脊髄シリーズ、今日で終了です。神経の後遺障害はとても深い領域です。私のわずかな経験では語り尽くすことはできません。より経験を積んで学習を深めていきたいと思います。

 最後に画像以外での判定、診断について昨日の見学から報告です。この患者さんの症状は脊髄損傷を示していますが、画像所見では判然としません。既に受診した2~3名の医師も「う~ん・・・」状態でした。このような不確定な状態で漫然と治療を続けていても不安です。ついにその分野の第一人者たる専門医の診断を仰ぎました。  

<検査と診断>

 頚部神経症状か脊髄損傷か・・・上肢、下肢のしびれ、めまい、ふらつき、不眠等、神経症状の原因をまず判定しなければ治療方針も定まりません。

 この専門医師はしばらく患者の話を黙って聞いています。そしていくつか質問を行い、以下の検査、数項目をはじめました。 

1、首の左右の神経根圧迫の様子をみる

 まずはジャクソンテスト、スパーリングテストと呼ばれる検査です。医師が頭を上から垂直に押すジャクソン、首を左右に傾けて押すスパーリング、その結果で左右の神経根圧迫のサイン(指先にビリビリと痺れが走る)を観察します。  昨日の医師の場合、「首を左に傾けて下さい」、「次は右」、「指先まで痺れがきますか?」。それだけです。患者にまったく触れません。                 

                  

2、腱反射

 ゴムハンマーで膝などをコンッと叩く奴です。 上腕二頭筋と腕橈骨筋を叩きました。 神経根圧迫の場合、反射は「低下」、「消失」といった、無反応にちかい反応を示します。脊髄損傷の場合は「亢進」です。亢進とは異常反応のことで、ピクッと筋肉が緊張します。                 3、病的反射  (トレムナー、 ホフマン、ワテンベルク )

 ・ホフマン ・・・ 手の平を上に向け、中指を曲げて手のひら側にピンッと弾きます。  ・トレムナー ・・・ 今度は伸ばした中指の腹を指で数回弾きます。 ・ワテンベルク・・・ ...

続きを読む »

<後遺障害>

寝たきりとなり介護の必要なものから、上肢・下肢にしびれが残存するもの、痛みや可動域制限の残るもの等、症状・軽重の幅が広くなります。系統的には神経系統の障害に属します。

等級 内容 喪失率 自賠金額 1級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 100% 4000万円 2級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 100% 3000万円 3級3号 神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 100% 2219万円 5級2号 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 79% 1574万円 7級4号 神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 56% 1051万円 9級10号 神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 35% 616万円

   ムチ打ちで診断書に「脊髄不全損傷」と書かれても、画像所見が乏しいと12級13号、14級9号で判断されます。両上肢や下肢にしびれが残存する、排尿排便障害が残る、これらは脊髄損傷の症状ですが、「局部に神経症状を残すもの」で括られます。後にも先にも画像所見が決め手です。

                 続きを読む »

<損傷部位の分類 >

1、上位脊髄損傷

 首は7つの骨が積み重なっています。上からC1~C7です。このC1(環椎)~C2(軸椎)に並走する脊髄に損傷が起こると、その支配する肋間筋と横隔膜の運動不能となります。これは呼吸するための機能が失われることを意味します。多くは死亡となる深刻な部位です。  助かったとしても自然呼吸ができないため気管切開し、人工呼吸器を通すことによって生命維持をはかります。

2、下位脊髄損傷

 首の部分では頚髄損傷、胸の部分では胸髄損傷、腰の部分では普通に脊髄損傷と呼びます。  多くは両上肢、両下肢、排尿排便障害の症状となります。寝たきりで随時介護が必要ななものから、一定の仕事の影響を及ぼす程度のものまで軽重の幅があります。

3、中心性脊髄損傷

 器質的損傷を伴わず、脊髄の損傷自体も発見づらいが上肢にのみ症状がおこる場合があります。首や胸や腰といった脊髄の位置をさすのではなく、円柱型の脊髄を輪切りにしてその中心部と外側(辺縁部)をわけて損傷部位をみます。神経線維は中心よりに上肢、外側よりに下肢とつながっています。したがって病変部を探し当てる?MRI撮影が必要となります。

                      脊髄に少し脊椎やヘルニアが圧迫しているだけで脊髄損傷と診断する医師がいると聞きました。見ての通り脊髄の損傷は生命や四肢運動に関わる重篤な障害です。患者の自覚症状をしっかり観察し、画像の精査と描写の工夫が大事であると実感している次第です。

続きを読む »

 ・・昨日に続きます。

 医師は脊髄損傷における合併症とその予防に注意を払っています。代表的な4つは、

1、褥瘡(じょくそう)・・・寝たきりの高齢者に要注意の床ずれです。

 動作不能の患者は寝たきりの状態になります。頻繁な体位変換、専用予防マットの使用、皮膚清拭が必要です。

2、尿路感染症

 排尿障害は閉尿(尿の出が悪くなる)や頻尿(回数が増える)に2分します。それぞれ症状に応じて、間欠導尿、排尿訓練、自己導尿訓練が必要です。カテーテルを用いるケースもあります。

3、呼吸器感染症

 痰の吸引、タッピング(背中を叩いて痰を切る)、肺理学療法を行います。

4、関節拘縮

 関節可動域訓練、安静時の良肢位保持。  脊柱の可動域が2分の1となれば8球2号の障害が認定されますが、これは関節拘縮を直接の傷病名とするものではなく脊椎・脊髄の器質的損傷を条件としています。

  <検査>

1、MRI

 とにかく画像所見ありきです。医師も脊髄損傷を確認しないことには治療方法を選択できません。T1、T2でそれぞれ病変部を明らかにします。共に3.0テスラのような高精度が望まれます。また技師が脊髄損傷の撮影に慣れていることもポイントです。

2、ミエログラフィー   脊髄(もしくは馬尾神経)の圧迫病変を探します。腰椎もしくは頸椎から造影剤を脊髄腔内に注入し、X線でその拡散の様子を透視・撮影します。造影剤が途中で完全ブロックする部分、つまり中枢側の病変位置を知りたい時に用います。近年MRIの高精度化で役割は薄れました。  しかし、MRIではリアルタイムに前後・左右に屈曲・伸展させた時の髄腔の変化を撮影することができないため、MRIで画像所見が得られない場合、未だ有用とされています。

3、SSEP (体幹部の神経伝達速度検査)  手や足の感覚神経に電気的な刺激を与えることによって、誘発される反応を記録するもので、手や足から脊髄、脳幹、大脳皮質に至る感覚神経の機能を見ます。頭、首、腰、などに電極を数個つけて、手や足の末梢神経を軽く電気刺激します。低周波マッサージ器の様なピリッピリッとした刺激痛があります。

4、針筋電図検査  神経から筋にかけて、刺激電極と測定電極(関電極)、不関電極(基準電位用、いわゆるアース)を持ち、電気の流れを表示します。神経麻痺検査の決定版ですが、どの病院でもこの検査に積極的ではないようです。相当の症状を示さない限り医師の指示がでません。  ちなみに腕や足の神経麻痺では画像所見が取れないケースが多いので、これに頼ります。

5、膀胱内圧検査・肛門内圧検査続きを読む »

 まず一枚の画像から。左がMRI・T2画像、右が同じくT1画像です。C6/7(赤い矢印)の部分がそれぞれ病変部で、T2では白く(高信号)、T1では黒く(低信号)描写されています。これはバイクの自損事故で外傷性脊髄損傷を負った18才患者です。

 バイクで転倒した際、頚部を路面に打ち付け、そのまま救急車で搬送、入院となりました。首はまったく動かせず、両腕が無感覚で手指のしびれがひどく、足もだるくなり長時間の歩行は困難です。その後リハビリを続け、下半身の回復は進みましたが、両上肢の麻痺は残存し、トイレが異常に近くなる症状が残存しました。

1、脊髄損傷    脊椎に軸圧、屈曲、回旋、伸展、剪断、伸延などの協力な外力が加わり、脊髄の神経伝導路が遮断され、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿排便機能障害を起こします。原因としては交通事故が多く、次いで高所からの転落、転倒、スポーツ外傷です。実際に先月、3階のベランダから落下し、障害を負った方の相談がありました。   <受傷タイプ> ① 伸展損傷・・・最も多発するタイプ。X線所見では軽微でも、麻痺は重篤なケース          もあります。 ② 屈曲損傷・・・椎体圧迫骨折や亜脱臼、完全脱臼となります。 ③ 伸展回旋損傷・・・外力が加わた方向と反対側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。 ④ 屈曲回旋損傷・・・外力が加わった方向と同側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。 ⑤ 側屈損傷・・・少数例。小さい子に稀にある。

<状態の分類>

■ 完全損傷

 脊髄が完全に脊椎や椎間板によって遮断されたり、脊髄そのものが引きちぎれるので、非可逆性で回復はしません。とくに環椎・軸椎部分の場合、呼吸困難で多くは死亡となります。奇跡的に全身麻痺で寝たきり状態です。

■ 不完全損傷  重篤度に分けて4つの症状に分類します。

① 前部脊髄損傷・・・運動麻痺はあるが、触覚、位置覚、振動覚は保ちます。 ② 中心性脊髄損傷・・・下肢より上肢の運動障害がひどく、温覚と痛覚が麻痺、触覚は保ちます。 ③ 後部脊髄損傷・・・少数例。触覚、位置覚は麻痺しますが、運動障害はありません。 ④ ブラウン・セカール型損傷・・・脊髄の片側損傷、損傷側の運動麻痺と反対側の温覚、痛覚の障害。

<治療>

 初期は救急処置と全身管理、損傷脊椎の整復と固定を行います。徐々に関節可動域と筋力の維持を目的とした早期リハビリテーションを行います。 慢性期では座位立位の保持、移動動作、車椅子操作、歩行能力、日常生活活動動作の確保のために残存筋力の維持、増進を進めます。  

 出かける時間になってしまいました。続きは明日に・・・

続きを読む »

(1)遂行機能

 遂行機能の障害とは、物事を順序立てて実行することが難しくなり、仕事や家事の段取りが悪くなります。1つの行動なら出来ても、2つ以上の行動になると同時にはできません。

 かつての子供の被害者さん(3級)の例で説明します。冷蔵庫からの飲み物を持ってきてとお願いしました。「お父さんには麦茶をパックごと、お母さんにはジュースをグラスに注いで持ってきて」と、二つ同時に頼みましたが、固まってしまい、動けなくなってしまいました。もちろん、まず「麦茶を」持ってきてもらい。次いで、「ジュースを」と分けて、一つ一つ頼めばできます。

 脳のマルチタスク(同時作業)が苦手になってしまったのです。当然、洗濯をしながら料理など、二つ同時にできません。野菜を切りながら、スープを温めることも苦戦してしまいます。

 プランニングもできません。目標 ⇒ 計画 ⇒ 実施 のプロセスが難しくなってしまうのです。段取りが組めませんから、仕事や家事以外でも、旅行の計画、スケジュール管理、乗り物の乗り換え、これらが苦手となってしまうのです。   (2)注意機能

 注意機能の低下とは、「以前やっていた仕事のミスが増える」、「周囲の音や動きで気が散って、落ち着かない」、逆に「反応が鈍い」、「目の前のことに固執して、他に気が向かない」などです。高次脳機能障害の中でも発現頻度が高く、様々な種類に分かれ、軽重の幅も広いものです。医学的に分類しますと、

① 持続性注意障害  注意力が持続できなくなります。注意の強さに波があり、維持が困難な場合があるため、活動全体に一貫性がない、まとまりが乏しくなります。

② 選択性注意障害  対象物に対し注目できなくなくなります。適正な情報のみを見つけることができません。

③ 転換性注意障害  注意を向ける対象から、別の情報に切り替えることができません。目的と関係ない情報の影響を受けやすく、物を選ぶ行為の際、取捨選択が難しくなります。

続きを読む »

 前日のRBMT(リバーミード行動記憶検査)は、文字通り「行動」に対して記憶しているかどうかを問う検査です。さらに細かい検査になりますが、「聴覚」や「視覚」に焦点を当てた記憶検査もあります。

 例えば、聞いたことをその場では理解したようでも、5分後には「聞いていない」と言ったり、まったく違う言葉に置き換えてしまうなど、会話の内容を忘れている。このような症状には「聴覚」に特化した記憶検査をします。

 また、一度見た物を覚えられないので、何度も訪問した家に「この家に初めて来た」と言う、「丸い大皿を取って」と言われても、四角い小皿を渡してしまう、これらは「視覚」検査を徹底すると数値にはっきり表れます。   ③ 三宅式記銘検査

 ある単語と単語のペアを聞かせ、それを覚えているかをみます。その単語のペアは、関連する組みあわせ(有関連追語)と、まったく無関連な組み合わせ(無関連対語)で、それぞれ10組行います。   <有関連対語> ・・連想ゲームです

 まず「煙草」→「マッチ」といったの関係するペアの単語を聞かせます。その後「煙草」と言ったら「マッチ」と答えられるか3回テストします。

 他に「家」→「庭」、「汽車」→「電車」 など10組で10点満点です。

 障害のない人は3回目までで、ほぼ全問正解となります。平均値は 1回目8.5点 – 2回目9.8点 – 3回目10点   <無関連対語> ・・暗記力が問われます

 「入浴」→「財産」、「水泳」→「銀行」、「ガラス」→「神社」・・・関係のない言葉の組み合わせに、健常者でも苦戦しそうです。

 平均値は 1回目4.5点 - 2回目7.6点 - 3回目8.5点

 障害者は無関連追語で特に点数が悪くなります。1回目から3回目まで点数が上がらない、つまり、学習能力の低下を表します。   ◆ 現在、三宅式の単語が(作成当時の言葉から)古くなったので、SP-A 検査 にリニューアルされています。   ④ ベントン視覚記銘検査

 視覚性注意、視覚性記憶、視覚認知、視覚構成能力の4つの観点で評価します。

 ○、△、□などの3つの図形が書かれた見本を見せて、その後それを同じ形、同じサイズ、同じ並び方で書かせます。これを10枚繰り返します。

続きを読む »

  ② リバーミード行動記憶検査 (RBMT)    昨日のWMS-Rが科学的な考察とすると、リバーミードは日常生活に即した問題を使うので、より日常生活での問題点を浮き彫りにできます。記憶障害の立証には大変参考になります。  

検査項目 課 題 考えられる日常の生活上の問題 姓名 顔写真を見せて、その人の姓名を記憶させ、時間をおいてからその写真を見せ、覚えているか質問する。 主治医や看護師の顔は覚えてられるが名前が思い出せない。 持ち物 患者の持ち物を借りて、しばらくしてから「何を借りていたのか」質問する。 自分の持ち物の管理。大事なものをどこにしまったか忘れる。「物取られ妄想」の有無。 約束 時計のアラームをセットし、それを20分後に鳴らし、アラームをセットしたことを覚えているかをみる。 約束、服薬、通院日などを覚えていられない。 絵 風景画を見せて、時間をおいても覚えていられるか。 慣れた病院内で迷子になる。売店やトイレの場所を覚えられない。 物語 短い物語を聞かせ、ストーリーを覚えていたかを聞く。 少し前の会話の内容を覚えていない。 顔写真 顔写真を見せて、時間をおいても覚えていられるか。 病院内のスタッフが覚えられない。 道順 設定されたコースを一緒に歩きながら教えて、間をおいて一人でたどらせる。 自宅から数百m離れると帰れなくなる。新しい場所に行くと迷子になる。 要件 道順の検査の際、ある用事を言いつけ、それを覚えているかみる。 毎朝掃除するなど、日課がこなせるか。 見当識 知能検査でやったような簡単な質問をする。 日付や曜日、住所に混乱がある。

   記憶障害とされる点数は、

標準プロフィール スクリーニングプロフィール 39歳以下 19点以下 7点以下 40~59歳 16点以下 7点以下 60歳以上 15点以下 5点以下

   検査は30分程度です。この検査の内容を見ると、ストレートに「日常生活状況報告表」の裏付けになると感じました。 

   本記事をアップデートしています 👉 リバーミード行動記憶検査 解説(改定版)改訂版       次回 ⇒ 神経心理学検査 記憶の検査Ⅲ  

続きを読む »

 記憶障害は、高次脳機能障害でもっとも典型的な障害です。高次脳機能障害の場合、自分の名前や家族などを忘れてしまう、いわゆる「記憶喪失」とは違う症状を見せます。ほとんど事故前の記憶を留めるものの、ある一部分だけすっかり忘れている、または昨日の記憶、5分前の記憶が欠落してしまう・・・これらは短期記憶障害に分類されます。

 例えば、飼っていた猫の名前を忘れて思い出せなくなってしまう、昨日散々「明日は病院の日だからね」と言っておいたのに、今日になったら忘れている、数分前の会話の内容が思い出せず、同じ事を聞いてくる。症状は患者によって千差万別ですが、これらが家族を悩ませ、職場復帰を困難にしています。この状態を障害として、客観的に示すには、専門の検査を受けなければなりません。      記憶障害の短期・長期? 👉 円楽師匠、短期記憶障害も「昔覚えた落語は忘れてない」   ■ 記憶検査

日本版ウェクスラー記憶検査 (WMS-R)

 世界的に標準とされる記憶検査で、言語を使った問題と図形を使った問題を13項目行います。

指標項目 関連する下位検査項目 言語性記憶 論理的記憶 言語性対連合Ⅰ 視覚性記憶 図形の記憶 視覚性対連合Ⅰ 視覚性再生Ⅰ 一般性記憶 言語性記憶+視覚性記憶 注意/集中力 精神統制 数唱 視覚性記憶範囲 遅延再生 論理的記憶Ⅱ 視覚性対連合Ⅱ 言語性対連合Ⅱ 視覚性再生Ⅱ

 

 100点を標準とし+-15点を正常値とします。所要時間は1時間程度です。WMS-Rは記憶障害の基本検査です。この検査から、全体の中で比較的IQの低い項目に注目、より絞った検査を追加しています。    続きを読む »

 主に左側頭葉の損傷で言語障害が発症します。言語障害の検査を解説します。   ■ 言語機能に関する検査

 事故以来言葉をスムーズに発っせなくなった、極端にゆっくり話すようになった、こちらの言うことに対する理解が遅く会話が滞りがちになった…これらは一般に失語症となりますが、高次脳機能障害の場合、以下の2種が代表的です。   〇 運動性失語

・・・左前頭葉のブローカ野(領域)の損傷。話し言葉の流暢性が失われます。   〇 感覚性失語

・・・左側頭葉に位置するウェルニッケ野(領域)の損傷。流暢性は保つものの言い間違いが多く、発言量の割に内容も乏しくなります。    くも膜下出血で倒れた人が、左脳の出血と損傷によって、言葉に障害が残ってしまったケースと似ています。しかし高次脳機能障害は程度の軽重に差があるため、軽い失語症は事故のショックのせい?、いずれ治るはず?と、周囲も安易にみてしまいます。失語症に絞った定番の検査は以下の通りです。   ① ...

続きを読む »

1、意思疎通能力 (記銘・記憶力、認知力、言語力)

 

2、問題解決能力 (理解力、判断能力)   3、遂行能力 (作業負荷に対する持続力・持久能力)   4、社会行動能力 (社会適合性、協調性)

   これら、4能力について6段階評価をして障害等級を判定します。したがって、これらの設備をもち、言語聴覚士等専門家のいる病院にて検査をする必要があります。診断書に「高次脳機能障害」、「脳神経障害」、「認知障害」と書かれているだけでは、なんの判定もできません。残念ながら、この神経心理学が可能な病院は非常に限られています。「治療」と「障害立証」は別であることを強く認識して下さい。    たくさんある検査の中から、実際に見学もしくは体験?した検査を挙げてみます。   ■ 知能テスト   ① ミニメンタルステート検査(MMSE)   ② 長谷川式簡易痴呆スケール(HDS-R)    見当識、注意力、言語、模写などの認知、計算などを観察します。「今日は何月何日ですか?」「ここの場所は?」など簡単な質問に答えてもらいます。10分程度でできる簡単な検査です。正常な人であれば、30点満点でほぼ満点になります。

 この二つの検査は、高齢者の認知症やアルツハイマー型認知症の簡易検査として用いられています。高次脳機能障害の場合はベッドサイドでも実施可能なので、受傷初期に実施されるようです。本格的な検査は、ある程度の回復をみせてからです。それらの検査は③以降になります。    令和5年のコラム 👉 長谷川 和夫 ...

続きを読む »

 肩の後遺障害、その基本解説は本日の6回目で一旦終了します。最後に、肩と言っても腕の骨、上腕骨の肩関節部分を取り上げます。   6、上腕骨近位端骨折   ■ 治療

 上腕骨近位端は4つの部位に分かれており、①上腕骨頭 ②小結節 ③大結節 ④骨幹部です。

 大結節には棘上筋腱部が付着しており、棘上筋が切れたり延びたりすると、肩関節の機能障害となります(肩の後遺障害2~3 参照)。小結節には、肩甲下筋腱部が付着しています。

 上腕骨近位=肩関節部が折れてしまうと、脱臼を伴うことが多く、骨折の部位、骨片(折れて転位した骨)の状態によって治療法が分かれます。軽度で転位がない場合、ハンギングキャスト(キブス包帯)、機能的装具で固定します。

 関節内の骨折は、骨膜性仮骨(※)が期待できないので、転位(ズレ)がひどいと、骨頭壊死といった怖い症状が続きます。したがって横骨折、粉砕骨折、開放骨折では手術による整復が必要です。     骨幹部(上腕部分)の骨折は橈骨神経麻痺を残す可能性もあります。   ※ 骨膜性仮骨・・・骨折部に新しい骨組織が作られて自然修復していきます。これが関節内の骨折では上手く機能しないので深刻なのです。    ■ 後遺障害

 やはり、運動制限を残すことが多く、可動域制限、あるいは動揺性によって、12級6号、10級10号の選択となります。     ここから先は「腕の後遺障害」に続きます。   

続きを読む »

 かつての代理店時代ですが、自動車保険(バイク)のお客さんが、高速道路で車へ追突する事故を起こしました。ケガは鎖骨骨折です。幸い命に別条なく、骨がくっつきさえすれば大丈夫と思っていました。その時は後遺障害についての知識が浅く、損保の研修でも「プレート固定等の手術が進歩しており、鎖骨骨折は後遺障害にならな」と、教わっていたような気がします。

 しかし癒合部分の鎖骨が盛りあがってしまい、それが外見上からも確認できます。結果的に鎖骨の変形癒合で12級6号が認定されました。「後遺障害の審査は厳しいものなので、審査の結果に期待しないで下さい」と、このお客様に説明していましたが、割とすんなり12級5号の認定となって、ホッとした事が思い出されます。

 鎖骨は、胸鎖乳突筋により上方に引っ張られているため、骨折すると骨折部内側が上方へズレやすいのです。プレートやワイヤーで固定する手術がとられますが、完全に元通りに修復されず、変形を残しやすい骨といえます。   5、鎖骨骨折・脱臼   1、鎖骨遠位端骨折   (骨折部分の呼び方) 

・遠位端 ・・・ 心臓から遠い部分。鎖骨の場合、肩よりの方。 

・近位端 ・・・ 心臓に近い部分。鎖骨の場合、首よりの方。

・骨幹部 ・・・ 骨の中心部分。    ひびが入った程度では保存療法。しかし鳥口鎖骨靭帯損傷を伴う場合、手術が必要となります。そして肩の可動域に制限が残りやすくなります。

 注意が必要なケースは関節内骨折です。肩鎖骨節(鎖骨と肩関節の結合部)にひびが入るケースで、レントゲンでも見逃されやすい部分です。自然癒合せず関節症変化となると決定的に可動制限が残ります。

※ 肩鎖骨節・・・鎖骨と肩関節の結合部。鎖骨は肩甲骨の肩峰と鳥口突起に挟まれ、肩鎖靭帯、鳥口鎖骨靭帯で結合されています。   2、鎖骨骨幹部骨折

 冒頭の例のあるとおり、上方へ転位(ズレる)しやすく、ひどいと骨折部が皮を突き破り、飛び出す(開放骨折)こともあります。その為、手術による整復が後の癒合具合を左右します。また神経血管損傷も伴うケースもあり、上腕神経叢麻痺のチェックも必要です。

 プレート固定で鎖骨の転位(ズレてくっつく)や、変形(癒合部が盛り上がるなど、曲がるなどの変形)を防ぎます。高齢者の場合、手術を敬遠しますので、変形が残り易いと言えます。

続きを読む »

 最近読んだ小説 「忍びの国」は面白かったです。著者は「のぼうの城」(近日映画公開します)ですっかり有名となりました和田 竜さんです。舞台は戦国時代、織田勢の伊賀攻めを史実織り交ぜ、物語は進みます。伊賀・・御存知の通り忍者の里で、作中で忍者が「縄抜けの術」を使いました。これは捕縛され縄で縛られていても、肩の関節を外して縄から抜けてしまう技です。

 現在でも体操選手で可能な人がいるそうです。ケガの頻発で脱臼ぐせとなり、自らの肩をぶつけて肩の関節を外すことができると聞きました。これは医学上、「随意性肩関節脱臼」と呼び、ほとんどが後方脱臼です。

 交通事故では自転車、バイクの運転者に多く、衝突の衝撃や転倒の際に手をついた時に肩に負担がかかり起きることがあります。これは「縄抜けの術」と違い、前方脱臼が圧倒的多数です。   4、外傷性肩関節前方脱臼   ■ 病態

1、バンカート病変 (関節窩前下縁の関節唇剥離)

 関節唇とは肩甲骨(受け皿側)の関節面周囲にある、軟骨で出来た土手のようなものです。これが脱臼時にはがれるので、脱臼する道が出来てしまい、脱臼を繰り返すと言われています。

 治療は保存療法とられますが、手術(内視鏡の一種で見ながらこの病変部を修復する方法=鏡視下バンカート修復術)も広まりつつあります。   2、ヒル・サックス病変 (上腕骨頭後外側の陥没骨折)

 これは肩甲骨側ではなく、上腕骨側に発生する病変です。脱臼時に関節窩前下縁部に上腕骨の後方が押し付けられることによって上腕骨のその部分に陥没骨折を起こすことがあります。その陥没骨折を完全に修復できなかった場合、脱臼ぐせとなってしまいます。   ■ 後遺障害

 習慣性脱臼では、12級6号の後遺障害等級が認められます。重篤で腋下神経麻痺が合併すると、さらに運動制限が加わります。ほとんど肩が動かなくなった場合10級10号となります。高齢者では腱板断裂や大結節骨折も伴うケースもあります。その場合も運動障害の残存から等級を計ります。脱臼癖は程度問題でもあり、不安定性程度の診断では12級13号止まりです。   ■ 立証

 亜脱臼位まで圧をかけた、ストレスXPが有効でしょう。弊所の連携先の弁護士さんが、この立証に成功、12級をとりました。動揺関節の場合も圧をかけた結果、亜脱臼位まで不安定性がないと、12級6号以上の障害とはなりません。     多くの体操選手や名横綱 千代の富士を悩ませた症状です。肩の周辺の筋肉を鍛えたり、技を工夫したり、脱臼と付き合いながら競技を続けたようです。

 

続きを読む »

 後遺障害の立証で難しい事の一つ、それは既存障害との区別です。既存障害とは元々の持病のことです。そしてもう一つ、事故との因果関係を否定される、受傷数か月後に発生した症状です。これは事故の損傷が引金となったものなのか、それとも関係なく起こったのか?・・・調査事務所は当然後者を選択し、障害を否定します。  相談を受ける側も事故による障害であるのかどうか、それを立証できるか否か、知識と経験を積む必要があります。    3、肩腱板損傷と区別しなければならない疾患

■ 肩関節周囲炎 (いわゆる五十肩)

 早い人で40代から発生する、慢性的な疼痛と拘縮です。拳上(腕の挙げ下げ)だけではなく内旋・外旋すべてに痛みが起きます。肩峰下滑液包にプロカインを注入するプロカインテストは診断治療に有効です。あとは保存療法になりますが、半年~1年で緩和します。

 これを被害者が「交通事故の後遺障害だ!」と主張しても相手にされません。逆に、腱板損傷なのに医師が検査もせず、「五十肩ですね。そのうち治ります」となったら最悪です。   ■ 石灰性腱炎 (石灰性沈着性腱板炎)

 腱板内にカルシウム結晶のかたまりが付着して、間節が動く際それが触り激痛が起きます。レントゲンで視認できます。ほとんどが保存療法で治癒します。   ■ 肩峰下インピンジメント症候群

 反復する拳上動作で棘上筋や、肩峰下滑液包が鳥口肩峰アーチに衝突して、損傷や炎症を生じます。腱板断裂に伴い発症するケースもありますが、これは突発的な外傷によるものではなく、連続した動作によっておきる関節傷害です。したがって野球のピッチャーには投球障害肩としてお馴染みです。  

続きを読む »

2、肩腱板損傷の診断    その多くは、棘上筋腱が大結節付着部から断裂するケースです。   ■ 圧痛部位

 大結節上方(肩と腕をつなぐ部分)に痛みが生じます。特に腕を外転60度から上に挙げた時に顕著で、肩の高さ以上に上げるとその痛みが軽減します。腕の無力感も伴うので腕の上げ下げ自体が自力で困難となります。これらがドロップアームサイン(昨日業務日誌参照)によって判定できます。     ■ 画像

① MRI(T2) ・・・腱板の断裂部分が高輝度で描出されます。   ② MRI(造影剤使用) ・・・完全断裂に至らない損傷の場合、微妙な病変部をよりはっきりさせるため造影剤が有効です。腱板の亀裂部分から造影剤が漏出するので損傷が明らかになります。しかし、造影剤使用はかなり限定的です。最近のMRI高性能マシン3.0テスラでは、断裂部がしっかり写るからです。MRI検査も技師の腕によって左右します。   ③ エコー ・・・超音波をあて反射音波の変化よって画像を描出する技術です、基本的に超音波は液体・固体がよく伝わり、気体は伝わりにくい。よって断裂・亀裂部分が腱の表面に描出されます。MRIより、エコー診断に自信のあるドクターもおりました。   ④ 関節鏡 ・・・腱板不全断裂の確定診断に有用です。主に鏡視下手術(直径2~10mmの細長いビデオカメラを手術部位に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術)の際に用います。   ■ 筋萎縮

 視認できますので、等級申請の際に写真添付をします。腱板断裂では断裂のあった棘上筋もしくは棘下筋の委縮となります。しかし他の筋に及ぶ場合、僧帽筋(副神経麻痺)、三角筋(腋窩神経麻痺)の時は腱板損傷以外の病態も疑う必要があります。  

<後遺障害等級>

部位

主要運動

参考運動

肩関節

屈曲 ...

続きを読む »

 最近、肩の不調を訴える被害者が続きました。交通事故外傷でも比較的見逃しやすい筋腱の損傷です。

 断裂まですれば、それなりの検査と治療が行われます。しかし、僅かな亀裂や損傷の場合、単なる捻挫の類と同一視されがちです。後遺障害の診断の時になって「肩が動かない!」と訴えても、診断名や治療実績がなければ認定上疑問視されてしまいます。人体でもっとも自由に動く関節部だからでしょうか、肩の関節部は骨も筋も複雑です。   【1】肩の機能障害      骨に異常はありませんでしたが・・・    ■ 肩関節可動域からチェック

① 腕の拳上(呼ばれてハイッ!と手を上げる)  

 可動域検査で言うと、「屈曲」(前方拳上)です。通常「気を付けの」位置から肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。背泳ぎの腕の動きです。180度 が参考可動域です。

 ※ 体の柔らかさには個人差がありますので、腕の左右の差を見て異常と判断します。

 上げきった状態での安定には肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。これらの筋や他に広背筋、大胸筋胸肋部の緊張によって動きが制限されます。   ② 逆に腕を後ろに曲げます  

 可動域検査で言うと、「伸展」(後方拳上)です。「気を付け」の位置から肩間節を軸に腕を後方へ伸ばす = 50度 が参考可動域です。

 鳥口上腕靭帯後方、間節包前部、他に大胸筋鎖骨部、前鋸筋の緊張が影響します。   ③ 真横から腕を挙上

 可動域検査で言うと、「外転」(側方拳上)です。 通常「気を付けの」位置から羽根を広げるように肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。180度 が参考可動域です。

 屈曲と混同しているケースをみます。説明する時は、「ジュディ・オングのように」と言っています。

 上げきった状態での安定には、肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘上・下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。他に間節上腕靭帯中部・下部、間節包下部、広背筋、大胸筋の緊張も影響します。

続きを読む »

 腓骨神経麻痺。すねの外側を走る神経が断裂や損傷を受け、足首や足指の自動運動が不能になる症状です。  浅腓骨神経と深腓骨神経の2本の神経が前頚骨筋、長指伸筋、長母指伸筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、短指伸筋、を支配しています。

 腓骨や脛骨の骨折の影響で神経が損傷するケースが多く、これらが損傷すると自分の意思で足首・足指を曲げられなくなります。程度の軽重はありますが、以下の後遺障害となります。   ○ 足首 → 1下肢の3大関節中の1下肢の用を廃したもの(著しい障害を残すもの =10級)   ○ 足指 → 1足の第一の足指又は他の4の足指の用を廃したもの =12級   ・・・ この場合、上記二つの認定から、併合7級となるはずでした。    この障害の立証で、被害者は2つの壁を経験しました。  

第1の壁 整形外科の仕事は骨をくっつけること?

   脛骨骨折の手術で有名なある名医の手術を受けました。プレートとねじで折れた脛骨をしっかり固定、10か月後見事に骨をくっつけプレートを摘出しました。腕は評判通りです。レントゲンを見ながら、「どうだね、元通りになったろ」と自画自賛です。しかし患者は「あれ足首が動かないな・・」、踏ん張りが利かなくて杖がないと歩けません。足首はだらんと下がったまま動きません。スリッパも自然に脱げてしまう。

 対する医師は、「あとはリハビリを頑張ることだね」と。満足げにリハビリ科に引き継ぎました。足首が曲がらない事には責任がないようです。

 後に後遺障害の審査となり、保険会社に言われるまま、そのレントゲン写真を提出しました。結果は 「骨の癒合は正常で、変形癒合、偽関節は見られないので・・・云々。しかしながら痛みや運動不能は認められるので局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号・・・えっ、杖なしに歩けなくなったのにそんな軽い障害?となりました。

 確かに脛のレントゲンを見ますと、骨折の癒合は問題ないのですが、MRIでは、周辺の筋組織の損傷がはっきり残っています。さらに外見からも筋委縮がはっきり見て取れます。左右の足の太さが違っているのです。そして、いくらリハビリしても足首も足指も曲がりません。これらの事実は審査されていません。   

第2の壁  治療は終わったのに、今頃になってなんで検査を?

   12級13号では異議申立の必要があります。必要な作業は・・・   1、足首・足指の可動域について再度計測します。骨をきれいにつなげる名医でさえ、計測を間違えています。   2、徒手筋力テストを行い、筋力低下を数値化します。   3、筋委縮を立証するため左右の足の外周を計測します。 ※ 私は写真も添付しました。   4、そして、必須は神経伝導速度検査。 麻痺が確実なら「誘導不能」となります。   5、できれば、針筋電図検査。 神経麻痺立証の決定版です。これができれば、4の必要性は下がります。    主治医にお願いして、検査をやり直しです。しかし、この名医である主治医は「可動域の計測は正しい」と自らの間違いを認めません。さらに「筋電図は必要ない」と紹介状を書いてくれません。「私の治療に問題はなかったのだ!」と依怙地になっています。患者さんはこれ以上逆らうこともできず、すごすごと帰ります。手術でお世話になったのだから当然です。    これら困難な2つの壁を乗り越えるのが私の仕事です。もちろん、医師の技術と尽力には敬意を表します。しかしベストな流れは骨の癒合の時点で上記1~5の検査を実施させ、間違いのない診断書を作成することです。そのために、頑なな主治医を説得するか、場合によっては別の病院へ誘導する必要があります。    ちなみにこの被害者のケースでは異議申し立てを行い、腓骨神経麻痺で9級、股関節可動域制限や膝関節硬縮による短縮障害とも併合しなんとか7級までこぎつけました。悪戦苦闘、9か月もかかったのです。    ありのままの真実を立証する・・・名医のおかげで茨の道でした。   続きを読む »

 後遺障害を観察する場合、二つの視点があります。他覚的所見と自覚症状です。簡単に言いますと、   〇 他覚的所見・・・専門家の見立て。つまり医師による診断です。   〇 自覚症状 ・・・患者自らが訴える症状です。「ここが痛い」「関節が曲がらない」等々です。    調査事務所による審査は当然、他覚的所見を重視します。何故なら、自己申告の症状は詐病(保険金目的のウソ障害)、または、大げさの可能性があるからです。審査側が性悪説(人は元来嘘つき)で考えることは仕方ないのかもしれません。

 したがって、自分にしかわからない症状や苦しみを医師に把握して頂き、確実に診断書に残して頂く必要があります。ここまでは、どの後遺障害にも共通することですが、高次脳機能障害では少し勝手が違います。それは高次脳機能障害の患者の多くが、身らの障害に自覚がないため、認知障害、記憶障害、性格変化、社会適合性など、一緒に暮らす家族の観察が重要となってくるからです。医師の限られた診察時間だけではわからない、細かな変化をきちんと申告、立証する必要があります。

 ほんの数年前、ようやく障害についての審査項目と書式が整理されました。医師の診断書とは別に「日常生活報告書」を添付して、家族の観察結果を申告します。「言葉による指示を理解できますか?」「タバコの火やガスの始末ができますか?」・・・50程度の質問に対し、6段階の評価をしていきます。この書面は、いくらでも恣意的、実態より重めに書くことができます。やはり、参考程度にしか見られないのでは・・という不安も尽きません。そこで、秋葉事務所では、ビデオを用いることがあります。

 元来、裁判で障害の有無・程度を争う際、証拠として映像を用いる方法でした。であれば、自賠責保険の後遺障害の審査にも有力な資料となるはずです。書面では書ききれない患者さん特有の症状や、書面からは伝わらない障害の事実・実態が強烈にアピールできます。先日も、担当の患者さんのビデオを撮影しました。その効果を実感しています。とりわけ3~7級の判定は、大変微妙な審査のとなるはずだからです。    現在、高次脳機能障害を扱う弁護士・行政書士事務所はホームページで大勢見られます。もし、ご相談を考えるなら以下の4要件を指標として下さい。   1.高次脳外来に専門医が在籍、評価ができる病院へ誘致できるか?   2. 

続きを読む »

   頭部を受傷、脳にダメージを負った結果、認知障害や記憶障害、性格変化、身体の麻痺などの後遺障害をもたらすのが「高次脳機能障害」です。10年前までは、その後遺障害等級の基準が整理されていませんでした。今でこそ知られるようになったこの障害ですが、裁判の実例にかなりバラつきのある分野です。それは、画像や計測値だけではなく、日常生活の変化を正確に観察・申告するといった要素も加わるからです。そして、立証も様々なハードルに直面します。   ① 事故直後の意識障害の様子がしっかり記録されているか?

 意識不明、昏睡状態と記録されていれば問題ないですが、記録が空欄もしくは、混濁程度に書かれると、障害そのものが認定されなくなります。ここで「意識清明」と書かれたら高次脳機能障害は「非該当」濃厚となります。これを覆すのは絶望的です。   ② 運ばれた病院が高次脳機能障害に対応できているか?主治医の知識・理解があるか?    急性硬膜下血腫等で手術を行えば、主治医も後遺症の可能性を認識します。しかし、レントゲンだけ撮って「骨には異常ないですね」、CTでも「脳挫傷はないです」、もしくは「わずかです」となると、1週間で退院?なんて例もありました。その場合は、主治医も(外来で何度も診察を重れば別ですが)後遺症の認識を持ちません。    何より、脳のダメージは、経過的に画像診断しなければいけません。ダメージを受けた脳の特徴である脳委縮や脳室拡大は、徐々に進行して、3か月後に顕著になるケースもあります。当然、この病院での検査は無理です。設備のある病院での検査のやり直しが必要となります。   ③ そして、検査だけやってくれる、都合の良い病院はほんとんどありません。

 事故後1年。家族は、回復の願いを込めて被害者に接していますが、忘れっぽい、外出すると迷子になる、家電の操作ができない、会話が成り立たない、キレやすい、趣味に興味を示さなくなった、無気力・・・そして多くの場合、本人に障害の自覚がない。    この段階で等級認定に入るのですが、① ②のつまづきがあると、立証作業は困難を極めます。何故なら、十分な検査設備・人員を備える病院は日本に数えるほどで、設備があったとしても、「治療した病院の検査が不足していましたらから、検査だけやって下さい」では、ほとんどの病院が嫌がります。強力なコネでもない限り、遠まわしに断ります。その理由は、単に治療での収入がないのに検査だけは損、保険適用の問題、様々な裏事情が絡みます。     上記は実際に経験した例です。いかに早めにご相談頂かなければならないか、おわかりと思います。回復への希望、主治医への気遣い、保険会社担当者への過ぎる期待・・・ご家族の方は、これらから距離を置いて冷静に考えることが必要です。    次回 ⇒ 後遺障害認定への道  

続きを読む »

お問い合せはお気軽に!

事務所メンバー

「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

代表者略歴を見る!

部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

今月の業務日誌

2025年4月
« 3月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

月別アーカイブ