尺骨鉤状突起骨折(しゃくこつこうじょうとっきこっせつ)

(1)病態

 上腕骨遠位端部を尺骨が受け入れる形状で、肘関節は構成されています。交通事故では、転倒した時に手をついて、尺骨の鉤状突起骨折を発症することが多いのです。尺骨鉤状突起骨折は、主として肘の脱臼に合併、若しくは肘関節を脱臼するほどの外力を受けた際に上腕骨の関節面=上腕骨滑車と尺骨の鉤状突起が衝突して骨折したものです。   Grade Ⅰ  鉤状突起先端部の剥離骨折   Grade Ⅱ 25%以上50%以下、骨片に関節包と上腕筋の一部が剥がれたもの   Grade Ⅲ  ...

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 肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)   (1)病態

 転倒の際、肘を路面に強打した時に頻発します。痛みや腫れが生じ、肘の可動域制限と異常可動がみられ、単純XP撮影で骨折が認められます。

   肘への衝撃により骨折が生じますが、肘頭骨折とは、橈骨ではなく、尺骨の近位端部の骨折です。また、肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により転位が生じます。

   (2)治療    骨折した肘頭の骨の欠片が多数のときは、AOプレートを用いて固定されています。転位の少ないものは肘関節を90°曲げた状態で4週間程度のギプス固定が行われ、転位の大きなもの、粉砕骨折では、手術が適用になります。

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 肘関節脱臼 (ちゅうかんせつだっきゅう)

  (1)病態

 外傷性の脱臼では肩関節に次いで発症します。交通事故では、自転車やバイクを運転中、手をつくように転倒した際に発症しています。

 大部分は肘の後ろに抜ける後方脱臼です。後方脱臼では尺骨が上腕骨の後方に脱臼し、強い痛み、肘の曲げ伸ばしができなくなります。XPでチェックできるのですが、外見からでも尺骨が後方に飛び出していることが確認できます。

 前方脱臼は肘を曲げた状態で肘をぶつけたときなどに発症することが多く、上腕骨の先端が飛び出し、肘頭の骨折を合併することがほとんどです。脱臼に骨折を合併するときは、動揺関節や可動域制限などの後遺障害を残します。

  (2)治療

 治療は、全身麻酔下に徒手整復、肘関節を90°に曲げた状態で3週間程度のギプス固定がなされ、このレベルでは、後遺障害を残すことなく改善が得られます。

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 テニス肘とは通称で、正確な診断名は、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)か、上腕骨内側上顆炎 (じょうわんこつないそくじょうかえん)のどちらかか、両方です。

  (1)病態

 本来のテニス肘には、バックハンドストロークで肘の外側を傷める外側上顆炎と、フォアハンドストロークで肘の内側を傷める内側上顆炎の2種類があります。いずれも、ボールがラケットに当たる衝撃が、手首を動かす筋肉の肘付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷をきたし、炎症を発生するものです。

 前者では手首を背屈する筋肉がついている上腕骨外側上顆、肘の外側のでっぱりに、後者では手首を掌屈する筋肉の付着部、上腕骨内側上顆に発生するため、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともいわれます。

    テニス以外でも、包丁を握る調理師や手首を酷使する仕事で発症します。長時間のPC操作の繰り返しによっても、テニス肘は発症します。手首と肘の力を繰り返し酷使することで、筋や腱の変性や骨膜の炎症が引き起こされるのです。当然ながら、変性は、加齢によっても起こります。

 症状は、手首を曲げる、回内・外の動作で、肘に痛みが走ります。そして、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すなどが、痛みでできなくなります。抵抗を加えた状態で手首を背屈させるトムセンテスト、肘と手指を伸ばし、中指を押さえる中指伸展テスト、肘を伸ばし、椅子を持ち上げるチェアーテストといった検査で、上腕骨外側・内側上顆部に痛みが誘発されます。炎症所見は、MRI、エコー検査で確認することができます。

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肘から腕、肘関節と手関節、橈骨と尺骨の仕組みを理解しましょう。

(1)肘関節・手関節の仕組み    肘部では、上腕骨の遠位端部が尺骨に受け止められるように肘関節を形成しており、橈骨は、イメージとして尺骨に寄り添っているだけです。ところが、手部となると、橈骨の遠位端部が、舟状骨、月状骨、三角骨と手関節を形成しており、尺骨は、それに寄り添っているだけなのです。

 肘関節では橈骨が、手関節では尺骨が、かなり不安定な構造となっています。肘は、肩関節で方向づけられた手が、人体周辺のあらゆる空間で機能できるような働き、つまり、肘関節は、上肢の長さを調節することで、手を最適に配置する役割を果たしているのです。前腕部には、橈骨と尺骨という長管骨が2本あり、手のひらを上に向けた状態では、前腕の親指側(外側)に橈骨、小指側(内側)に尺骨が位置しています。

 手のひらの回内・回外運動は、肘関節特有のものです。肘を曲げ、手のひらを上に向けた状態から下に向ける動作を回内、反対の動作を回外といいます。回内では、橈骨と尺骨が交差して×印を形成します。逆に回外で、手のひらを上に向けると橈骨と尺骨は平行に並びます。

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(1)病態

 小児の上腕骨顆上骨折で、重大かつ深刻な合併症として発生しています。骨折に伴う腫脹により、動脈の血流障害を生じ、前腕屈筋や正中神経・尺骨神経麻痺などをきたす病態で、見逃すと、筋肉の変性や神経麻痺が残り、大きな後遺障害を残します。初期症状として有名な5つのPを注意深く観察しなければなりません。   ① Pain(疼痛)

② Pallor(蒼白)

③ Paresthesia(知覚障害)

④ Paralysis(運動麻痺)

⑤ Pulselessness(脈拍消失)    小児に多く発症します。上腕骨顆上骨折の手術後、お子さんが骨折部のひどい痛みを訴え、手指が蒼白で、手首で脈がとれないときは、自宅に戻っていても、治療先に急がなければなりません。元の治療先が頼りなければ、近隣の医大系の総合病院に駆け込むのです。動脈閉鎖後、6~8時間でフォルクマン拘縮が生じるので、この時間内に対処しないと、取り返しのつかないことになります。    (2)治療

 治療先は、骨折の整復やギプスで圧迫などの阻血の要因を除去します。これでも、改善が得られないときは、緊急的に筋膜切開を行い、内圧を減少させます。

 積極的な治療は早いに越したことはありません。「様子を見ましょう」と手をこまねいていると、拘縮は治らなくなります。町の整形外科では、この症例に対処できません。一早く専門医を受診しなければなりません。

  (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 上腕骨遠位端骨折 (じょうわんこつえんいたんこっせつ)    上腕骨の遠位端部は、前腕の尺骨と橈骨とで肘関節を形成しています。    より細かく診断名をつけると、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折と呼ばれることもあります。     (1)病態と治療    遠位端骨折は、骨折部位によって診断名がより細かく付けられます。主要2つを説明します。     続きを読む »

 上腕骨骨幹部骨折 (じょうわんこつこつかんぶこっせつ)    上腕部、長管骨の中央部付近の骨折を骨幹部骨折といいます。簡単に言いますと、二の腕の骨折です。  

(1)病態

 交通事故では、バイクの転倒で手や肘をついたとき、転落などで直接に上腕の中央部に外力が加わって発生しています。このような直達外力で骨折したときは、横骨折が多く、外力が大きいと粉砕骨折になります。手をついて倒れたときは、螺旋骨折や斜骨折となります。肩や肘関節に遠く、一般的に関節の機能障害を伴わないことが大半ですが、上腕骨骨幹部骨折では、橈骨神経麻痺を合併することが高頻度であり、見落とされやすい障害と言えます。

 橈骨神経は上腕骨骨幹部を螺旋状に回っているので、骨片により圧迫を受けて、麻痺が発生しやすく、骨折部にはれ、痛み、皮下出血、変形、圧痛、異常な動きが現れます。骨折部の上下の筋肉の力で骨片はずれて短縮します。

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 上腕骨近位端骨折 (じょうわんこつきんいたんこっせつ)

(1)病態

 上腕とは、肩関節からぶら下がる二の腕のことで、上腕骨近位端とは、肩関節近くの部位です。上腕骨近位端骨折は、骨折の部位と骨片の数で、重傷度や予後、治療法が決まります。下記イラストは、骨折の部位と骨片の数による分類を示しています。臨床上、この骨折は、骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4つに区分されています。   続きを読む »

(3)後遺障害のポイント   Ⅰ. 外傷後の変形性肩関節症は、以下①~③による二次的な診断名になることが多数です。   ① 外傷後、肩関節面の整復が不十分で変形治癒となったもの   ② 衝撃により、肩軟骨損傷をきたしたもの   ③ 大きな腱板断裂が放置されたもの    これらを原因として、変形性肩関節症に発展しています。①~③が画像上明らかで、医師の診断が残っているものは良いとして、数年後になって変形を訴えても、画像上、不明瞭なケースが多いものです。したがって、変形性肩関節症から直接の等級認定は少なく、中々に立証が難しい症例と思っています。   Ⅰ.

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(1)病態

 XP上、正常な肩関節には軟骨が存在するための隙間がありますが、変形性肩関節症に至ると、隙間が消失し、骨と骨がぶつかって白く変化し、周囲に骨棘という棘状のでっぱりが出現します。肩関節を形成する上腕骨と肩甲骨の表面は軟骨で覆われ、クッションの役割を果たしています。この軟骨が、すり減ってくると、肩を動かすことで関節に負荷がかかり、炎症や骨変形をきたします。外傷後の二次的障害ですが、これを、変形性肩関節症と呼んでいます。

(左)正常   (右)変形

   交通事故における変形性肩関節症では、3つの原因が想定されます。   ① 外傷後の関節面の不適合

 関節内骨折であって、整復が不十分で元の位置に戻っておらず、ズレを残しての症状固定では、将来的に関節面の不適合をきたし、一部の関節軟骨面に圧力がかかることになります。これを原因として、関節軟骨損傷に発展すると、変形性関節症となるのです。   ② 外傷による軟骨損傷

 交通事故による転落や正面衝突など、非常に大きな外力を肩関節面に受けると、関節軟骨を損傷することが予想されます。軟骨細胞を壊すのに必要な圧力は、骨折を起こすのに必要な力よりもずっと少ないと考えられているのですが、骨折手前で、MRIのみで確認できる骨挫傷でも、複数例の軟骨損傷があります。関節軟骨の細胞=硝子軟骨は、血流に乏しく、損傷を受けると、修復、再生されることはありません。肩関節の脱臼では、変形性肩関節症の発症率が有意に高くなると報告されています。   ③ 大きな腱板断裂が放置されると、腱板による上腕骨頭の抑えが効かなくなり、上腕骨頭が上に転位することで、肩を動かすと上腕骨頭は肩峰と衝突し、擦れ合うことになります。この繰り返しにより、肩関節に変形が進行していくことがあります。

 変形性肩関節症の症状は、肩関節の痛みや可動域制限、関節の腫脹です。XPでは、上腕骨頭や肩甲骨関節窩の変形、関節裂隙の狭小化が認められます。肩を動かしたときの痛み、可動域制限で服の着替え、洗濯物干しなど、高いところに手を挙げる動作が困難となります。関節軟骨がすり減り、肩を動かすとクリック音がするときもあります。   続きを読む »

(1)病態

 肩関節周囲炎、いわゆる五十肩は、50代を中心とした中年以降に、肩関節周囲組織の年齢性変化を基盤として明らかな原因なしに発症するもので、肩関節の痛みと運動障害(こわばりなど)を認める症候群と定義されています。肩関節の動きをよくする袋=肩峰下滑液包や関節を包む袋=関節包が癒着すると、より肩関節の動きが悪くなります。この状態を凍結肩と呼びます。

 肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨で支えられており、肩を大きく動かす必要から、肩甲骨関節窩に上腕骨頭が浅くはまった不安定な構造となっています。構造的に不安定なところを関節包や発達した腱板などで強度を高めているのですが、肩の酷使などによってこれらの部分に炎症や損傷が起きて、痛み、可動域の制限が起こると考えられています。    (2)治療

 一般的には、消炎鎮痛処置だけ、あとは保存療法です。また、関節拘縮が進まないよう、徒手で可動範囲を広げます。具体的には、薬物療法・運動療法・理学療法です。薬物療法では消炎鎮痛剤やテープ状の外用薬の処方です。痛みが強い場合には、ステロイド剤と局所麻酔剤を混ぜた「高分子ヒアルロン酸ナトリウム」などの注射が施行されます。これらによって改善しない場合は、手術が検討されることもありますが、多くは痛みが治まるまで待つことになります。   (3)後遺障害のポイント

 いわゆる五十肩は、一般的に加齢とともに訪れるものですから、これをもって後遺障害が認定されることは困難です。

 しかしながら、「交通事故以前には肩の痛みを感じることはなかった」ということであれば、スポーツ外来、肩関節外来を設置している整形外科を受診されることをお勧めします。MRIやエコー検査等を実施し、専門医により肩の器質的損傷、つまり、腱板損傷、関節唇損傷や肩関節の後方脱臼等と診断されれば、これはもはや加齢による五十肩ではなく、交通事故に基づく障害と言えます。

 適切な検査と診察が行われたにもかかわらず、肩関節の痛みや運動障害の原因が不明のときは、後遺障害認定は難しいと言わざるを得ません。それでも、事故前に何ら症状なく、事故で肩関節に相当のダメージがあり、それを契機に痛みを発症し、その後、症状の一貫性があれば、14級9号の余地を残します。    その実例 👉 14級9号:外傷性肩関節周囲炎(30代男性・神奈川県)    治療先発行の診断書に、肩関節周囲炎と記載されていれば、「あなたが訴える肩の痛みは、いわゆる五十肩です」との烙印が押されたことになります。結論として、ケガではなく病気(老化現象)なので、通常は後遺障害から外れます。    次回 ⇒ 変形性肩関節症    

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 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)    読んで字のごとく、繰り返す脱臼です。脱臼ぐせとも言います、体操選手などアスリートに多く、力士では千代の富士を苦しめた症例です。   (1)病態

 肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっている頼りのないもので、関節部には骨の連結がなく、大きな可動域を有しているます。そのため、脱臼しやすい構造となっています。10・20代の若年者の外傷性肩関節脱臼では、とくに反復性を予想しておかなければなりません。つまり、若年者では初回脱臼後、これを繰り返す、つまり反復性に移行する確率が高いことが注目されています。体操選手も一度脱臼すると、脱臼ぐせが残る方がいるそうです。    縄抜けの術? 👉 肩の後遺障害 4 肩関節の脱臼    肩関節は、肩甲骨面に吸盤の役割をしている2つの関節唇という軟骨に、靭帯と関節の袋である関節包が付着し、これが上腕骨頭を覆うことによって安定化しています。脱臼時に関節唇が肩甲骨面から剝離し、これが治癒しないと、脱臼する道ができてしまっているため、再び脱臼するような力が加わると脱臼を繰り返すことになるのです。極端な例では、背伸びの運動でも肩関節が外れてしまうことがあります。

(2)治療

 脱臼の整復操作後の話になりますが、整復されても脱臼を繰り返してしまう場合には手術適用です。状態によって、直視下手術か鏡視下手術の選択になります。    続きを読む »

 肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっているだけの頼りのないものです。関節部には骨の連結がなく、大きな可動域を有しているのですが、そのことが原因で脱臼しやすい構造となっています。   (1)病態

 バイクや自転車を運転中の衝突等で、転倒した際に体を支えようとした腕が、横後ろや上方に無理に動かされたときに、上腕骨頭が不安定となり、関節面を滑って脱臼となります。

 また、転倒した際に、肩の外側を強く打ったときや腕を横後ろに持っていかれたときなどにも生じます。肩関節脱臼の90%以上は、上腕骨頭が身体の前面に移動する前方脱臼です。

 前方脱臼以外にも、転倒した際に、体の前方に腕を突っ張ったとき、肩の前方を強く打撲したときに生じる後方脱臼、上腕を横方向から上に無理に動かされたときに生じる下方脱臼があります。   (2)治療

 関節を戻すのは力業です。医師数名がかりで関節を戻します。激痛を伴うので、あらかじめ麻酔を打つことになります。関節を元に戻した後は、外旋位固定が3週間続けられるのが一般的です。

 保存療法では、腕を固定して剥離した関節唇を圧着させて自然回復を待ちます。固定法にもいくつか種類があり、患者さんの状態や医師の治療方針を考慮して適切な方法を選んでいきます。肩関節脱臼を起こさないようにするためには、リハビリテーションによるインナーマッスルの強化も有効です   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 肩甲骨骨折(けんこうこつこっせつ)

 肩甲骨は、背中側の肩の部分についており、骨の中でも比較的薄い板状骨です。他の骨とは、関節を形成しておらず、他のどの骨よりも自由に動かすことのできる骨です。外力に弱い構造ですが、多くの筋肉群に囲まれて補強されています。   (1)病態

 以下、3つの兆候が揃うと、ほぼ骨折しています。

① 肩の後方部分に、経験したことのない激痛が走る

② 肩の後方部分が青黒く変色している

③ 肩・肘を全く動かすことができない    交通事故外傷では、交通事故では、地面に肩から叩きつけられる、肩甲骨に直接的な打撃を受けるなどして、骨折します。多くは、肩甲骨体部の横骨折か、縦骨折ですが、直接に打撃を受けたときは、鎖骨骨折、肋骨骨折、肩鎖靱帯の脱臼骨折を合併することが多いです。その他、肩峰や烏口突起部の骨折も経験しています。     肩峰骨折の例 👉 12級5号:肩峰骨折・肩鎖関節脱臼(10代男性・千葉県)     ひびが入った(亀裂骨折)程度では、町医者のレントゲンで見落とす可能性があります。レントゲンの正面像では、肋骨の裏側に隠れて肩甲骨が写りません。上記の①~③があれば、迷うことなく、総合病院でCT検査(↓3DCT)を実施して下さい

  (2)治療

 肩甲骨骨折で手術をすることは少なく、三角巾、ストッキネット、装具等で3週間程度肩を固定するなどの保存的治療が選択されています。その後は、振り子運動などの軽いリハビリ、温熱療法=ホットパックの理学療法が実施され、肩甲骨単独の骨折であれば、後遺障害を残すこともなく、多目に見ても、3ヶ月程度の治療期間です。   続きを読む »

 腱板疎部損傷 (けんばんそぶそんしょう)

(1)病態

 腱板疎部=ローテーター・インターバルは、棘上筋と肩甲下筋の間に存在する隙間であり、関節包が存在していますが、腱板が自由に収縮・伸展・回転するための遊びの部分であり、棘上筋と肩甲下筋のつなぎ目に位置していて、転倒時の打撲などで、捻挫や軟部組織の損傷を受けやすい部位です。    腱板疎部損傷の症状は、若年層の不安定型と、35歳以上の拘縮型の2種類です。   ① 不安定型は若年層、平均23歳に多発し、主たる症状は損傷部である腱板疎部の著明な圧痛で、外転、外旋位で運動痛が増強します。その他には、肩のだるさや、肩から上肢にかけてのしびれ感など肩の不安定性に起因する訴えが多く、 他覚的には肩関節の下方への緩みが認められます。XPでは、挙上位で、肩関節のスベリが見られます。   ② 拘縮型は、年齢層が比較的高く、平均35歳以上であり、肩関節の拘縮=挙上、外旋の可動域制限と運動での疼痛が主な症状となっています。    腱板疎部の損傷は、腱板周囲の組織つまり肩甲下筋や棘上筋の不均衡や鳥口上腕靭帯を含めた関節包や関節上靭帯や滑液包炎あるいは上腕長頭筋などに影響を与え、腱板の血行障害、加齢による変化、関節包内圧の変化などが加わると、不安定肩や五十肩に代表される凍結肩に発展します。   (2)治療 と(3)後遺障害のポイント    おおむね、前回の「腱板損傷」と同じですので、戻ってご参照下さい。    👉 ⑤ 肩腱板損傷    肩甲骨の動きを改善する、後方の関節包のストレッチを行い、前後の緩みのバランスをとることで症状は改善するのですが、保存的治療を十分に行っても肩関節機能の改善の得られないときは、腱板疎部縫縮術が行われ、改善を得ます。しかし、拘縮型で3ヶ月以上、放置され続けたものでは、手術で改善が得られることは期待できません。漫然と様子をみるのではなく、早期に専門医の診断を受ける事が大事です。    次回 ⇒ 続きを読む »

 肩腱板損傷(かたけんばんそんしょう)    まずは、肩腱板周辺の構造から。肩関節は骨同士が軟骨で接する関節面が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨頭の大部分を覆うようにカバーしています。そのため、肩は自由度が高く、自由に動かせることができるのです。腕を持ち上げるバンザイでは、腱板は肩峰、肩甲骨の最外側や靱帯からなるアーチの下に潜り込む仕組みとなっています。アーチと腱板の間には、肩峰下滑液包=SABがあり、クッションの役目を果たしています。   (1)病態

 肩腱板は、肩関節のすぐ外側を囲む、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成されています。このうち、交通事故による傷害ということでは、圧倒的に棘上筋腱の損傷もしくは断裂となっています。これは、事故にあい、転倒した際に、手をついた衝撃で肩を捻ることが多いからです。

 棘上筋腱は上腕骨頭部に付着しているのですが、付着部の周辺がウィークポイントとなっており、損傷および断裂が非常によく発生する部位となっています。

左が部分断裂、右が完全断裂の図です

 腱板の断裂では、激烈な痛みと腫れを生じます。特に、肩を他人に動かされたときに、特有な痛みが生じます。部分断裂の場合には、腕を伸ばし、気をつけの姿勢で、ゆっくり横に腕を上げていくと肩より30°程度上げたところで痛みが消失します。完全断裂のときは、自分で腕を上げることはできず、他人の力を借りても、疼痛のため肩の高さ以上は上がりません。医師は、肩が挙上できるかどうか、肩関節に拘縮があるかどうか、肩を挙上したときに肩峰下に軋轢音があるかどうかをチェックし、棘下筋萎縮や軋轢音があれば腱板断裂と診断しています。断裂が存在する場合には、XPでは、肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭くなり、MRIでは骨頭の上方に位置する腱板部に白く映る高信号域が認められます。

 また、断裂がある場合に、肩関節造影を行うと、肩関節から断裂による造影剤の漏れが認められます。エコーやMRIにおいても断裂部を確認することができます。なお、腱板は肩峰と上腕骨頭の間に存在し、常に圧迫を受けているので、年齢と共に変性する部分もでてきます。    肩腱板損傷にまつわる年齢変性との関係 👉 肩腱板損傷の認定、過去記事から 発端編    続きを読む »

 胸鎖関節脱臼(きょうさかんせつだっきゅう)

  (1)病態

 胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、「肩鎖関節脱臼」において説明した肩鎖関節の反対に位置しています。胸鎖関節脱臼の発生原因としては、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が第1肋骨を支点として前方に脱臼するケースが最も多いと言われています。肩鎖関節脱臼に比べて非常に発生頻度の低い脱臼です。   (2)治療

 完全脱臼で肩甲骨の骨折など重度の場合は手術対応で、ワイアーなどで固定します。骨がズレてしまう転位がなければ、そのまま保存療法になります。   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)

 鎖骨骨折に並び、秋葉事務所では認定例が豊富です。別途、実績ページをご覧下さい。     (1)病態    肩鎖関節とは鎖骨と肩甲骨の間にある関節のことです。転倒の際に手をついた時や、バイクで正面から衝突(ハンドルを握ったままで前方から強い衝撃を受けた)時に好発します。鎖骨が折れなかった場合に起きている印象です。肩鎖関節の脱臼によって、鎖骨と肩甲骨をつなぐ肩鎖靭帯が伸びてしまうことになり、鎖骨の遠位(肩側)が上に出っ張ってしまいます。これをピアノキーサイン(※)と呼びます。視認すればわかることですが、症例に慣れていないのか、町の整形外科では見逃されることが多々あります。    見逃された例 👉 12級5号:肩鎖関節脱臼(60代男性・神奈川県)   ※ 突出した部分を指で押すと浮き沈みするので「ピアノキーサイン」といいます。

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