術が選択されます。足首の底・背屈運動では、脛腓靭帯結合部は、1.5mm離開し、前脛腓靱帯にストレスがかかります。ギプス包帯で固定しても、くっつくのに相当の時間がかかり、早期運動療法には馴染まないのです。そこで、靱帯再建術が選択され、時間をかけて注意深くリハビリが行われています。   (4)後遺障害のポイント

 歩行中や自転車、バイクの運転中の交通事故で、右足首を捻挫しました。治療先では、どんな姿勢で捻挫したのか、受傷機転が確認されます。その後、痛みのある部位を触診して、どの靱帯が、どの程度損傷しているのか、腫れも参考にしながら、丁寧にチェックされます。最後に、XP撮影で、骨折の有無が検証され、骨折がなければ、なんとなく、ホッとします。    でも、これで診察が終わるのではありません。    次に、靱帯損傷のレベルをエコー検査で確認することになります。部分損傷、断裂では、ギプス固定+早期運動療法が診断され、治療方針が説明されます。

 ギプス包帯で固定し、松葉杖の貸し出しで初診は終了します。完全断裂でも腫れが強いときは、入院となり、MRI検査が指示されます。患部に対しては、RICEの処置がなされます。

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