咽頭外傷(いんとうがいしょう)・・・呼吸障害、嚥下障害、開口障害、嗄声、発声障害  

 ヒトの咽頭は、鼻・口から入った空気が、気管・肺へと向かう通り道と、口から入った食物が、食道から胃へと向かう通り道の交差点であり、空気と食物の通過仕分けをしています。

 喉頭は気管の入り口にあり、喉頭蓋=喉頭の蓋や声帯を有しています。喉頭蓋や声帯は、呼吸では開放されており、物を呑み込むときには、かたく閉鎖され、瞬間的には、呼吸を停止させ、食物が喉頭や気管へ流入することを防止しています。声帯は、発声では、適度な強さで閉じられ、吐く息で振動しながら声を出しています。

 喉頭は、① 呼吸する、② 食物を呑み込む、③ 声を出す、3つの重要な役目を果たしているのです。   (1)病態

 咽頭外傷は、広い意味で、食道破裂のカテゴリーですが、交通事故では、受傷機転が異なります。そして、件数においては、圧倒的に咽頭外傷が多いので、ここで解説しておきます。

 喉頭部に対する強い外力で、咽頭外傷が発生し、咽頭部の皮下血腫、皮下出血、喉頭軟骨脱臼・骨折などを発症します。プロレスの技で言えば、ラリアットをイメージしてください。交通事故で、大きな外力を前方向から喉頭に受けると、後方に脊椎があるため、前後から押しつぶされる形となり、多彩な損傷をきたし、呼吸、発声、嚥下の障害を引き起こすのです。   (2)症状

 症状として、事故直後は、破裂した部位の疼痛を訴え、痛みで失神することもあります。2次的には、食道が破裂、損傷することにより、縦隔気腫、縦隔血腫を、食道内の食物が、縦隔内に散乱して、縦隔炎を合併し、それらに伴って、呼吸困難、咳、痰、発熱などの症状が出現します。

 頚部や胸部の皮下に皮下気腫を認めることもあります。重症例では、食道からの出血に伴い貧血、出血性ショック症状を合併することもあり、要注意です。   ※ 縦隔気腫・縦隔血腫  縦隔の内部に空気が漏れ出したものを縦隔気腫、血液が溜まったものを縦隔血腫といい、どちらも胸部の外傷が原因で、気管、食道、血管などから空気や血液が漏れ出し、重篤な症状をもたらします。   (3)治療

 まず交通事故による鈍的外傷では、なにより、呼吸路の確保が優先されます。呼吸困難では、必ず、気管を切開して気道を確保します。

 軽いものでは、安静と、声帯浮腫を防止する必要から喉頭ネブライザーの併用ですが、通常は、呼吸が確保されていることを前提に、喉頭内視鏡検査、CTなどの画像診断、喉頭機能、呼吸、嚥下、発声を評価する各種検査が実施されます。骨折整復は、受傷後早期に行う必要があり、手術で軟骨の露出、喉頭を切開、損傷した部位の粘膜縫合や骨折整復の手術が行われています。

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外傷性食道破裂(しょくどうはれつ)

(1)病態

 交通事故では、胸部に対する強い打撃、圧迫により、稀に発症しています。秋葉事務所では未だに受任例がありません。    ネットで食道破裂の外傷例を検索してみました。、   ① 交通事故による第3胸椎破裂骨折に合併したもの、   ② 樹木からの落下で胸部を打撲したもの、   ③ 野球でのヘッドスライディングによる胸部圧迫、   ④ 風呂場での転倒による胸部の打撲に伴う外傷性食道破裂が報告されています。   ⑤ 変わったところでは、食器を運搬中に転倒して、箸が右頚部から刺入し外傷性食道損傷となったものもあります。   >① 75歳男性、歩行中の交通事故により受傷⇒胸部CTとMRIにて右血胸、縦隔血腫、頚椎骨折、第3胸椎破裂骨折を認め、ICUで管理⇒受傷4日後、呼吸状態悪化、人工呼吸を開始、⇒右胸腔ドレーンより血性排液あり、翌日、膿性排液となり、CTで血胸の増悪と縦隔気腫を認める⇒受傷6日後の内視鏡検査で、食道穿孔を認め、外傷性食道破裂と診断、同日緊急手術、⇒食道部分切除、食道瘻造設、開腹下胃瘻、腸瘻造設術施行、⇒食道破裂は胸椎骨折の骨片による損傷が原因と診断されました。   >② 57歳女性、木から落下、翌日より、嚥下での胸部痛とつかえ感が出現、近医を受診、⇒食道内視鏡検査にて下部食道に約2cmの全周性の潰瘍と左右に深い粘膜裂傷を伴う狭窄を認める、⇒超音波内視鏡=EUS検査で食道壁は全層にわたり肥厚、壁構造は消失、⇒狭窄部が瘢痕化した後、バルーンによる食道拡張を施行し, 狭窄症状の改善を認める、保存的治療にて改善、狭窄瘢痕部位はバルーンによる食道拡張術で軽快、12カ月経過後も再狭窄は認められていません。   >③ 15歳,男性、野球でヘッドスライディングをしたあと、前胸部痛が出現、飲水後に,前胸部がしみる感じを訴える、⇒.胸部XP、CT検査で縦隔気腫と診断、⇒縦隔気腫の原因精査のため、上部消化管内視鏡検査を施行、⇒食道入口部に約3cmにわたる裂創を認める、

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味覚脱失(みかくだっしつ)   (1)病態

 味覚は、甘味、塩味、酸味、苦味の基本4要素が基本です。

 最近では旨味を加えて基本5要素とも言います。ちなみに辛味は入りません。耳鼻科の先生に聞くと、辛味は、正確には舌の痛みだそうです。

 味覚を感じる器官は、味蕾(みらい)と呼ばれ)、そのほとんどは舌の表面の乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭という組織に存在しますが、咽頭粘膜などにも認められます。甘味、塩味、酸味、苦味の4要素では、感じ方にそれほどの差はなく、旨味のみ、舌の側面、付け根の部分で強く感じると報告されています。

 味覚の脱失や減退は、舌の外傷、顎周辺組織の外傷を原因として発症しています。さらに、頭蓋底骨折や頭部外傷後の高次脳機能障害でも、味覚障害が認められています。

 他覚的検査としては、濾紙ディスク法の最高濃度液検査を受けます。これは、甘味、塩味、酸味、苦味の4つの基本となる味のついた、濾紙を舌の上において味質の障害を見る検査法です。薄い味から濃い味へと5段階で検査が実施されています。

  ◆ 味覚と嗅覚は、風味といわれる通り、密接に関連していることが報告されており、嗅覚が低下することにより、味覚にも変化が生じています。嗅覚の異常によって味まで減退することを「風味障害」と呼びます。

 味を感じる経路は、

① 味物質の味蕾への到達

② 味蕾での知覚

③ 中枢への伝達に分類されるのですが、交通事故においては、舌や顎周辺組織の損傷を原因とすることもあり得るのですが、圧倒的には、中枢への伝達障害が予想されます。   (2)治療

 耳鼻咽喉科の受診を急ぎます。味覚の異常の多くは亜鉛が足りない、亜鉛欠乏症の疑いから治療がスタートします。亜鉛の服用は、抗潰瘍薬のポラプレジンク(プロマック)と、低亜鉛血症が保険適応病名の酢酸亜鉛製剤(ノベルジン)が代表的です。亜鉛の処方が続いても改善が無い場合、味覚減退・喪失は決定的になると思います。

 何より早期からの治療実績がないと、因果関係から事故外傷による味覚や嗅覚の異常は否定される可能性があります。内在的な原因=病気の可能性もあるのです。風邪でも味覚・嗅覚の異常は起きます。最近では、コロナ罹患後の後遺症で「味がしなくなった」が記憶に新しいところでです。   ◆ 脳外傷は別として、そもそも、むち打ちはじめ打撲・捻挫程度の衝撃で「味がしなくなる?」など、まず信用されません。受傷直後からの治療実績と検査結果が無ければお手上げです。その立証は苦戦どころか敗戦必至です。かつての記録からも、嗅覚障害での逆転・認定例はありますが、味覚では全敗中です。

    (3)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 顎関節症・円板損傷(がくかんせつしょう・えんばんそんしょう)

(1)病態・症状

 関節円板の位置のズレや変形があることで、開口・並行のときにカクンカクンのクリック音か出ること、変形が大きいと口が途中までしか開かない開口障害が出現しています。

 関節円板は下顎頭の外側と内側には強く連結しているのですが、前後方向への連結は緩やかで、関節円板は前後へ大きく動くことが可能になっているのです。

 関節円板障害は、正しい位置から前にずれることが大半で、関節円板前方転位といいます。つまり、下あごが、前に出っ張った状況となっているのです。原因として、ストレスからくる歯のくいしばり、歯ぎしりなどが指摘されています。   (2)治療

① あごを楽にするようなリハビリ運動

② マウスピースの装用

③ 噛み合わせの調整

 歯科医における上記の治療・矯正で、改善が得られます。   (3)後遺障害のポイント

 顎関節症は、時々相談を受けていますが、後遺障害の対象となる程の方はいませんでした。事故との因果関係に疑念があること、歯科の治療・矯正で改善が得られることの2つを理由としています。

 上顎・下顎骨に骨折がないと、開口障害やそしゃく障害を訴えても、まず見向きもされません。骨折など、相当のダメージを前提に、上下顎関節の転位、あるいは円板損傷があれば信用されます。円板損傷はMRIで立証します。それでも、経験上、微妙な画像が多く、立証の難易度は高いと言えます。    次回 ⇒ 味覚障害  

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 上顎骨、下顎骨、頬骨、いずれの骨折と同時に歯を折ることは多いものです。もちろん、単独で歯を折る(歯折)、歯を失う(歯牙欠損)、根本がグラグラになる(脱臼)等で治療を施すこともあります。歯の治療で、歯を削る・人口物で補うことを、専門的な用語で補綴(ほてつ)と呼びます。

 歯の後遺障害では、事故以前の虫歯なども含め、加重障害として等級が認定されています。そして、加重障害の計算は、単純な差引ではなく、とても複雑なものです。ここで特集しましょう。   1、歯の障害

 まず、歯の状態を4つに分類します。   a. 

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Ⅲ. 開口障害

開口は、正常であれば、男性で55mm、女性で45mmが日本人の平均値です。

 これが2分の1以下に制限されると、開口障害により咀嚼に相当の時間を要することになり、12級相当が認定されます。男女とも、指2本を口に挿入できなくなったときは、後遺障害の対象となります。    参考までに、そしゃく筋について、追加的な説明をしておきます。下顎骨の運動は、咀嚼筋と呼ばれる筋肉が主に働きます。この筋肉は、随意に動かすことができ、下顎を上顎に対して上下する、水平に移動することで、歯が食物を噛み切ったり、すりつぶしたりすることができるのです。

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(4)後遺障害のポイント

 上顎・下顎の骨折は、整形外科で対応することはできません。口腔外科を中心に、形成外科が共同して手術、その後の治療を担当しています。歯が折れるなど、歯科へかかることも多いものです。

 それらの診療科があって、治療技術の高い治療先を選択しなければならないのですが、これらの治療の開始には、10日前後の猶予があります。治療の開始が10日前後遅れても、それを原因として、大きな後遺障害を残すことは少ないものです。

 上下の顎骨骨折から頻発する障害を5つに分けて解説します。   Ⅰ.

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 下顎骨々折(かがくこつこっせつ)

1 オトガイ部(正中部) 2  下顎体部 3  下顎角部(埋伏智歯部) 4  下顎頸部

   (1)病態

 下あごの骨折で、顔面部の骨折では最も多い例です。交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、下顎の骨折は発生しています。   続きを読む »

 上顎骨々折(じょうがくこつこっせつ)

(1)病態

 上顎骨は頬骨、鼻骨、口蓋骨と結合し、中顔面を構成しているのですが、上顎骨は、薄くて脆いもので、交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、上顎の骨折は発生しています。

 上顎骨のほぼ下半分が骨折したものをルフォーI型骨折、上顎骨が鼻骨複合体を含めて骨折したものをルフォーII型骨折といいます。さらに、頬骨をも含め顔面中央部が全体として頭蓋骨と離断される骨折をルフォーIII型骨折といいます。また、上顎骨が正中部で離断されたものは矢状骨折といいます。

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頬骨々折(きょうこつこっせつ)・頬骨体部骨折(きょうこつたいぶこっせつ)

(1)病態

 頬の高まり、周辺部の骨折で、交通事故では、歩行者、自転車、バイクの転倒による強い打撲で発症しています。2、3カ所が同時に骨折する粉砕骨折が多く、骨折部が転位、ズレます。   (2)症状  以下の症状が予想されます   ① 頬の平坦化、頬部の凹みによる顔面の変形、

② 開口障害、口が開けにくい、

③ 複視、モノが重複して見える、

④ 瞼の腫れが強く、眼球に損傷がないが、眼球表面が内出血、

⑤ 眼窩がくぼみ、眼球が陥没、

⑥ 眼窩下神経を損傷すると、頬・上唇・歯茎・鼻の側面の痺れ、   (3)治療

 まずはXP(レントゲン)、続いてCTで確定診断が行われています。

 体部骨折では、視力・眼球運動検査など眼科的な検査も必要となります。   Ⅰ.

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(1)病態

 顔面は11種18個の骨から構成され、下顎骨を除いて互いに接合して1つの骨を形成しています。顔面骨折は、受傷原因や外力の強さの方向により、単独骨折と多発骨折に分類されます。骨折となると、整形外科のイメージですが、顔面骨折では、形成外科で診断・治療が行われています。

 顔面骨折は、①鼻骨骨折、②鼻篩骨骨折、③頬骨骨折・頬骨弓骨折、④眼窩底骨折、⑤上顎骨骨折 ⑥下顎骨骨折、⑦前頭骨骨折、⑧陳旧性顔面骨骨折、⑨顎変形症、上記の9つに分類されるのですが、交通事故では、複数の傷病名が合併することもしばしばです。

 また顔面・頭蓋は、多くの骨の組み合わせからなるため、骨折の部位・症状により、眼科、耳鼻科、脳外科、歯科、口腔外科、形成外科などが協力体制を組んで治療が行われています。   (2)治療

 診察とXP、CT、MRI検査で確定診断されており、治療の中心は、形成術による整復・固定です。

 多数例で、ずれた骨が再癒合を始める前の、受傷から4~10日前後に形成術が実施されています。手術の際の皮膚切開は、できるだけ傷跡が残らない切開線を選ぶように工夫されています。  通常、チタンプレートとスクリューで固定されていますが、最近では、数カ月で体内に吸収される吸収性プレートやスクリューが普及しています。吸収性プレート、スクリューの特徴は、骨癒合が完了する数カ月の期間は強度が保たれ、その後6カ月~1年で体内に吸収されることで、抜釘の必要がなく、子どもの成長にも対応できています。     ◆ 顔面骨折の3分類

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  (1)病態

 交通事故との因果関係はありませんが、毎年大流行していますので、参考までに取り上げておきます。

 アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニなどを原因として、鼻粘膜に生じるアレルギー疾患です。アレルギーは、免疫機能が過剰に反応することであり、蜂に刺されることで生じるアナフィラキシー、金属の接触で発症する金属アレルギーなど、広範囲にわたります。

 アレルギーは、Ⅰ~Ⅳ型の4つに分類され、アレルギー性鼻炎はⅠ型アレルギーの代表的疾患です。I型アレルギーは、IgE抗体という抗体によりアレルギー反応が起こります。体内に花粉やダニなどの原因物質が入るとIgE抗体が作られ、この抗体が白血球の一種である肥満細胞や好塩基球細胞膜に付着することでアレルギー性鼻炎が発症します。   (2)症状

 くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状です。その他に、頭痛、頭重感、食欲不振、耳・のど・目のかゆみなどの随伴症状が起こることもあります。また倦怠感や意欲の低下にもつながり、これらの症状は非常に不快なもので、QOLを著しく低下させます。生命に関わることはありませんが、学業や仕事に集中力を欠くことになります。   (3)検査・治療

 血液検査と鼻粘膜誘発テスト、皮膚反応をチェックするプリックテスト、皮内テストなどが行われます。

 治療には、薬物療法としては、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の内服です。くしゃみ、鼻水が主症状のときは、抗ヒスタミン薬を使用されています。鼻づまりが主症状のときは、抗ロイコトリエン薬が使用、中等症以上になると、鼻噴霧用ステロイドホルモン剤も使用します。

 薬物療法で十分な結果が得られないときは、レーザー治療、後鼻神経切断術、粘膜下下鼻甲介骨切除術などが選択されています。アレルゲン免疫療法と呼ばれます。アレルギーの原因であるアレルゲン(抗原)を少量から体内に投与し、身体をアレルゲンに慣らすことで症状を和らげる免疫療法も実施されています。    次回から顔の後遺障害のシリーズに移行します ⇒ 顔面骨折  

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 嗅覚脱失(きゅうかくだっしつ)    ちなみに漢字を区別すると・・匂い(良いにおい)・臭い(悪いにおい)です。  

(1)病態

 嗅覚障害は、鼻本体の外傷ではなく、頭蓋的骨折と頭部外傷後の高次脳機能障害、特に、前頭葉の損傷で発症しています。これらは、嗅神経の損傷を原因としたものであり、治療で完治させることができません。    その実例(高次脳機能障害に併発)👉 12級相当:嗅覚障害(20代女性・東京都)    例外的に、追突を受けた外傷性頚部症候群の男性被害者に嗅覚と味覚の脱失を経験しています。頭部外傷がなく、絶望的な思いでしたが、事故受傷直後から自覚症状を訴えており、そのことは、カルテ開示においても確認できました。検査結果でも、嗅覚の脱失を立証でき、嘘ではないと確信し、被害者請求で申請したのです。自賠責・調査事務所は、7カ月を要して、嗅覚の脱失のみを12級相当として認定してくれたのです。    その実例 👉 12級相当:嗅覚障害(60代男性・長野県)    もう一つ 👉 12級相当:嗅覚障害(30代女性・東京都)   (2)後遺障害のポイント

Ⅰ. 

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 鼻欠損(びけっそん)   (1)病態

 ヒトの外貌は、眼瞼と鼻そして口唇で成り立っており、個人の個性を表しています。その鼻が欠損するのですから、被害者の精神的な苦痛も大きく、相当に深刻な外傷です。

 形成術は、日進月歩ですが、完全な回復は、とても期待できません。ところが、後遺障害としての評価は、意外に低いのです。    (2)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 鼻軟骨損傷(びなんこつそんしょう)    (1)病態

 鼻筋を指でつまむと、左右に動かすことができるのですが、それは、軟骨であるからです。鼻の根元、鼻骨は、しっかりとした骨であり、鼻軟骨の下に位置しています。

 鼻の軟骨々折でも、軽度なものは、出血もなく、薬だけで終わります。   (2)症状

 事故直後から、鼻筋が、大きく左右に曲がる、中央部が凹むことがありますが、鼻骨骨折を伴っていなければ、軟骨の弾力性で一時的な変形を来したものであり、それほど心配することもありません。しかし、現場で曲がった鼻を自分の手で矯正することはタブーで、絶対に行ってはなりません。   (3)治療

 大きく腫れてくるまでに、急いで、耳鼻咽喉科を受診します。尾骨骨折の有無を確認するために、XP検査が行われ、触診で、ズレや曲がりがチェックされます。

 骨折がなく、皮膚や粘膜の傷が開いていない、出血が止まっている、曲がりや陥没が少ないときは、ペンチ状の鉗子で整復し、鼻孔に詰め物をして固定します。   (4)後遺障害のポイント

 尾骨骨折を伴わない鼻軟骨の損傷であれば、通常、後遺障害を残すことなく治癒します。ケガ自体に過度な心配はいりません。ただし、痛みが受傷から半年も一貫して治療が続けば、神経症状の14級9号の余地を残すと思います。

 次回 ⇒ 鼻欠損  

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 鼻篩骨骨折(びしこつこっせつ)

 

(1)病態

 鼻骨々折に合併して、鼻骨の奥、裏側部分の両眼の間を骨折したときは、重症例となります。   (2)症状

 鼻篩骨には、瞼が付着している突起や涙を鼻に流している孔があり、先の鼻骨骨折の症状に加えて、

① 眼球陥没、目が窪む、 ② 眼角隔離、両目の距離が離れる、

③ 涙小管断裂、涙が止まらない、 ④ 鼻筋の強い凹みなどの症状が出現します。    (3)治療

 治療は、なるべく早期に骨折した骨を元の位置に戻し、必要なら骨を移植することです。

 しかし、頭蓋底骨折を合併していることも多く、個々のケースで形成術の時期や術式が異なります。   (4)後遺障害のポイント

 秋葉事務所では未経験の症例です。基本通り、諸症状を神経系統の障害で評価します。それと鼻に変形がないか、つまり醜状痕を確認します。

 交通事故110番では、原付を運転中に追突され、前方のトラックの荷台に鼻を打ちつけた事故で、鼻骨々折、および鼻篩骨々折の相談例がありました。

 眼球陥没、目が窪む、眼角隔離、両目の距離が離れる、涙小管断裂、涙が止まらない、鼻筋の強い凹みなどの症状が出現し、眼球陥没と眼角隔離は、なんとか目立たない程度に改善したのですが、右目の涙小管断裂と鞍鼻変形は改善が得られず、後遺障害を残したのです。

 涙小管断裂では14級相当、鞍鼻変形では、当初12級14号でした。未婚の女性であり、火の玉の異議申立を敢行、連携弁護士は自賠責・調査事務所の面接に立ち合い、7級12号に繰り上げ認定に成功、併合7級としました。    次回 ...

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 前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)

(1)病態

 めまいは内耳にある前庭、半規管、それらからの情報が伝わる前庭神経、脳幹、小脳のいずれかが障害されるものです。前庭神経炎の場合、内耳から脳へ情報を伝える前庭神経が、なんらかの原因で障害されてめまいを生じると考えられています。発症前に風邪症状がある人が多いため、ウイルス感染が原因と疑われていますが、それ以上は不明です。   (2)症状

 激しい回転性のめまいが急に起こり、普通それが数日〜1週間程度続きます。めまいの他、吐き気や嘔吐、冷や汗が生じます。この疾患は、難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状を伴わないのが特徴です。安静にしてもなかなか収まりませんが、動くとさらに悪化する傾向です。

 めまいは発症から3週間くらいでほぼおさまりますが、体を動かした時や歩く時のふらつきは、しばらくは持続するのが一般的です。ときには、6カ月位経っても、ふらつきが持続することがあります。 続きを読む »

 めまいを訴える患者さんで、この診断名も多いものです。やはり、交通事故外傷と被ることが多く、中高年の場合は既往症の疑いが拭えません。事故からめまいを発症したのであれば、できるだけ早期に専門医の受診、検査をしなければなりません。その結果、この診断名がつくと後遺障害の認定は黄色信号です。     (1)病態・症状

 耳が原因で起こるめまいの中で、最も頻度の高いもので、

① 寝返りをうったとき、

② 寝ていて急に起き上がったとき、

③ 座っていて急に振り向いたとき、

④ 棚の上のものを取ろうとして急に上を向いたとき、

 このような時、急激に回転性の激しいめまいが起こる疾患で、内耳の変性、慢性中耳炎や結核でストレプトマイシンを使用した副作用などで発症するとされています。

 内耳の前庭器官は、頭が地面に対してどのような位置にあるかを感じるための機能を有しています。良性発作性頭位めまいは、前庭器官に異常が生じたために、頭の位置の変化を過敏に感じてしまう結果、発症する疾患と考えられており、交通事故との因果関係は通常ありません。

 前庭器官の耳石器の上には、炭酸カルシウムでできている耳石が多数のっていますが、この耳石が本来の位置から外れて、別の種類の前庭器官である半規管のクプラに付着したり、半規管のなかに遊離したりして、それが頭を動かした際に動いて半規管を刺激するのが原因であるという説が有力です。耳石へのダメージ・・この点、事故の衝撃による可能性を残しています。    何気なしに頭を動かしたり、朝起きようとして枕から頭を上げたりしたあとなどに、急激な回転性のめまいが起こり、このめまいは長くても数十秒で消失します。また、何回か同じ動作を繰り返していると、だんだん軽くなるのが特徴で、吐き気を伴うことがありますが、難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状は起こりません。

 めまいが起こる頭の位置で眼振が現れ、次第に増強、減弱します。そして、聴力検査、温度眼振検査では異常を認めないことがほとんどです。良性といわれるように、一般的には、比較的早いうちにめまいはなくなります。めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとるといったリハビリテーションをすることも治癒を早めます。

 最近では、頭位変換療法と呼ばれる、遊離した耳石を元にもどす方法が開発され、良好な成績を上げています。   (2)治療

 まずは症状の起こりやすい体(頭)位や活動を避けるなど、日常生活での動きに気をつけます。抗めまい薬の服用により症状を抑えることはできますが、BPPVを完治させる薬はありません。しかし通常の場合、最初の1か月を過ぎると徐々に症状が消えていきます。   (3)後遺障害?

 この診断名では、交通事故外傷との因果関係は薄れます。それでも、事故直後からの発症で、検査結果を伴っており、症状の一貫性もあり・・・現在、申請中が1件、結果を待っているところです。   結果が出ました! 👉 続きを読む »

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