肋骨多発骨折の重症例です。
呼吸に伴う胸郭の動き
左が「吸気」、右が「呼気」
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肋骨多発骨折の重症例です。
呼吸に伴う胸郭の動き
左が「吸気」、右が「呼気」
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肋骨多発骨折の重症例 外傷性・血胸(けっきょう)、血気胸(けっききょう)
(1)病態
胸腔内の内圧は外気圧より低くなっており、外傷により外から空気が入り込む、あるいは血液が貯留すると肺は虚脱、縮小し、強い呼吸障害を起こします。血胸は胸膜腔に血液が貯留した状態で、外傷の他、大動脈解離、胸部大動脈瘤の切迫破裂など、医原性の出血などでおこります。
血液が貯留すると血胸、空気が入り込むのが気胸、2つが合併していれば血気胸と呼ばれます。交通事故では、骨折した肋骨が胸膜を突き破り、血気胸を発症することが一般的です。 (2)症状
胸部痛、呼吸困難、チアノーゼ、顔面蒼白、頻脈、四肢冷汗などの症状で大騒ぎになりますが・・ (3)治療
胸腔穿刺で空気を排除、腹腔ドレナージで血液を排出、胸壁創を縫合閉鎖すれば治療は完了します。大量血胸時には開胸術が必要となります。 (4)後遺障害のポイント
血胸、血気胸共に、上記の処置でおよそ完治するものです。呼吸器の障害などは稀です。弊所でも認定実績がありません。 Ⅰ.
(1)病態
左は、胸を前から見たもので、肋骨は12本あり、籠のように内臓を守るように取り囲んでおり、胸骨という胸の前の骨とくっついて、胸郭を形成しています。
胸骨に接しているブルーの部分は軟骨なので、柔軟性があります。胸郭は息を吸ったときに広がり、吐いた時には縮み、衝撃を受けたときには撓んで力を吸収します。肋骨にも、そのような動きがあります。肋骨骨折は、身体の横側からの外力、前後から圧力が加わることで発症しています。
右は、胸を背中側から見た図です。胸郭の上の部分には、肩甲骨が乗っています。腕を動かしたときに、肩甲骨も動き、胸郭との間の関節で、なめらかな動きがあるときはスムーズに腕も動きます。このように、肋骨は身体のあらゆる部分に影響を与えています。
↑ のイラストは、胸郭を輪切りにしたものです。
① 直接的な外力で、骨折する、
② 側方からの外力で、胸側、あるいは背中側で骨折する、
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3、血管の損傷による障害 ○ 内腸骨動脈損傷(ないちょうこつどうみゃくそんしょう)
① 病態
赤丸部分の腹大動脈は、左右2本の総腸骨動脈に分岐し、総腸骨動脈は、内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれています。内腸骨動脈は、骨盤の後方部分に分布しており、骨盤骨折による血管損傷では、大量出血につながります。さらに、豊富な側副血行路がはり巡らされており、破綻した血管からの出血は容易にとめることができません。
骨盤骨折の死因の50%は、出血であると報告されており、骨盤腔内の出血で出血性ショックを引き起こし死亡する例も、珍しくありません。 ② 症状
骨盤骨折により、骨盤内の血管や臓器が損傷されると、出血斑や血尿、血便などのほか、低血圧や意識障害などの症状が出現します。 ③ 治療
輸液・輸血にもかかわらず、血圧が上昇しないときは、ただちに内腸骨動脈造影を実施し、スポンゼルコイルを使用し両側内腸骨動脈の根元から血管塞栓術が行われています。 ※ 出血性ショック
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○ 男性の生殖器の損傷・障害 男性では、勃起障害が多く見られます。勃起障害は、泌尿器科におけるリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査を受けて立証します。夜間の勃起も計測しますので、2泊~3泊の入院が必要です。それなりに大変な検査で、実施できる病院と診察できる医師も限られます。
完全なる検査はリジスキャン検査です。他の検査として、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査、プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査があります。以下に図示・説明します。これらの検査により、勃起を支配している神経の損傷を立証しなければなりません。原因がわからず、とりあえずバイアグラが処方されている方もおりました。薬で改善するのであれば、心因性(勃起不全)かもしれません。
1、会陰部の知覚
会陰部とは、俗に蟻の門渡りと呼ばれる外陰部と肛門の間に位置していますが、肛門の周囲を針で刺して痛みがあれば正常とされています。
2、肛門括約筋の随意収縮
2. 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷 骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されており、消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素が供給されています。 ○ 排便障害
骨盤骨折に合併するS字結腸・直腸の損傷ですが、人工肛門の造設などの重症例はなく、経験則では、程度は様々ですが便秘を残すものが圧倒的です。S字結腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、肛門括約筋を支配している骨盤神経もしくは下腹神経に損傷が認められることが条件となっており、これは、直腸肛門機能検査を受けて立証します。その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、11級10号の認定がなされています。
9級11号は摘便(手で肛門から便をかき出す)が条件ですから、重度の介護状態が想定されます。この場合、介護等級である別表Ⅰの第1号1級、2級1号に内包されることになります。単独の9級11号認定は未経験です。
逆に頻便(便意がしょっちゅう、便の回数が1日数度、単なる下痢ではない)の場合については、13級11号「臓器の障害」に属します。臓器の13級は、各臓器のちょっとした不具合をこの認定に当てはめています。 13級11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 以下は、排尿、排便、尿漏れの3点セットが認定された例です。
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<ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折、恥骨結合離開・仙腸関節脱臼における後遺障害のポイント> 不安定型の骨盤骨折が癒合不良となった場合、具体的には変形(文字通り形が変わってくっついた)や転位(ズレてくっついた)、もしくは偽関節(くっつかなかった)となれば、変形の12級5号となります。また、これら癒合不良に派生する後遺障害と内臓損傷、神経損傷における障害は以下の3つが想定されます。 ○ 骨盤骨折自体に関するもので、疼痛、股関節の可動域制限、骨盤の歪みによる下肢の短縮
○ 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷・神経損傷による障害
○ 内腸骨動脈などの血管の損傷による障害 以下、骨盤骨折から派生する後遺障害を解説します。
1.
(2)恥骨結合離開・仙腸関節脱臼 ① 病態
骨盤は左右2つの寛骨が、後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して、前側で恥骨結合を介してジョイントしており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しているのです。この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な構造となっていますが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をするのです。 ② 症状
骨折部の強い痛みで動くことができず、内臓損傷では、腹痛、血尿、排尿困難、排尿の制御ができなくなり失禁することや下血、性器出血を伴うことがあります。仙骨神経に損傷が及べば、排尿・排便障害となることがあります。「頻尿」は常に尿意があり、回数が増える。または尿漏れ。逆に「閉尿」は尿が出なくなります。便ですと、それぞれ頻便、便秘です。仙骨神経の損傷から下肢のしびれ、ひどいと麻痺で動きが悪くなります。 ③ 治療
上図のような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。
上のイラストは、右大腿骨頭の脱臼も伴っています。大腿骨頭の納まる部分である、寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性が予想されます。
④ 後遺障害のポイント 安定型の骨折でも触れましたが、骨盤の変形を問うことになります。そこを参照下さい。 👉 骨盤骨折 ④ 後遺障害のポイント ただし、骨盤の一部とも思える仙骨は、脊柱として判断されます。つまり、「脊柱に変形を残すもの」=11級7号の認定になるわけです。↓ ...
< 後遺障害のポイント> 【1】後遺障害の前提
Ⅰ. 腸骨翼骨折に限っては、単独骨折であっても骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたすことがあり、その際は、出血性ショックに対応して全身管理を行う重症例となります。それ以外は骨癒合さえ問題なければ、後遺症なく回復傾向、等級も14級9号止まりか、痛みなどの神経症状が無ければ非該当になります。
Ⅱ.
(3)尾骨骨折(びこつこっせつ)
① 病態
仙骨の下についている骨で、しっぽの名残であり、尾てい骨ともいわれています。交通事故では、自転車、バイクでお尻から転倒したときに骨折することが多いのですが、尾骨は、退化した3~5つの尾椎が一塊となって存在しており、つなぎ目があることと、事故前から屈曲変形していることもあり、XPでは骨折と判断することが困難なことがあります。確定診断には、CT、MRI撮影が必要です。
経験上、事故前にすでに軽い脱臼状態、変形や転位(折れて分離)しているなど、既往症もいくつか目にしました。産婦人科医に聞くと、経産婦で出産時に曲がったまま、それが残る例もあるそうです。 ② 症状
尾てい骨部分に激烈な痛みがあり、歩くことや座ることで痛みが増強する。長時間、座っていると尾てい骨の痛みが強くなってくる。尾てい骨に痛みがあり、下肢にしびれがあり、歩きにくさを生じている。それでも、深刻な後遺症は稀で、後遺障害として認定されること少ないと思います。 ③ 治療
治療は、通常は保存的に安静加療が行われています。 ④ 後遺障害のポイント
シリーズの最後にまとめて解説しています。 ⇒ 骨盤骨折 ④ 後遺障害
(2)恥骨・坐骨々折(ちこつ・ざこつこっせつ)
① 病態
骨盤骨折で経験上、最も多い例です。恥・坐骨②③は、前方と下方からの外力で骨折しており、恥骨と坐骨の両方が折れることも多く、併せて「恥座骨骨折」と書かれることが多いようです。
交通事故では、自転車やバイクを運転中、出合い頭衝突で前方向から衝撃を受け、ドスンとお尻から落下して骨折しています。この事故発生状況では、腰椎の圧迫骨折を合併することもあります。 ② 症状
横になっても座っても、鼠径部に強い痛みが生じます。坐骨骨折では、半腱・半膜様筋・大腿二頭筋により、骨折部は下方へ転位し、股関節の伸展運動ができなくなります。 ③ 治療
片側の恥骨や坐骨の単独骨折は、ほとんどは安定型骨折であり、高齢者などは入院することがあるものの、手術に至ることはありません。安静下で、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDが投与されます。
多くは、1週間の経過で歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが開始され、1~2カ月の経過で、後遺障害を残すことなく、症状は軽快しています。弊所でも認定例が無かったように思います。 ④ 後遺障害のポイント
シリーズの最後にまとめて解説しています。 ⇒ 骨盤骨折 ③
今年いくつか相談・受任を頂きました骨盤骨折について、交通事故110番から引用、シリーズで集中解説したいと思います。
一口に骨盤骨折と言っても、骨折箇所や様態を細かく分類して覚えておく必要があります。まずは、安定型と不安定型に2分、それに属する傷病名別に整理します。 【1】骨盤骨折・安定型
骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨で構成され、後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で融合して骨盤輪を形成しており、体幹の姿勢を支え、身体の要となっています。
骨盤骨折でも、内臓器損傷がなく、転位が小さい単独骨折では手術によらず、保存的に安静臥位で経過観察しています。深刻な後遺症とならないケースが多いようです。 (1)腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)
① 病態
腸骨翼は、腰の両横にあって、ベルトがかかる部位です。腸骨翼は、前方、後方、側方からの衝撃で骨折しており、出血を伴わないものは、軽症例です。
② 症状
骨折部の強い痛み、歩行すると痛みが増強します。
③ 治療
ドーヴァネイ骨折(ドゥベルネ骨折と言う医師もおりました)とも呼ばれていますが、入院下で、安静が指示されますが、1週間もすれば、歩行器使用によるリハビリが開始され、1~2カ月で後遺障害を残すこともなく、軽快しています。
④ 後遺障害のポイント
シリーズの最後にまとめて解説しています。
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