心挫傷、心筋挫傷(しんざしょう、しんきんざしょう)

 

(1)病態

 心挫傷は、前胸部表面部に対する強い衝撃で発症しています。野球のボール、ホッケーのパックの直撃を胸に受ける、ベンチプレス中にバーを自分の胸の上に落下させた、交通事故では、肋骨骨折など、心臓に近い部位に、強度の打撃が加わったときに、前胸部に受けた強い衝撃が心筋に伝道することによって起こると想定されています。

 交通事故110番では、5年前に心筋挫傷を経験しています。45歳男性が軽四輪のワンボックスを運転中、センターラインオーバーの自動車の衝突を受け、左3、4、5の多発肋骨骨折、胸骨骨折の被害者でした。

 前胸部表面部に対する強い衝撃により、心臓が強く圧迫された結果、心筋組織の断裂や壊死、出血、浮腫などが生じます。多くは、早期の治療対応で、良好な改善が得られていますが、まれに心タンポナーデや心原性ショックなどの重い心機能障害を伴って死に至ることもあります。   (2)症状

 胸部外傷後の胸痛や胸内苦悶が主な症状です。重症例では、心タンポナーデや心原性ショックを合併し、頻脈、不整脈、血圧低下、頻呼吸、四肢冷汗および冷感、頚静脈怒張=頚静脈が膨れる、意識障害などが現れます。   ※ 胸内苦悶  心筋梗塞、狭心症等に多く現れる症状で、苦悶とは、疼痛に近く、絞扼感、圧迫感、圧搾感、押し潰す感じ、窒息感、万力で締められる感じ、重量物を載せられた感じ、伸展感、突き刺される感じ、焼けるような感じなどの性質をもち、呼吸が出来ない、眩暈がする、吐気がする、胃部の重い感じ膨満感などを伴います。   ※ 心原性ショック  急激な心機能の低下により、血圧が低下し、十分な酸素供給ができなくなり、全身の臓器の機能が低下し、放置すると死に至る状態で、重症な急性左心不全状態です。   (3)診断と治療

 症状と、心電図検査、血液検査、心臓超音波検査、心臓核医学検査、心臓カテーテル検査などにより確定診断が行われています。

 心筋挫傷の治療は、急性心筋梗塞に準じます。心電図検査で異常が認められればベッド上で安静を保ち、酸素吸入を行って心電図の変化を厳重に監視し、不整脈に対しては抗不整脈薬を投与します。

 心原性ショックに対しては、昇圧薬や強心薬の投与など、適切な薬物療法を行います。 また心タンポナーデが認められれば心嚢穿刺=針をさすや心嚢ドレナージ=管を挿入して排液するが行われ、重いショック状態であれば、機械を用いた補助循環を行います。

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  (1)病態

 心臓は、大部分が心筋という筋肉でできている臓器です。心臓は、心筋が収縮、拡張を繰り返すことにより、1分間に約5リットルもの血液を全身に送り出すポンプの役割を果たしているのです。当然ながら、心筋も、絶えず酸素が供給されないと、十分な働きをすることができません。

 心筋は、その他の筋肉と比較して約3倍の酸素を必要としており、冠動脈により、優先的に新鮮な動脈血が供給されるようになっています。冠動脈は、大動脈の根元より左右1本ずつ分岐し、心筋の表面を冠のように覆っています。

 頻繁に発症するのではありませんが、交通事故や高所からの転落で、胸部に強い衝撃を受けたとき、冠動脈が裂傷することがあります。冠動脈の裂傷により、心筋に十分な血液を送れなくなると胸部痛が出現、この状態を狭心症といい、さらに、心筋に全く血流を送れなくなると、心筋は働けなくなり、壊死します。心筋が壊死した状態を心筋梗塞と言います。   (2)症状

 息もできないほどの胸部痛、息苦しい、不整脈、尿の量が減るなど、   (3)治療

 冠動脈の裂傷では、心タンポナーデなど重篤な事態に至ることも予想されますが、縫合、経皮的冠動脈形成術やバイパス手術が実施されとときは、冠動脈そのものに障害が残存することはありません。

 ただし、冠動脈の狭窄または末梢の閉塞が残存し、心筋虚血をきたし、胸痛が生ずることが想定されるときは、狭心症に準じて、障害が審査されています。

 また、冠動脈損傷の時点で、心筋への血流が途絶え、心電図、血液生化学検査または画像所見により心筋壊死が認められるときは、心筋梗塞に準じて、障害等級が審査されています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 心膜損傷、心膜炎(しんまくそんしょう、しんまくえん)

(1)病態

 心膜は、心臓を包み込んでいる二重の膜で、内側を心内膜、外側を心外膜と言います。心内膜と心外膜の間隙は、心膜腔と呼ばれ、15ml程度の心膜液で満たされています。心膜には、以下の3つの役割があります。

 ① 心臓の過剰な動きを制御する、

 ② 心臓の過度の拡張を防止する、

 ③ 肺からの炎症の波及を防止する、

 さらに心膜液は、二重の心膜間での摩擦を軽減しているのです。心膜損傷は、交通事故や高所からの転落により、相当に大きな外力や剪断力が胸郭に働いたときに発症すると想定されています。

 心膜損傷では、心膜の炎症であり、しばしば心膜液の貯留を伴います。外傷を原因として、心膜に炎症が起きると、心膜炎と呼ばれる状態になります。   (2)症状

 症状としては、胸部痛や発熱、胸部圧迫感を訴えます。心膜炎が起こると心膜液が増えて心臓を周りから圧迫し、心臓の拡張を妨げることがあり、短期間に大量の心膜液が貯留すると、心タンポナーデ、重篤な症状に至ります。   (3)治療

 診断は、症状、心膜摩擦音、心電図変化およびXPまたは心エコーによる心膜液貯留を検査します。

 治療は一般的には、鎮痛薬、抗炎症薬の投与、改善が得られないときは、穿刺により、貯留し、心臓を圧迫している心膜液を抜くドレナージ術が行われています。   ※ 心タンポナーデ  心膜腔の限られた空間に、大量に心膜液が貯留すると、心嚢内の圧が上昇し、心臓の拡張が障害され、全身に送る血液量が少なくなる状態のことをいいます。症状としては、呼吸困難、胸痛、チアノーゼなどで、放置すると死に至ります。心破裂や大動脈解離によって、血液が心膜腔に流入、心タンポナーデを発症することもあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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(5)医学論文から実例    ネット上の論文では、開胸・回復術と腹腔鏡術の2例が紹介されています。   ① 73歳、女性、バイクを運転、右折の際、直進の乗用車と衝突、左半身を強打、7m飛ばされる、   ⇒救急車にて当院に搬送⇒XP、CTで、外傷性横隔膜破裂、骨盤骨折、大腿骨々幹部骨折、多発肋骨々折、肩甲骨々折、腓骨々折、足関節骨折と診断

⇒出血性ショックを伴い、人工呼吸器管理下に迅速輸血を行い、緊急血管造影検査を施行

⇒両側内腸骨動脈の数箇所の側枝や両側の第5腰動脈に造影剤の漏出を認め、スポンゼル細片を注入し塞栓止血術を施行

⇒左外傷性横隔膜破裂に対し全身麻酔下、開胸・開腹で緊急手術を施行⇒胃底部前壁と大網組織の一部が胸腔内へ脱出し、心膜底部が一部損傷し、横隔膜の腱中心から食道裂孔に至る約10cmの裂創と無気肺を認める、

⇒滑脱臓器を用手的に腹腔内へ戻し、横隔膜損傷部は縫合閉鎖し、心膜損傷部も縫合閉鎖⇒術後4日で人工呼吸器より離脱、術後9日目に一般病棟に移る、

⇒整形外科で、16日目に左大腿骨々幹部骨折、左足関節、左鎖骨々折に対し、観血的骨接合術を施行、

⇒骨盤骨折、肩甲骨々折に対しては保存療法を行い経過良好、⇒受傷から72日目に退院となった。    ② 70歳、女性、シートベルト着用下での正面衝突事故、   ⇒ドクターヘリで救急搬送、

⇒前胸部痛、軽度の呼吸困難を認め、CTで左外傷性横隔膜破裂と診断し緊急腹腔鏡下手術を施行、

⇒腹腔鏡下観察において他臓器損傷はなく、横隔膜腱性部が横方向に5cm裂け、同部位より胃・大網が左胸腔内に脱出、

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外傷性横隔膜破裂(がいしょうせい おうかくまく はれつ)・ヘルニア

(1)病態

 横隔膜は、膜を上下させることにより、胸の気圧を管理しているのですが、交通事故や高所からの転落などで胸部に強い打撃を受けると、風船を踏みつけると割れるように、排気が間に合わず、横隔膜そのものが裂けることがあります。

 横隔膜が裂けると、今まで横隔膜によって区切られていた臓器=胃、小腸、大腸などが脱出することがあり、これを外傷性横隔膜ヘルニアと呼んでいます。   (2)症状

 外傷性ヘルニアでは、受傷直後に胸骨下部=心窩部の強い痛み、嘔吐、呼吸困難、ショックなどの症状が現れます。胸部XPで、横隔膜と肺との境界がはっきりせず、胸腔内や縦隔内に腸管のガス像を認めます。

 胃などの管腔臓器が脱出すると、肺内に管腔臓器が写し出されます。消化管バリウム造影検査では、より明瞭に脱出した腸管が描写され、確定診断となります。   (3)治療

 外傷性ヘルニアの治療では、緊急的に閉鎖術が実施されています。横隔膜は呼吸に直結している部分であり、脱出した臓器そのものによる症状よりも、脱出した臓器によって横隔膜の動きが妨げられることが危険なのです。閉鎖術により、横隔膜裂孔が閉鎖されれば、予後は良好で、ほとんどは、後遺障害を残すことなく改善が得られています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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気管・気管支断裂(きかん・きかんしだんれつ)

  (1)病態

 気管は空気を口から肺へ送り込む導管です。気管の外傷は、少数例ですが、呼吸に関わることであり、重症例では死に至る深刻なものです。

 交通事故では、バイクの運転者に多く、頚部に直接外力が加わる、転倒時に、頚部を強く打撲する、急激に頚部が引き伸ばされたときや、自動車であっても、高速で走衝突事故で、体に大きな外力が作用し、体内で引き千切られるように断裂すると考えられています。   (2)症状

 症状は、血痰や呼吸困難ですが、頚部皮下気腫や縦隔気腫を伴うことが最大の特徴です。受傷直後から、これらの症状が現れ、進行していくので、救急搬送を急がなければなりません。   (3)治療

 血痰、呼吸困難、頚部皮下気腫が認められると、気管断裂が強く疑われます。胸部CT、気管支鏡検査により確定診断がなされています。損傷が軽度であれば、自然に回復することもありますが、中程度以上の単独損傷では、緊急手術により、気管断裂部の修復術が実施されます。

 多臓器損傷が合併しているときは、気管内挿管や気管切開を行って、損傷部を越えて気管内チューブを健常部にまで挿入し、換気を確保します。全身状態が落ち着いてから修復術が実施されます。外傷後の瘢痕を剥がすように、気管断裂部にアプローチするのですが、頚部には、動静脈や神経、食道が走行しており、当然、専門医の領域です。

 頚部気管の完全断裂症例は、救命が非常に困難な外傷であり、進行性の呼吸困難で窒息の危険があるときは、事故現場で気管切開が実施されることもあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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  (1)病態

 高所からの墜落、胸部挟圧などの外力が胸壁に作用して、肺表面の損傷はないものの、肺の内部、肺胞、毛細血管が断裂して、内出血や組織の挫滅をきたすことがあります。打撲では青痣が残りますが、肺に痣=内出血ができた状態を肺挫傷といいます。

 さらに、肺表面部の胸膜を損傷すれば、肺裂傷と呼ばれます。肺裂傷では、裂傷部位から肺の空気や血液が漏れ、気胸や血胸となります。

 交通事故では、電柱に激突、田畑に転落するなどで、胸部を強く打撲した自転車やバイクの運転者に肺挫傷が認められています。   (2)症状

 血痰、胸部の激痛により、呼吸がし辛くなります。広範囲の肺挫傷では、強い呼吸困難となります。

 多発肋骨骨折による、フレイルチェスト=動揺胸郭の合併では、安定した呼吸活動ができなくなり、呼吸不全を起こします。肺挫傷では、時間の経過で、肺炎や急性呼吸窮迫症候群と呼ばれる続発症を発症することも予想されるので、速やかに救急搬送しなければなりません。    👉 体幹骨の後遺障害 ⑯ フレイルチェスト(Flail Chest、動揺胸郭)   (3)治療

 診断は、胸部XP、CT検査で明らかとなります。

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 肋骨多発骨折の重症例 外傷性・血胸(けっきょう)、血気胸(けっききょう)

(1)病態

 胸腔内の内圧は外気圧より低くなっており、外傷により外から空気が入り込む、あるいは血液が貯留すると肺は虚脱、縮小し、強い呼吸障害を起こします。血胸は胸膜腔に血液が貯留した状態で、外傷の他、大動脈解離、胸部大動脈瘤の切迫破裂など、医原性の出血などでおこります。

 血液が貯留すると血胸、空気が入り込むのが気胸、2つが合併していれば血気胸と呼ばれます。交通事故では、骨折した肋骨が胸膜を突き破り、血気胸を発症することが一般的です。   (2)症状

 胸部痛、呼吸困難、チアノーゼ、顔面蒼白、頻脈、四肢冷汗などの症状で大騒ぎになりますが・・   (3)治療

 胸腔穿刺で空気を排除、腹腔ドレナージで血液を排出、胸壁創を縫合閉鎖すれば治療は完了します。大量血胸時には開胸術が必要となります。   (4)後遺障害のポイント

 血胸、血気胸共に、上記の処置でおよそ完治するものです。呼吸器の障害などは稀です。弊所でも認定実績がありません。   Ⅰ.

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(1)病態

 左は、胸を前から見たもので、肋骨は12本あり、籠のように内臓を守るように取り囲んでおり、胸骨という胸の前の骨とくっついて、胸郭を形成しています。

 胸骨に接しているブルーの部分は軟骨なので、柔軟性があります。胸郭は息を吸ったときに広がり、吐いた時には縮み、衝撃を受けたときには撓んで力を吸収します。肋骨にも、そのような動きがあります。肋骨骨折は、身体の横側からの外力、前後から圧力が加わることで発症しています。

 右は、胸を背中側から見た図です。胸郭の上の部分には、肩甲骨が乗っています。腕を動かしたときに、肩甲骨も動き、胸郭との間の関節で、なめらかな動きがあるときはスムーズに腕も動きます。このように、肋骨は身体のあらゆる部分に影響を与えています。

↑ のイラストは、胸郭を輪切りにしたものです。

  ① 直接的な外力で、骨折する、

② 側方からの外力で、胸側、あるいは背中側で骨折する、

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横突起骨折(おうとっき骨折)

 衝撃の大きい追突や、衝突によるバイク・自転車からの転落で腰椎横突起骨折は発生しています。

 2014年、ブラジル開催のワールドカップで、ブラジルのネイマールが第3腰椎左横突起骨折で戦列を離れました。

 

(1)病態

 腰椎には横突起という骨突起があります。背筋の中に埋もれており、筋肉の力を腰椎に伝える役目を果たしています。交通事故、スノボなどで、腰部を強打したとき、腰椎の横突起骨折は頻発しています。

 また、脊椎の横突起周辺には体幹を支え、姿勢を保持する重要な筋肉、大腰筋、腰方形筋が付着しているのですが、強力な外力によって無理な方向に筋肉が捻られたときに、横突起部での骨折が発生しています。大腰筋は脊椎の横突起から股関節を超えて、大腿骨に付着しており、椅子に座った姿勢から、膝を上にあげる動作や、足が固定された状態で、体を起こすようなときに働きます。

 また、脊椎を支え、姿勢を保持する作用があります。腰方形筋は、下部肋骨と脊椎の横突起から骨盤にまたがる筋肉で、体を横に傾けるときに働きます。

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(1)病態

 椎体に圧迫骨折がなく、棘突起から椎弓根を経て椎体上縁までの水平な骨折を発表した放射線技師の名前からチャンス骨折と呼ばれています。イラストにあるように、脊椎骨の前柱、中央柱、後柱の3カ所すべてが骨折する不安定型です。

 腰部だけを締め付ける旧2点式シートベルトの時代、交通事故の衝撃で、同乗者が胸・腰椎を骨折することがあり、俗に、シートベルト骨折と呼ばれていました。シートベルトを支点として屈曲牽引力が加わり、脊椎に水平に骨折線が生じるもので、腰椎、T12・L1・2・3で好発していました。今は、3点式シートベルトであり、同乗者のシートベルト骨折は激減しています。

 チャンス骨折は、脊椎の過剰な屈曲により生じる脊椎骨折であり、50%では、脾臓破裂、小腸損傷、腎臓損傷、腸間膜の破裂など、腹部外傷を合併しています。交通事故では、自動車同士の正面衝突、電柱や樹木などに激 突、転落などによる腹部への衝撃がチャンス骨折の原因になることも報告されています。   (2)症状

 腰部の激痛で歩くことができません。骨折部の殴打で痛みが増強します。   (3)治療

 チャンス骨折そのものは、XPで確認できますが、腹部損傷の検査では、CTが有用です。椎体の3カ所におよぶ不安定骨折であり、早期離床を目指し、後方固定術が行われています。術後2週目から体幹コルセットの装用で離床が促され、骨癒合が良好であれば、術後10週でコルセットは除去されています。   (4)後遺障害のポイント    「脊柱の変形」の認定基準から判定されます。    Ⅰ.

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   ↑ 左のレントゲン画像は、第2腰椎が損壊し、変形しています。右のMRI画像では、椎体の一部が脊柱管内に突出し、脊髄を圧迫しているのが確認できます。  <総合南東北病院 低侵襲脊髄手術センター長 水野 順一先生のHPから画像を引用しています。>   (1)病態

 圧迫骨折は、前柱のみの楔状変形で安定型骨折でしたが、破裂骨折では、前柱だけでなく、中央柱にも骨折がおよび、中央柱から遊離した骨片が脊柱管内に突出して、脊髄損傷をきたすことがあります。 続きを読む »

 胸・腰椎圧迫骨折(きょう・ようついあっぱくこっせつ)     (1)病態

 自動車の横転や転落、バイク、自転車の転倒で、ドスンと尻もちをついたときに発症しています。つまり、脊椎を構成する椎体に縦方向の重力がかかると、上下に押し潰されて圧迫骨折するのです。好発部位は、第11胸椎、T11~第2腰椎、L2です。XPの側面像では、脊椎の椎体前方、腹側が、楔状変形しているのが確認できます。

(2)症状

 骨折部に激痛が走ります。腰部を動かすと痛みが増強するので、起き上がること、立ち上がることができません。ただし、半年もすれば、痛みは軽減・消失しているようです。弊所の30人に及ぶ圧迫骨折の被害者さん(11級、8級の認定)を追跡すると、重篤な後遺症なく、改善傾向です。    逆に高齢者の場合は、受傷時の痛みは若者程でもないのですが、骨再生が遅く、あるいは再生しないまま腰が曲がり、痛みも残る方が多かった印象です。

 お年寄りで腰の曲がった方のXP・MRI画像を観ると、歳と共に複数の胸椎・腰椎が変性し、自然な圧迫骨折のように潰れています。加齢に伴い、筋力の衰えと椎間板の変性によって老人性円背(ろうじんせいえんぱい)が起きます。その円背が進むと胸椎・腰椎が多発性圧迫骨折に発展するようです。    高齢者ゆえに圧迫骨折が見逃された実例 👉 11級7号:胸椎・腰椎圧迫骨折(80代女性・東京都)   (3)治療

 治療は、骨折部が安定していれば、入院下でギプスやコルセットで固定し仮骨形成を待ちます。骨折部位が不安定なときは、手術が選択されています。上肢や下肢に麻痺が残ったときは、装具の装用や、リハビリ治療で改善を目指します。

 骨粗鬆症が進行している高齢者では、軽微な追突事故であっても、その衝撃で、胸椎や胸椎と腰椎の移行部で圧迫骨折を発症することがあります。こうなると、損害賠償では、素因減額が議論されることになります。自賠責保険の後遺障害認定は、骨粗鬆症の関与にわりと寛容でしょうか。   続きを読む »

 頚椎棘突起骨折(けいついきょくとっきこっせつ)   (1)病態

 頚椎骨折=首の骨の骨折とは大変なケガのように聞こえます。しかし、骨折部位によっては、一生残るような深刻な後遺症を残さないケースがあります。まず頚椎の図からみてみましょう。  

 首の骨は全部で7つ、上からC1~C7と呼んでいます。加えて上の図のように細かな名称があります。棘突起とはそれぞれの椎骨の後ろに飛び出た出っ張りです。経験上、もっとも出っ張っている第7頚椎の棘突起が最も折れやすいと思います。それは首の後ろを触ればわかります。転倒で強打する、強い外力が加わることにより棘突起部が折れます。むち打ちでも、強度の衝撃で折れた例がありました。水平図は↓の通りです。    むち打ちでの受傷例 👉 14級9号:頚椎棘突起骨折(40代女性・茨城県)   続きを読む »

涙滴骨折(るいてきこっせつ)      椎体骨折では比較的珍しい折れ方です。医師によっては単に「破裂骨折」、単純に一つのかけらに分離する場合は「隅角骨折」と診断名を打つ場合もあります。秋葉事務所での等級認定にはなく、相談例として2件のみです。   (1)病態

 頚椎が、外力で屈曲が強制され、同時に、上方向からの圧迫力が加わったときに、中・下部頚椎に発生する骨折のことで、上位椎体が下位椎体を圧迫したときに、椎体前方部分を破壊し、これが涙の滴のように前方へ分離することから、涙滴骨折=ティアドロップ骨折と呼ばれています。

 交通事故では、正面や側面衝突などの高エネルギー衝突で発生しています。出合い頭衝突の勢いで、電柱や立木、高速道路壁に激突など、かなりひどい事故状況です。交通事故以外では、浅いプールや海などへの飛び込みにより頭部を水底に打ち付けることや、高所からの転落事故で発生しています。   (2)症状

 骨折部の激痛と腫れ、C2~3など頚椎が高い部位では可動域制限。 付随して頚部神経症の発症もあります。    (3)治療

 安定型であれば、仰臥位で砂嚢による固定、頚椎に配列異常があれば、持続的牽引の保存療法が行われます。椎体後柱部の骨折では、後方へ転位し、棘間靱帯や後縦靭帯の損傷による頸椎の後弯、前方辷り、椎間関節や棘突起の間隔の開大などにより高度の脊髄損傷を合併すること予想されます。この場合は、緊急手術で強固な内固定が行われています。    (4)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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  (1)病態

 圧迫骨折は、椎骨の前柱が空き箱を押し潰したようにひしゃげる骨折で、椎体後方部分が脊柱管内に転位することは、ほとんどなく、安定型の骨折です。

 これに対して、破裂骨折は、椎骨前柱の圧迫骨折にとどまらず、後柱の骨折を合併し、骨折片が後方に突き出すもので、滅多にありませんが、脊柱管内に骨折片が突き刺さると、脊髄損傷をきたします。したがって、破裂骨折は不安定型骨折に分類されています。交通事故では、自動車同士の正面衝突など、高エネルギー外傷で発生しています。   (2)症状

 頚部の激痛、腫れ、頚部の可動域制限、激痛のため立つことも座ることもできません。   (3)治療

 XP、CTで確定診断されていますが、麻痺などが生じているときは、MRI、脊髄造影も行われています。不安定骨折であり、遅発性の脊髄損傷を防止し、早期の離床を目的に、内固定術が行われています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 頚椎楔状圧迫骨折(けいついけいじょうあっぱくこっせつ)

  (1)病態

 いわゆる頚椎の圧迫骨折のことで、中・下位頚椎損傷の中では最も頻度の高い骨折型です。椎体の前上・下縁に骨折が生じ、椎体は前方部分が骨折するため楔状に変形・圧壊します。

 椎体後方部分が脊柱管内に転位することは稀であり、安定型損傷で、一般的に、麻痺を合併することはありません。交通事故では、車の横転、崖下転落、自転車、歩行者が大きく跳ね飛ばされたときに発生しています。   (2)症状

 頚部痛と頚部の運動制限が中心ですが、事故直後は、頚部の激痛で立つことはできません。   (3)診断と治療

 XPで確認できますが、新鮮骨折あるいは陳旧性かは、MRIで確認されています。治療は、保存的治療で、消炎鎮痛剤の内服と頚椎カラーの外固定による安静加療が実施されます。

 新鮮骨折あるいは陳旧性か? 👉 圧迫骨折の注意点   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 

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