現在担当している高次脳機能障害は7名です。介護が必要な重篤な被害者から日常生活に大きな問題のない被害者まで、症状の重さが様々です。また障害を重さ、重篤度で測るのではなく、障害の”種類”を把握するようにしています。  一定の障害があっても被害者の人生は続きます。いずれ社会復帰、仕事をしなければなりません。ベストは周囲の理解を得ながら事故前の職場に復帰することです。しかし障害の種類によっては以前と同じ業務はできない、一定の制限が必要となります。では仕事上、多くの方が避けて通れない自動車の運転について考えてみましょう。

 高次脳機能障害をもつ者は運転に関して、認知症のような絶対的欠格事由ではない。しかし、認知機能のどの領域がどの程度保たれていれば運転適性とみなされるかの基準があいまいである。高次脳機能障害者の運転能力を評価する方法としては,実車による路上評価、運転シミュレータ等によるオフロード評価,机上の神経心理学的検査,家族等同乗者による評価が挙げられる。このうち、一応のゴールドスタンダードとみなされるのは実車による路上運転評価であり、今後,医療機関と自動車教習所などとの連携により、高次脳機能障害者の路上運転評価を系統的に進めていくシステム作りが急務である。本稿では、我々が行っている高次脳機能障害者の運転評価の状況について、症例をあげて概説した。高次脳機能障害者の自動車運転については、さまざまな分野の専門家がそれぞれの立場から意見を出し合い、最良の方策を検討していくべき問題である。  (引用:日本高次脳機能障害学会 資料)

 高次脳機能障害で「どもるようになった」「言葉がでてこない」などの言語に障害が残った場合、これは運転に影響はないはずです。また軽度の記憶障害でも運転に影響はないと医師に判断された方もおります。遂行能力、注意障害、性格変化(易怒性)、易疲労性等は運転に影響しますが、これも程度によって判断されるべきです。    先日のリハビリ病院でも脳障害者の仕事復帰に向け、「自動車運転」のリハビリプログラムがありました。それは言語聴覚士による神経心理学検査を行い、運転シミュレータを加え、医師が判断します。神経心理学検査ではTrail making test(TMT)、Badsが組み込まれていました。この病院は運転シミュレータの設備があるそうです。(いずれ検査を見学したいものです)  教習所でも運転シミュレータは認知症が疑われる高齢者の免許更新に欠かせない検査となりつつあります。高次脳機能障害の場合は病院で医師の指導の下に進めることが理想的です。 続きを読む »

 少し特殊な撮影法に入ります。以下の3つは高次脳機能障害の立証に重要な意味を持ちます。単なるMRIでは病変部を見逃すこともあるので、被害者、関係者には必須の知識です。

F L A I R 画像:Fluid Attenuated Inversion Recovery(水抑制画像)

 FLAIR(フレアー)画像は、基本的には水の信号を抑制したT2強調画像(脳室が黒く見えるT2WI風の画像)であり、脳室と隣接した病巣が明瞭に描出される。ラクナ梗塞(細い血管(動脈)が詰まってしまうことで起こる小さな脳梗塞のこと)に代表されるかくれ脳梗塞や血管性認知症にみられるビンスワンガー型白質脳症(高血圧や脳の動脈硬化などにより脳の血流障害のため大脳白質(脳表面より深い部分)が広範に障害されることによって認知症が現れること)などの慢性期の脳梗塞部位(白色に描出される)確認に有用です。

<高次脳機能障害では>  脳損傷後の脳萎縮、脳室拡大の経過観察に用いられます。脳内出血や硬膜下血腫など血だまりが発生した場合、脳外科医は受傷から翌日、3日後、1週間後、1か月後、3か月、半年後とこのMRI検査を継続します。再出血への警戒はもちろん、脳の器質的変化を監視するためと思います。

T2*強調画像:T2star weighted image (T2 star 強調画像)

 T2*強調画像(T2スター)は出血性病変の検出力が極めて高く(黒色に描出される)、過去に発症した出血巣の確認や無症候性微小出血の検出に優れています。

<高次脳機能障害では>  高次脳機能障害の診断「びまん性軸索損傷」の病原部として、微細な出血痕(点状出血)の描出に有効です。T2スターで点状出血を発見!をよく経験しています。また受傷後2年経過した場合でも、脳のわずかな出血部、損傷部の痕跡を発見できるのも特徴です。

DWI:Diffusion weightedimage (拡散強調画像)

 DWI(ディフージョン)は水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したもの。拡散が低下した領域が高信号として描出されます。急性期の脳梗塞では、拡散が低下してくるため、超急性期の脳梗塞の部位判定(白色に描出される)に有用です。T2スターでも見逃す細かな損傷でも描出可能です。

<高次脳機能障害では>  T2スター同様、「びまん性軸索損傷」における点状出血、または微細な損傷の確認に有用です。違いはより微細な出血も見逃さないが、受傷直後に限定されることです。脳外傷が軽度でも意識障害や半身麻痺がみられ、また相当の脳障害が残りそうな患者の場合は早めに手を打つ必要があります。既存のMRIで脳損傷が発見できなかったときは急ぎ「DWI(ディフージョン)でお願いします!」と医師にリクエストしなければなりません。このまま損傷部が映らなければMTBI(外傷性軽度脳損傷)の扱いとなり、後の障害が否定されてしまうからです。    続きを読む »

 高次脳機能障害の原因となる、脳外傷の急性期によく行われる手術について解説します。最近担当した被害者さんもこれを行いました。   <硬膜下血腫>

 脳の表面と頭蓋骨の間には硬膜と呼ばれる硬い膜があります。硬膜と脳表の隙間は硬膜下腔と呼ばれています。硬膜下血腫はここに出血が起きることです。交通事故などの外傷で出血する場合、「急性硬膜下血腫」の診断名がつきます。また、頭の打撲後およそ1~2カ月経過して、この硬膜下腔に血液が徐々に貯留するケースは、慢性硬膜下血腫です。 貯留した血液(血腫)量が少なく、脳に対する圧迫が軽度であれば深刻な症状とはなりませんが、血腫が増えて脳実質を強く圧迫するようになると、半身麻痺や言語障害などの神経症状を呈し、高次脳機能障害の原因となります。受傷初期では意識障害を来たし、圧迫が増大し続ければ命を落とします。  続きを読む »

 サイエンス記事からコピペ、手抜き記事ですが、まずはご一読を。  

 再生医療というのは、病気や怪我などで傷ついたり機能を失ったりした体の細胞・組織・器官(臓器・筋肉・骨など)の再生や機能回復を目的とする医療技術の総称である。生きた組織や器官を移植する皮膚移植・骨髄移植・臓器移植だけでなく、人工材料で作られる義手・義足・関節、そして身体機能回復訓練のリハビリテーションなども広い意味での再生医療とされている。

 ただし、こうした方法では難病の根本治療には至らず、臓器移植にはドナー(臓器提供者)の不足、臓器移植後の免疫拒絶反応リスク、他人の臓器を移植することに対する倫理上の問題なども指摘されている。

 このため再生医療で注目されているのが、患者自身や他人から採取した幹細胞を移植して組織や器官を再生する技術だ。幹細胞というのは組織や器官に成長(=分化)する細胞のことで、分化能力を保ったまま自己増殖する能力を持っている。体の組織や器官が傷ついた場合に、残存する細胞の中で幹細胞が増殖し、傷ついた部分を修復して元の状態へ回復する現象を再生と言う。骨髄造血幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞などが知られているが、これらの幹細胞は分化できる範囲が限定される。そして、近年特に注目されているのが皮膚細胞などから作製するiPS細胞(人工多能性幹細胞)がある。

 iPS細胞は受精卵のように体を構成するすべての細胞に分化できる能力を持っている。そして患者の皮膚細胞から作製したiPS細胞を、治療に使う神経や筋肉などの細胞に分化させ、患者に移植することで病気や怪我で失われた機能を回復させることが可能になる。皮膚という完全に分化した状態の細胞に4つの遺伝子を組み込むことによって受精卵のような状態に戻し、受精卵と同様の万能性を作りだしたことが画期的とされ、生物学の常識を覆したと言われている。

 ES細胞の場合は患者と別人の細胞のため免疫拒絶反応リスクが大きくなるのに対して、iPS細胞の場合は緊急時などを除いて患者本人の細胞のため免疫拒絶反応リスクが小さく、倫理面の課題も少ないと考えられている。iPS細胞の基本特許は2009年に日本で成立し、2011年7月に欧州、そして8月には米国で製法に関する特許が成立している。

 iPS細胞による再生医療実用化に向けた課題としては、発がんリスクを低下させる技術、緊急時など他人のiPS細胞を利用する場合に備えたiPSバンクの整備、安全性や品質に関する基準・規制の策定などがあるが、動物が本来持っている自己再生能力を最大限に活用するため、iPS細胞が未来の再生医療の本命という見方が有力である。

     昨年、日本のiPSの最前線、京大の先生から半月板の手術についてご講義を頂きました。その先生は関節の専門医で、半月板の修復・再生手術について日本でトップクラスの技術、実績をお持ちです。研修後の会食でも、術式の説明が続きました。

 交通事故で膝の半月板など軟骨の損傷を負った場合、血の通っている骨と違い、血の通っていない軟骨部分は、自己修復ができないのです。つまり、骨折はくっつくが、軟骨がつぶれたら再生不可能が基本です。そこで損傷した半月板の修復は外科手術が必要となります。手術方法はいろいろありますが、影響のないところの半月板を円形にくり抜いて、損傷個所に埋め合わせる移植術があるそうです。この移植術も半月板組織をiPS細胞の培養で作ることが可能となるはずです。    交通事故外傷で重度の骨折の手術の場合でも、腸骨や腓骨など比較的人体に影響のない骨を採取し、損傷個所に使う手術が多くあります。これもiPS細胞ですべて解決できる未来が目前のようです。    

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 膝や肘など関節部分を骨折すると、高い確率で後遺障害が残ります。ざっくりと後遺障害の指針を示します。   1、骨折の癒合後の骨変形や転位(ズレてくっつく)、関節面の不整による可動域制限   2、骨折が完全に癒合しなかった場合、偽関節による動揺関節   3、骨折と併発した靭帯損傷、軟骨損傷による痛みから、関節が曲がりづらい   4、骨折と併発した、もしくは単独の靭帯断裂、靭帯損傷(靭帯が伸びてしまった)による動揺関節   5、骨折と併発した軟骨損傷による、関節の隙間の狭小化による可動域制限   6、骨折が正常に癒合したが、関節硬縮や疼痛による可動域制限(ただし、14級9号止まり)   7、靭帯や半月板が損傷し、疼痛による可動域制限(14級~12級)      さて、もうお解りと思いますが、関節の機能障害は大きく分けてこの2種です。赤は関節の動きが悪くなったもの(可動域制限)、青は関節がぐらぐらになったもの(動揺性)です。両者は同じ骨折を契機とした障害であっても、障害の種類が違うのです。    可動域制限は、ケガをした腕(膝)と、ケガをしてしない方を比べて、4分の3位までしか曲がらない(12級)、半分しか曲がらない(10級)、硬直、ほぼ曲がらない(8級)と基準が分かれます。

 (ただし、自賠責保険は、この計測だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    動揺関節は、労災の基準では、硬性補装具の使用状態から12級(たまに装着)、10級(重労働時には装着する)、8級(お風呂以外は常時装着)とします。膝の靭帯が損傷、多くは不全断裂によって、緩んでしまったので、装具をつけないと膝がぐにゃっと崩れます。とくに、階段を降りる時は恐怖だそうです。

 (ただし、自賠責保険は、装具の装着だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    通常、「可動域制限と動揺関節は並立しない!」これが原則です。この2つの機能障害の次いで、茶色の神経症状の残存(痛みやしびれの継続)が検討されます。この審査の視点に乗って進めないと、後遺障害の立証が迷走します。    例えば、骨折後、靭帯の複合損傷で動揺性が残ってしまった障害であるのに、靭帯損傷や補償具の使用頻度に触れず、関節可動域の数値が記入されている後遺障害診断書を見たことがあります。つまり青の種類の損害なのに、赤を主張している診断書です。これはズバリ的外れ。当然ながら可動域は、ほぼ正常なので、骨の変形や転位がなければ、茶色の12級13号もしくは最悪14級9号の判断が返ってきます。    お医者さんも、その辺をよくご理解していない状態で診断書を書いてしまうことがあります。だからこそ、障害の予断が大事なのです。「このケガであれば、このような障害が残りやすい」と予想し、「可動域制限なのか動揺性なのか」を明確に区分しておくのです。これこそ、秋葉の仕事です。医師の「治療」と障害の「立証」を結びつけることなのです。

 

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 本日サッカーワールドカップアジア最終予選、日本vsオーストラリア戦です。引き分け以上で予選突破です。今夜決めたいですね。

 さて半月板損傷の長友選手が復帰しそうです。かつて本田選手も経験した半月板損傷、これはサッカー選手の職業病、かなり多いケガです。交通事故外傷でもおなじみで、大腿骨や脛骨の顆部骨折で一緒に痛める症例を何度も経験しています。その際、外傷による完全な断裂であれば、文句なく後遺障害の対象となります。しかし微細な損傷では陳旧性(古傷)の疑いとなります。これを読影するには専門医の力を借りねばなりません。最近、専門医の診断に立ち合い、初歩的な指導を受けてまいりました。

 まず復習→ 半月板損傷・・・専門医の診断から

 それではお待たせしました。「わさわさ」した画像を見てみましょう。

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 本日は高次脳機能障害の神経心理学検査の結果を主治医に提示し、確定診断を仰ぐために医師面談を行いました。珍しく弁護士先生と同行しました。そこであることを思い出しました。

 以前、高次脳機能障害をテーマとした弁護士向け研修会で、ある弁護士からご質問をいただきました。

Q 「神経心理学検査の検査結果は絶対的な判断基準にならないのではないか。検査の数値が証拠として裁判上それほど重視されないのではないか?」  高次脳機能障害の神経心理学検査は、記憶・記銘検査、知能検査、遂行・注意能力検査等、様々な角度から患者を観察します。これらの検査数値はいずれもケガをする前の検査数値と比べ、その劣化を確認する必要があります。当然ながら知能指数など個人差がありますので、年齢別平均値と比べるだけでは正確な知能の低下が測れません。ましてやケガの前にこのような専門検査を受けている方などほとんど存在しません。

 したがって前述の弁護士の言うとおり、「絶対的な証拠価値はない」・・・ひとまずこれが正答です。

 では、逆に質問ですが、目の前の依頼者の障害立証に対し、この弁護士はどのように戦うのでしょうか?

 以前、30ページに及ぶ弁護士の作成した”高次脳機能障害裁判の陳述書”をみたことがあります。弁護士から被害者を丁寧に観察し、意見をまとめたものです。文章の内容は「私の見るところ、被害者は明らかに事故後、異常となった。医学書によると、云々・・・」が主張されています。しかし弁護士の意見と言えど、医師でもない専門外の第三者の観察に過ぎません。頑張って主張しても、患者家族の「日常生活報告」以下の判断材料にしかなりません。このような陳述書では確実に負けます。

 高次脳機能障害で成果を上げている弁護士は、当然ながら充実した医証を収集しています。各種の検査結果とそれに対する医師の診断書、意見書、それらを添付した資料、陳述書を山盛り用意します。

 高次脳機能障害のような繊細な障害の立証は、ある検査結果のみをもって「障害の有無」を判断するものではありません。自覚症状(家族の観察)、それに合致する神経心理学検査の結果、対応する受傷部位が明らかな脳の画像、そして専門医の診断、これらを矛盾なく一致させること、一つの線とすることが肝要です。この作業を記憶、知能、遂行能力等、障害のある部分ごとに丁寧に検証していきます。これが立証作業です。緻密な情報の積み重ねによって、自賠責調査事務所や裁判官のような第三者に障害の有無・程度を納得してもらうのです。

 絶対的な証拠となる近道はありません。したがって先の弁護士に対する回答は「絶対的な証拠など元々ありません。しかし相対的には重要な役割となります。」となります。続けて「では検査結果(武器)も無しに、どうやって主張する(戦う)のですか?」と逆質問になってしまうのです。

 「弁護士を丸腰(医証なし)で戦場(裁判)に行かすわけにはいきません!」

 ・・・これが私の結論です。

 私たちMC(メディカルコーディネーター)の仕事を認知している弁護士事務所は医証という武器の調達に余念がないので、良い戦いを展開しています。  逆に医療立証の重要性に理解が及ばない弁護士の場合は・・・最初は意気揚々と保険会社と交渉に入ります。しかし相手保険会社の顧問弁護士、顧問医が用意する、(障害を否定する)意見書に立ちふさがれて、真っ青になって妥協案の回答を持ち帰ります。そして被害者に「ここで矛を収めた方が得策だ」と説得に入ります。何のために弁護士を入れたのか?これは事実上、負け以下の「戦闘放棄」です。これが交通事故交渉の多数例、実態です。依頼した被害者は浮かばれません。                                            私たちが連携する弁護士はしっかり戦います。今日武器調達に同行した弁護士先生も然りです。                      

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 最近鎖骨の脱臼、亜脱臼の相談が続いています。多くは胸鎖関節ではなく肩鎖関節の脱臼です。

今日の病院同行もGradeⅡの被害者さんです。まずこのGradeとは

 

 

分類

肩鎖関節の脱臼は3段階に分けられます。これをtossy分類とよびます。

Grade1 靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。 Grade2 肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。 Grade3 肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

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 先日の弁護士セミナーにて、S先生の講義から得た事がたくさんありました。研修資料をもとに、いくつかの論点を語っていきたいと思います。

 まず、MTBIと高次脳機能障害の区別についてです。これは以前も取り上げてきたテーマですが、数千件の高次脳機能障害の評価とMTBI患者の診断を行ってきたS医師の解説で、ようやく一定の理解を得ました。

 MTBIは外傷軽度脳損傷の略で、WHOの基準が良く知られています。これをベースに行政側が障害認定をする上で高次脳機能障害と区別しています。    詳しくは 👉 高次脳機能障害の立証 13 <新認定システム> 6    言葉通り、外傷による軽度の脳損傷(と推測される)患者は、現実に多くの症例が報告されています。臨床上の基準であるMTBIは、PTSDや高次脳機能障害の症状を含み、症状の類別はかなり広範囲です。問題はこの診断名が、補償制度や労災、自賠責などの対象外のものとする、行政側の定義と混同することにあります。臨床診断からの「広義のMTBI」と、補償制度の認定基準外と位置づける「狭義のMTBI」、このダブルスタンダードをS先生はご指摘されました。これは後日詳しく解説します。    ・・・S先生は、まずMTBIの症状について説明下さいました。以前、S先生の診断に一度立会ったことがります。患者に対し専門用語を控え、例え話や道具を使い、とてもわかりやすいものでした。    今回の研修では「あしたのジョー」を引用して下さいました。S先生へ敬意を込めて、秋葉なりに追補、まとめました。  

まず「あしたのジョー」を30秒で説明

 1968年連載のボクシング漫画。テレビアニメ放映、アニメ映画化。最近は山下智久さんの実写版も公開されました。

 主人公、矢吹丈という不良少年が南千住 泪橋にふらりと現れます。そこで元ボクサーの丹下段平に見いだされ、ボクシングの指導を受けます。

 その後、少年鑑別所を経てプロボクサーとなり、鑑別所で出会ったボクサー力石 徹とリングで再戦します。しかし試合直後、力石はジョーのパンチがもとで死亡してしまいます。そのショックでスランプに陥るもののカーロス・リベラとの戦いで復活します。

 その後も数々の強敵と戦い、自身もパンチドランカーとなりながら、ついに世界チャンピオン ホセ・メンドーサと対戦します・・・  

強敵カーロス・リベラ戦、そして廃人となったカーロス

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 WPPSI(ウィプシイ)とはWechsler Preschool and Primary Scale of Intelligenceの略です。 

 高次脳機能障害の検査で定番の知能検査、WAIS-Ⅲ(ウェイス)の子供版です。ウェクスラー式知能検査それぞれ年齢別に数種類あります。WPPSI(幼児用 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月 45分)、WISC(児童生徒用 5歳~16歳11ヶ月 60分)、そして成人用がWAIS(成人用 16歳~74歳 60~90分)です。  ウィプシィは幼児向けの精密な知能検査として高い信頼性と安定性を得ています。

動作性下位検査 言語性下位検査 動物の家 続きを読む »

 「肩関節が半分以下しか挙がらなくなった」=10級10号のつもりが、なぜか14級!に・・・分析してみましょう。関節可動域制限の神髄へ接近します。  

段落

本 文

解 説

結 論

自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。  結果は最初に書かれます。

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 待つこと2か月、Cさんのもとに自賠責保険の等級認定表が届きました。ずばり、昨日の解答です。では、実際の文章を見てみましょう。   <結 論>

 自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。   <理 由>

 左肩腱板損傷に伴う左肩関節の機能障害につきましては、提出の画像上、棘上筋に高信号が認められますが、後遺障害診断書に記載されているような高度の可動域制限を生じるものと捉え難く、しかしながら疼痛や治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断いたします。     これを見て、Cさんはひっくり返りました。「ええっ!α先生は10級が獲れるって言ったじゃないですか!なんで14級なんですか!」    Cさんに責められたα先生も面目を潰され、「おかしい!これは自賠責保険の横暴な判断です、異議申し立てしましょう!」と息巻いています。     このようなやり取りをよく目にします。しかし、一方では10級が認められる被害者さんもいるわけで・・・。  

ある被害者Dさん(43才 女性 主婦)のケース

 Dさんは買い物の帰り自転車で走行中、交差点で一時停止無視の自動車に衝突され、転倒、救急車で搬送されました。レントゲンを撮ったところ、鎖骨の遠位端(肩関節と接する部分)が折れていました。担当した医師は「整復するには手術が一番ですが、手術痕が残るでしょう。」と判断しました。しかし、傷を残したくないDさんの希望が強い為、医師はクラビクルバンドで固定し、適時XP(レントゲン)で骨の癒着具合を観察していきました。    その後、主治医は適切な治療とリハビリを続けましたが、Dさんは左腕が半分までしか挙がりません。右肩に比べ、見た目でわかる程、痩せて筋肉が落ちています。Dさんは9カ月リハビリを続けましたが、完全回復を諦めて症状固定することを考えていた矢先、秋葉事務所を紹介されました。    秋葉のアドバイスは・・・「可動域が2分の1になっただけで、簡単に10級は認めてくれませんよ。可動域制限は骨折や靭帯・軟骨損傷の部位・程度、そして骨折後の癒合具合の良し悪しや変形・転位の有無、靭帯損傷の回復具合から判断されます。それらの前提から矛盾のない、納得できる可動域制限なら認めます。    まず全XPを精査します。とくに、受傷直後と症状固定時期が重要ですが、すべての画像提出は必須です。さらに、いくつかの医証を補強します。MRI検査を追加し、肩腱板、肩鎖靭帯の損傷などを解明し、診断名として診断書に記載していただきます。そして筋萎縮の程度も追記、外貌写真も添付しましょう」と続けました。      肝心の関節可動域は屈曲100°、外転80° です。(内転、伸展、内旋、外旋も計測しました)    以上βさんの指示に従い、自賠責の申請を行いました。・・・結果は以下に全文掲載します。   

<結 論>

 自賠法施行令別表第二第10級10号に該当するものと判断します。  

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ある被害者Cさん(49才 男性 会社員)のケース

 Cさんは原付バイクで通勤中、並走の右折車の巻き込みにより、左肩から転倒しました。レントゲンを撮ったところ、幸い骨折等はありませんでしたが、左肩と左膝の打撲でしばらく通院となりました

 リハビリを続けていますが、3か月経っても左肩の痛みが治まらず、左腕が半分位しか挙がりません。主治医に訴えたところ、「肩腱板を痛めているかもしれないねぇ・・・まぁリハビリを続けてみましょう」と困り顔です。

 そしてそのまま6か月目、相手の保険会社も「打撲・捻挫なんだから・・・そろそろ治りませんか?」と治療費の打ち切りを迫ってきました。しかし、相変わらず痛みが残っていて腕は挙がりません。

 Cさんは不安になり、ネットで検索した後遺障害申請専門を謳う行政書士α先生に相談しました。そのα先生は、「肩腱板を痛めているのならMRIを撮って器質的損傷を明らかにすることです」と力説し、先ほどの主治医の協力のもと、MRIを実施しました。

 結果、「T2にて棘上筋に高信号、棘上筋損傷」との所見を得ました。

 そして、肩関節の可動域 屈曲90° 外転85° の測定結果を診断書に記載しました。

 α行政書士は得意満面、「これで腱板損傷が立証できました。関節の可動域が2分の1以下に制限されていますので、〇級〇号が獲れますよ!」と予想しました。    さて皆さんも一緒に考えて下さい。Cさんは何級が取れたのでしょうか?    ヒント→ 肩の後遺障害 2    答えは明日(つづく)   

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 14級9号の文例を分析します。    調査事務所の調査結果について、自賠責保険窓口会社(名)で文章回答がなされますが、大量処理の為、テンプレート(文章のひな型)を少し改造して作成している様子がわかります。  

段落 本文 解説 結 論

自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。 結果は最初に書かれます。

理 由

前 段

頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、 これは主に後遺障害診断書の自覚症状に書かれていることを抜粋しています。また医師の診断内容を抜粋することもあります。

中 段

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では昨日の解答から。Aさんの認定結果の全文を掲載します。

  <結論>

 自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。   <理由>

 頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、提出上の頚部画像上、本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。    しかしながら、治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。    Aさんは14級9号が認められました。赤字の部分は先日の<理由>に続く後段です。画像や診断がはっきりしなくても、「局部に神経症状を残すもの」と推定された結果です。つまり症状を信じてもらえた?ということです。ではもう一つのケースを。  

ある被害者Bさん(40才 男性 会社員)のケース

 この方も同じく停車中、追突を受け、首を痛めました。痛みがひどいのでその日のうちに病院へ。そこで頚椎捻挫、腰椎捻挫の診断を受けました。翌日から職場に出社しています。やはり首の痛み、腰の痛みがひどく、市内の総合病院でXP(レントゲン)を撮っていただきましたが、骨には異常ないそうです。この総合病院へは月に1回通院し、あとは土日も開いている近所の接骨院で治療を進めました。

 ・・・6か月を超過する頃、相手の保険会社は治療費の打切りを執拗に迫ってきました。Aさんに同じく、仕方がないので症状固定とし、腰に比べてよりひどい頚部痛の残存を訴えた後遺障害診断書を医師に記載してもらいました。通院日数は40日を超えた位でした。そして同じように後遺障害等級の申請を行いました。

 待つこと40日、「結果」が文章で届きました。今度は最初から全文を読んでみましょう。   <結論>

自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。   続きを読む »

ある被害者Aさん(38才 女性 事務職)のケース

 OLのAさん、停車中に追突を受け、首を痛めました。痛みがひどいので直後に病院へ。そこで、むち打ち「頚椎捻挫」の診断を受けました。

 数日で仕事に復帰したものの、首の痛みや手先のしびれが治まりません。医師もムチ打ち程度と軽く考えています。しかし念のため神経症状が長引くことを心配し、MRIだけは撮っていただきました。しかし目立った病変、異常は画像に出ませんでした。

 その後も依然として症状は良くなりません。少し症状が楽になるので、理学療法(電気治療)だけは継続しました。仕事で毎日の通院はできませんが、土曜日や仕事帰りに近所の整形外科に通うことができたからです。

 ・・・6か月を超過する頃、相手の保険会社は治療費の打切りを執拗に迫ってきました。さすがにムチ打ちで長期間の治療は気が引けます。仕方がないので症状固定とし、痛みとしびれの残存を訴えた後遺障害診断書を医師に記載してもらい、後遺障害等級の申請を行いました。    待つこと40日、「結果」と「理由」が文章で届きました。理由の上段落を読んでみましょう。   <理由>

 頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、提出上の頚部画像上、本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。・・・・    ここで問題です。さて、この方、14級9号の認定はされたのでしょうか やはり非該当?   (答えは明日) ⇒ 後遺障害認定結果の文例 2  

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平成23年4月の改定事項において高次脳機能障害の「疑わしい案件」について事前照会をかける、といった件がありました。これについて照会方法と用紙が判明しましたので報告します。  (高次脳機能障害を扱う法律職者必見!)

 <まず改定内容のおさらい>

 後進障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っていない)場合・・・

 高次脳機能障害(または脳の器質的損傷)の診断が行われていないとしても、見落とされいる可能性が高いため、慎重に調査を行う。具体的には、原則として被害者本人および家族に対して、脳外傷による高次脳機能障害の症状が残存しているか否かの確認を行い、その結果、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合には、高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。

 つまり「高次脳機能障害をよくわかっていない医師にあたってしまった場合でも、一応、高次脳機能障害を疑って調査をする」、ということです。今までの冷たい門前払いからの進歩ですが、すべてにおいて提出書類がものをいいます。つまり後遺障害の申請が書類審査である以上、書類の完備という基本は変わっていません。今までは門前払い案件に対し、異議申立てをする際にこれらの書類を追加提出していました。たとえばカルテや看護記録の開示を行い、家族の申述書(受傷時~現在の症状)を作成、添付する等です。したがって最初から調査事務所が疑わしき案件に対し、家族と医師に「症状の照会」をかけてくれるのなら一定の救済が果たせます。本来、全件そうすべきと常々思っていました。

 では照会はどのように行われるか?

 医師、本人(ご家族)に対して、以下の用紙を送り回答を求めます。これは高次脳機能障害の診断書に添付する重要な副診断書とも言うべき書類です。高次脳機能障害にたずさわる者にとってお馴染みのものです。新しく照会用紙を作ったわけではなかったようです。(少し肩すかし)

医師に対して → 「神経系統の障害に関する医学的所見」    

http://www.jiko110.com/topics/syoshiki/koujinou/2-02.pdf

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【病態】    肘関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と2本の前腕骨(ぜんわんこつ)(橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)が組み合った関節で、上腕骨内側の滑車(かっしゃ)という部分と、尺骨の肘頭とカギ型の部分とが強くからみ合って、曲げ伸ばしの運動が行われています。この部分がはずれることを肘関節脱臼と呼びます。多くの場合、転倒した時に手をついて起こります。  尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼して(後方脱臼)、肘関節の屈伸ができなくなります。外側の橈骨頭だけがはずれる場合は、単に橈骨頭脱臼になります。    

※ 骨折と脱臼の合併

 肘の脱臼骨折は橈骨頭骨折を合併した肘関節脱臼と、腕尺関節の不安定性を生じる近位橈骨、尺骨骨折に大別されます。これらを含む骨折のパターンは以下の4つに分類できます。

1、橈骨頭骨折+肘関節後方脱臼

2、橈骨頭骨折+鉤状突起骨折+肘関節後方脱臼、いわゆるTerrible triad

3、前方への肘頭脱臼骨折、いわゆる経肘頭脱臼骨折

4、後方への肘関節脱臼骨折、Monteggia 骨折の最も近位のタイプ  

【治療】

 徒手整復が基本です。肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引すると、通常は簡単に整復されます。整復後、肘関節を安定度に応じて1~3週間程度ギプス固定をします。その後固定を解除し関節の自動運動を行います。  整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯(じんたい)損傷が疑われます。この場合、動揺性を残す後遺障害となる可能性がありますので、靭帯の損傷具合によって、手術による靭帯縫合も検討します。

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■ 病態

 上腕骨遠位端骨折は肘周辺骨折の中で最も頻度の高いもので、転落や転倒により手をついた場合生じます。一般に診断は容易ですが、適切な治療を行わないと後遺障害を残すことがあります。  肘過伸展位(肘関節が反対側に曲がり過ぎて…)で手をつくと、骨皮質が薄く、また骨の断面積も小さい上腕骨の顆上部にストレスが集中し骨折を生じます。通常末梢骨片は伸展位をとり、程度が強い場合には後内側へ転位し、回旋を伴います。    顆上骨折、顆部骨折が多く、顆部は外顆骨折、内顆骨折に分かれます。 

■ 治療

 転位が少ない場合は、整復操作を行わずに4週間前後ギプスまたはシーネで固定します。中等度の転位例では、徒手整復操作を行ってギプス固定、徒手整復後経皮的ピンニング、牽引による治療のいずれかを行います。徒手あるいは牽引により整復できない症例では観血的手術となります。

 骨折部で内反・内旋・(伸展)の転位が残存しやすく、内反肘を残すことがあること、固定によって肘の動きが悪くなること、これらを防ぐためできるだけ早期から関節を動かす練習を開始します。そのため短期間ですがリハビリテーションが必要となります。

 最近の動向では中等度から高度の転位例に対して、早期に全身麻酔下に徒手整復操作を行い、整復位が得られたら経皮的ピンニング、得られなければ観血整復を行うという傾向があります。これは正確な整復位を目指すという意図の他、治療期間(入院期間)を短縮するという意味があります。  

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