最近の相談者さんとの会話から、ふと思いました。 事故のケガによって、会社を長期間休んだ場合と、会社をあまり休まなかった場合を比べての話です。この比較は、14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定に限ります。それも、骨折等、明らかな人体への破壊がないケースです。どうも、会社をあまり休まない人の方が認定が良い傾向に思います。被害者毎に、症状の重さ、職務内容が違いますので、単純比較が難しく、統計数字にできない点はご容赦頂きたいと思います。    痛みや不具合が改善せず、受傷から半年後に後遺障害申請をします。14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定される方と、非該当となる方に分かれます。その決め手について、ネットでも侃々諤々、様々な説明がされています。診断書の書き方やら、神経学的所見やら、通院日数やら・・どれも参考にしつつも、勝負を決める要素は一つではないと思います。そして、秋葉事務所が毎度訴えていることですが、それらの要素以上に、① 受傷機転や、② 症状の一貫性、を含めた③ 信憑性に尽きると思っています。    ① 受傷機転とは、どのような事故状況で、どのような衝撃を受け、どのようなダメージが残ったのか、審査では、これらを重視していると思います。対向車とすれ違いざまサイドミラーがこすった程度では、「それで、どうやってケガしたの?」と思われるのが普通です。バンパー交換程度の軽い追突も同様です。自賠責は、被害車両の修理費から、大破・中破・小破と分類します。小破では軽く見られて当然です。説得力のある衝撃かどうか、検討されているはずです。「この程度の衝撃で、生涯に渡り残る症状になるのか?」・・まず、常識判断をしていると思います。。   ② 受傷から症状固定まで、”診断名と症状が一貫しているもの”が認定の対象です。治療中、あっちも痛い、こっちも痛くなったと、部位が増えたり変わったり・・こうなると、事故による受傷か、そもそもの既往症か、はたまた二次的症状か、直接因果関係がわからなくなるからです。

 治療する部位が増えていくこと、かつて接骨院等で目立ちました。接骨院では、部位ごとに施術期間と施術料を設定しますので、1部位3か月が過ぎると、次の部位が無いと施術が終わってしまうので、次々と部位が増える現象を起こします。最近は「部位渡り」は厳しく見られるようになったので、減ったようです。   ③ 最後に信憑性ですが、打撲や捻挫では、一定期間で腫れや炎症が引くことが普通です。骨折等と違い、画像や検査数値など、明確な証拠・データが残りません。神経学的所見も、完璧に異常所見が揃う事の方が珍しいのです。すると、せいぜい治療日数しか参考になりません。これら、すべての状況から認定を決めるのは、結局のところ人です。自賠責保険・調査事務所の人間が調査・判断をしているのです。彼らはAIではありません。そして、14級9号は、「医学的に症状の説明が可能」な場合に認定されるもので、AIの審査にもっとも馴染まないと思うのです。    仮に、受傷機転はまあまあ重大事故で、頚椎捻挫の診断名は終始変わらず、通院日数も十分あり、後遺障害診断書もそれなりに的確・・・でも、その被害者さんが保険金詐欺の常習者だったら、自賠責ご担当は認定をためらうはずです。そこまで、極端ではなくとも、事故現場で怒鳴り散らし大騒ぎ(すごい元気です)、救急搬送されず3日後にやっと通院(その後、何故か急に悪化して毎日通院)、物損交渉でも、保険会社ともめにもめて、休業損害証明書も大盛請求(職場とグル?)・・このような、賠償意識の高すぎる被害者さんも、その症状は大げさ、保険金目当てと思われて然りです。また、長引く通院に業を煮やした保険会社(任意保険)が病院に医療照会をしたところ、医師が「大したことはない」、「改善傾向」などの回答をした場合、それが自賠責保険の後遺障害審査に伝わる可能性を否定できません。

 そして、冒頭の話に戻りますが、打撲・捻挫ながら会社を何か月も休む・・やはり、大げさに取られかねません。たくさん休んだ方が、症状が重いとアピールできると考えているのでしょうか。一方、仕事中、「痛い痛い」と言いながら、頑張って会社帰りに通院している方もおります。そもそも、まともな会社であれば、”むち打ち程度”で何日も休めるはずがありません。がん手術した人でさえ、部位や程度によりますが、1月程で職場復帰しています。大体、打撲・捻挫程度で何カ月も会社を休んだことなど、人生で「ない」はずです。どちらの被害者が訴える「痛い」が信用されると思いますか? (もちろん例外はあります。強度の頚部神経症状から、さらに職種によって、数か月休業を強いられる被害者さんも稀に存在します)。    審査基準にでてくる言葉で、「故意の誇張」があります。大げさや保険金目当てなど、賠償意識が高いあまり、故意の誇張と判断されたら認定はありません。14級9号の審査、突き詰めると「人間性」が決め手になると思えてなりません。だからこそ、被害者さんに対して「いい子にしていなければ、訴える症状が信用されなくなりますよ」と強弁しているのです。  

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脳脊髄液減少症

   脳脊髄液漏出症 → 脳脊髄液減少症 → 低随液圧症候群 ・・呼称も変遷しています(順番はさだかではないですが)。タイトルは一番馴染み深い(たくさんの相談者がみえられた)、「脳脊髄液減少症」としました。

 この症例の変遷ですが、平成24年6月厚生労働省により「脳脊髄液漏出症の疾患概念と画像診断基準」がまとめられ、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)が先進医療扱いに定められました(お医者さんが儲かる自由診療ですね)。さらに、平成28年4月脳脊髄液漏出症に対して、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)が保険適用となりました。   (1)症状

 脳脊髄液腔から脳脊髄液(髄液)が持続的、もしくは断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴り、視聴覚機能障害、倦怠などが生じます。一連の神経症状はバレ・リュー症候群とよく似ています。それ等の症状は、横になっているときは軽減していますが、座位・立位で苦痛が増大するようです。

 画像診断についてはMRI、ミエログラフィーなどがありますが、参考的な所見に留まります。より精度を高めるには、RI脳槽・脊髄液腔シンチグラムのような専門的な手法がとられるため、確定診断も非常に稀な病態です。    診断基準について詳しく 👉 脳脊髄液減少症(CSFH) の診断基準   (2)治療

1,まずは保存療法、そして輸液(生理的食塩水/血液)を行います。食塩水や血液を使い、硬膜に外側から圧力をかけて髄液の漏出を抑えます。   2,専門外来の多くで主流となっている、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)が施行されます。自身の血液を20~30CC採取して、脳脊髄液の漏出部分に注射します。簡単に言いますと、かさぶたで漏出部を塞ぐのです。専門外来として、その筆頭は山王病院で、ここ数年、ブラッドパッチを実施する病院はかなり増えました。ある病院のHPによると、ブラッドパッチの効果として、「2割が回復、5割が改善傾向、3割が効果なし」との統計を発表しています。リスクとして、硬膜外に血糊を入れるのですから、硬膜外血腫を指摘されています。回数を1~3回に留めている理由と思います。   (3)後遺障害

 そもそも、医学的に研究年月も症例も少なく、病態の存在自体を疑問視する医師も多いのです。一部の医師が積極的に臨床先行で治療・研究を推進していますが、傷病名が変わる度、健保扱いが変わったり・・どうも政治的な臭いもします。

 診断基準も厳しく、それに合致する患者はごくわずかです。自賠責保険としては、直接の診断名からの認定ではなく、神経症状の一環として、14級9号の判断でお茶を濁しています。

 その為か、後遺障害認定のために活動する団体がいくつか設立されました。主に宗教団体後援のグループが多いようです。症状に応じて、就労が困難となる7~3級や、介護状態の1~2級を訴えるのです。ただし、エビデンス(医学的な証拠)や他覚的所見に乏しいものですから、自賠責は高い等級の認定はしません。もっとも、訴える患者の数が減ったのか、最近はその活動も下火になったように思います。

 自賠責や労災で認定されない場合、裁判での判断になりますが、認定された判例は少なく、賠償金も3~5割減額など灰色解決的なものが多くを占めています。医者がわからないのだから、裁判官もわかるはずがないのです。    交通事故相談の現場では、病名が独り歩きしているのか、第一に「低髄圧液症候群です」、次いで「MTBIです」、「RSDかも?」と、自己診断する方が後を絶ちません。どうも、心身症っぽい?と見受けられる被害者さんも多いのです。その場合、私達の仕事の範囲を超えます。14級9号をとって、相応の解決を図ることが限界なのです。数年前は、脳脊髄液減少症の訴訟に注力する弁護士先生を見ましたが、結果が芳しくないのか、次々に撤退したように思います。    世の中には、現代の医学が追い付かない、難病・奇病が少なからず存在しているのです。

 

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 胸郭出口症候群、脳脊髄液減少症・・むち打ちの分類から外れますが、むち打ちを契機に、これらの診断名が付けられる被害者さんも多いものです。「むち打ち」を広義に捉え、解説に加えたいと思います。   

胸郭出口症候群

(1)症状

 頚部痛だけではなく、主に片側の上肢にしびれと冷感が生じます。人によっては、肩こり、倦怠感、様々な症状を起こします。症状はかなり広範囲のようです。

 原因ですが、少し長くなります。腕の神経は頚部から両上肢に左右にそれぞれ5本ずつ走行しています。その通り道に、胸の鎖骨下、第一肋骨に前・中・後斜角筋、斜角筋、鎖骨下筋、小胸筋が存在しています。 それらの組織の損傷、変形で血管や神経の通り道が狭くなり、血管や神経が圧迫されたり、引っ張られたりする結果、知覚鈍麻・筋力低下の神経障害が発生してくるのです。

 神経根型は頚椎の位置によってしびれる箇所が分かれますが、胸郭出口症候群は肩の動きや角度でしびれが変わることが特徴です。

 ただし、胸部の組織が、必ずしも事故の衝撃で壊れたとは言えません。加齢に従って変性をきたすケースが普通だからです。それが、事故の衝撃をきっかけに発症するのですから、損害賠償上、ややグレーな印象となります。   ◆ 引き金論

 むち打ちによる障害、その全般がグレーと言えます。事故を契機に発症し、その後半年、症状の一貫性があれば、元々の変性があったとしても、事故の衝撃で何等かの神経障害が惹起されたはず・・・。「事故が引き金となった障害」、私達はそう解釈しています。    (2)検査と治療

 簡単にできる検査は以下の通りです。

  〇 Morleyテスト  鎖骨上窩を圧迫すると、上肢が痛みます。   続きを読む »

 そもそも、むち打ちは自覚症状(痛み、しびれ等々)のみで、画像所見は不明瞭、神経学的所見もあいまい、医師も「頚椎捻挫ですから安静にしていれば治ります」となるケースが多いのです。これが保険会社が「賠償病」と暗に軽視する理由です。

 しつこく症状を訴える患者に対し、医師も最後には「精神的なものです」と言って心療内科への紹介状を渡します。医師も保険会社も、はたまた家族も、誰も自身の症状を信じてくれません。この段階で「どうしたらいいでしょうか?」と、相談者が後を絶ちません。お気持はわかりますが、その境遇を打開するのは自分です。つまり、正しい診断・治療へ辿りつく努力が必要です。    

バレ・リュー症候群

(1)症状

 例えば、痛み・しびれはもちろん、めまいやふらつき、頭痛、吐き気、耳鳴り、不眠、疲れ易い、ぼーっとするなどの異常が長期間に及ぶ場合、バレ・リュー症候群の可能性があります。

 

 1925年にフランスの神経学者バレ博士が、「頚部の疾患、外傷でありながら頭部や顔面に頑固な自覚症状を訴える症例があり、これらの症例は頚部の交感神経機能と密接な関わりを持つ」と発表したものです。さらに「深部交感神経(椎骨神経)が責任部位であり自覚的所見が症状のほとんどを占める」と続きます。つまり「自覚症状だけ!?」なのです。そんな無責任な!と言いたいですが、バレ博士の教え子リュー氏(だからバレ・リューか!)が多くの症例を集め研究を引継ぎましたが、完全解明されず現在に至ります。臨床上、その存在は知られていますが、原因や根治療法は確立していません。   (2)治療

 これは整形外科の分野から外れます。牽引や電気治療を続けても効果は望めません。早めに神経内科、ペインクリニック等専門医に診てもうらう必要があります。症状の緩和には神経ブロック(※)が有効です。その種類・方法は専門医に判断を仰ぎます。

 硬膜外ブロック、K点ブロック、星状神経節ブロックなど、注射を打つ場所は頚部になります。薬剤はキシロカイン、カルボカイン等の麻酔薬が主で、この注射は神経科の領域になります。最近では、ペインクリニックの呼称で個人開業医でも施行しています。    ※ 神経ブロック 👉 神経ブロックとは?     受傷直後は安静が大事ですが、過度の安静は頚部・肩関節の関節拘縮や、抑うつ傾向によって痛みを強めてしまうので、ポリネックでの固定は避けたほうが良いとされています。この辺が、単なる頚椎捻挫の治療と一緒にできないところです。   続きを読む »

【3】脊髄症型(正中型)

 椎間板や骨棘が、脊髄を圧迫するものです。左右の神経根への圧迫と区別して、正中型とも呼ばれます。   (1)症状

 事故後、頚部痛どころか、上肢や下肢までひどい”しびれ”が生じている場合です。例えば上肢については、両手で顔を洗うときに両手が上手く動かない、ボタンがかけずらい、歯ブラシが上手くできない、ボタンがはめられない・・。下肢については、しびれで長時間の歩行でだるさを伴い、階段昇降で痛みが走る・・。神経根圧迫であれば片側の上肢のみに症状がでることに対し、両上肢、あるいは下肢にまで及ぶ場合、(重度の)脊髄損傷か(軽度の)脊髄症型を疑うべきです。   (2)治療

 まずレントゲンで頚椎の損傷がないか確認します。次いで、MRIでヘルニアの脊髄圧迫なのか、脊髄そのものに損傷があるのかを判断します。ヘルニアの圧迫であれば神経根型と類似の治療となります。脊髄に損傷がある場合、必ずT2(高輝度所見)で撮影します。この場合は脊髄に不自然に白く光る病変部が移ります。造影剤を使うこともあります。脊髄に高輝度所見が現れた場合、脊髄損傷は確定的です。これは、「むち打ち」どころの騒ぎではなくなります。

 受傷直後は安静が第一ですが、積極的な処置として、やはり神経ブロックが有用です。症状に応じて硬膜外ブロック、星状神経節ブロックを選択します。このブロック注射は手術扱いで点数(治療費)の高さから、一部の整形外科で積極的に採用しています。しかし、腕の差がかなりでる技術なので医師選びが重要です。

 医師によっては、ステロイド治療に積極的です。副作用が強い薬剤なので、自身の症状と比べて、慎重な判断が望まれます。

 画像に現れるほどの脊髄損傷ならば、残念ながらほぼ不可逆的です。神経線維の切断された脊髄は、手術での回復は見込めません。最新の電極を埋め込む術式(脊髄刺激電極埋め込み術)も、完全ではありません。

 対して、脊髄圧迫に留まる場合でも、麻痺が進行しているケースでは手術適用となります。前方固定術が代表的で、この手術は脊髄を圧迫している椎間板を除去し、腸骨の骨片を空いた隙間に埋め込みます。こでれ、脊柱の隙間が広がり、脊髄への圧迫が除去されます。脊柱管狭窄症でも、この術式が用いられます。これも、執刀する医師により判断したいところです。 続きを読む »

【2】神経根型

   神経根型とは、上図のように脊髄から左右に派生する、神経の通る鞘(さや)に、椎間板や骨棘の圧迫が生じる状態です。左右両方への圧迫もありますが、多くは左右どちらかの圧迫で、圧迫側の上肢に放散痛(腕を走るようなビリビリしたしびれ)が発症します。スパーリングテストとは、わざと首を横に倒して、神経根への圧迫を強め、その放散痛を誘発させるものです。

右に倒すと、右腕~指がビリビリ

 これは、左右の神経根が鎖骨下の上腕神経を経由して、腕の3本の神経(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)を経て、指先の抹消神経までつながっているからです。このように、通常の頚椎捻挫に比べて、神経症状が明らかに説明できます。     (1)症状

 肩から手指にかけてしびれを自覚します。首を曲げるとピリピリとした感覚が走ります。先の説明の通り「放散痛」が主な症状です。この状態はMRIで視認できます。薬は単なる痛み止めから、神経性疼痛に対処する「リリカ(プレガバリン)」に変更されます。それでも効かない場合、「トラムセット」など、オピオイド系(麻薬の成分入り)になります。    神経性疼痛の痛み止め薬 👉 続きを読む »

(0)エピローグ

 最初に「むち打ち」被害に遭った被害者さんに、むち打ちの概要と、解決までの道筋を説明します。     交通事故外傷の実に60%は「むち打ち」です。「むち打ち」とは俗称であり、正式にはいくつかの病態に分かれます。いずれも、治療方法が確立されたとは言い難いもので、その理学療法は、電気治療、牽引、ホットパックなど、対処療法の域をでません。痛みには、痛み止め薬が処方されます。また、徒手による整復、マッサージも有効です。頚部~肩への過緊張をとることも改善につながります。この施術、整骨院・接骨院が人気の理由と思います。     多くは安静を続ければ、一定の回復が図れます。よって、保険会社は3カ月で治療費を打ち切る算段をしています。また、仮に後遺障害14級9号が認められても、逸失利益(将来にわたる損害)を2~3年と少なくみる理由は、「いずれ、むち打ちは治るのだから・・」です。    確かに、被害者意識と相まって、症状を重く感じ、治療が長期化するケースは多いものです。被害者さん側も、ある程度の治療を経て、それでよしとする潔さは必要です。ただし、一定数の方は単なる打撲・捻挫と言った筋肉の炎症に収まらず、頚部神経への衝撃から、神経症状に陥ります。すると、痛みに留まらず、上肢のしびれ、頚から肩にかけて重だるい、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、疲労感など、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる「なんだか調子悪い」状態が数か月続きます。    それでも、相手損保は何か月も治療費をみてくれないでしょう。だって「たかが捻挫」と思っているからです。およそ、3カ月での打ち切りを予定しています。その場合、”単なる捻挫ではない神経症状”を訴えて、なんとか6カ月までみてもらい、症状固定とします。すぐさま後遺障害を申請、14級9号の認定を得ます。14級とは言え、弁護士に交渉を依頼すれば、主婦でも300万円を超える賠償金になります。その後、自費、あるいは健保で治療をするには、十分な資金を確保できるのです。     損保と延々と治療費を巡って争うことに「利」はありません。「離」あるのみです。予後の治療費を賠償金で確保、つまり、実利ある解決に舵を切ります。一日も早く交通事故を終わりにさせ、平穏な日常生活を取り戻すのです。いつまでも被害事故に捕らわれる日常こそ、最大の損害と思います。    対する相手損保の担当者も、早期に治療費を打切り、解決させたいのです。解決のスピードこそ、保険会社の優先事項だからです。    さて、「むち打ち」の症状は病態によって大きな幅があります。数日で軽快する軽傷から、手術を要する重症まで、症状の個人差もあり、その差は広大です。まず、自らの病態を把握し、適切な医師の治療を受ける必要があります。併せて、症状固定時に間違いのない後遺症診断と、後遺障害・等級認定が得られるよう、周到に計画・準備をします。

 その後、交通事故に長けた弁護士に委任して交渉解決、あるいは「交通事故紛争処理センター」の斡旋で解決させます。速やかに交通事故から卒業しましょう。  

【1】頚椎捻挫型

(1)症状

 多くは追突事故を受けた後に頚部に違和感が生じます。当日はレントゲンで「骨に異常ないですね」と言われ、痛み止めの薬(ロキソニン、カロナールなど)、湿布やモーラステープ、ロキソニンハップが処方されて帰ります。翌日~3日後位になると、痛みに加え、こわばり、肩が重だるい、腕から手指にかけてしびれを感じるようになります。    薬 👉 ロキソニン 湿布&モーラステープ   (2)治療

 安静が第一です。無理に動かしたりせず、痛みが和らぐのを待ちます。町の整形外科で理学療法を続けても良いでしょう。   (3)後遺障害

 医師や保険会社の言う通り、多くは「治る」ものです。したがって、週1回リハビリに通った程度では後遺障害とはなりません。もし、1か月経っても症状が軽減しない場合、早期に【2】神経根型、【3】正中型~の病態を疑い、その際、MRI撮影をして下さい。普通、個人開業医にMRIの設備がありませんので、紹介状を頂いて、総合病院での検査になるはずです。

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 前回まで、自動車事故の衝撃度を表す上でよく使われる「ビルからの落下・計算」を説明しました。ケーススタディを重ねましょう。今度はバイクが衝突した場合です。   3、自動車にバイクが追突した場合  

 Cさんは原付バイク(ヤマハ 車体重量90㎏)で走行、信号待ちのハイエースバンに追突してしまいました。原付なので時速30kmが制限速度です。まぁ、これを守っていたとして30kmとします。修理費はバンパー交換+αで20万円でした。修理費は問題なく保険で支払いました。しかし、ハイエースのドライバーDさん、むち打ちとなって毎日通院を始めました。治療費を払う損保は「3カ月まで!」と、業を煮やして治療費を打切りました。不満のDさんに対して、損保は以下の計算を示しました。    それでは、ハイエース(車体重量1960kg)の受けた衝撃を計算してみましょう。    時速30km ≒ 秒速 8.3m の場合では、    8.3m × 8.3m  ÷ ( 2 × 9.8 )= ...

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 シリーズ再開! かつて相談会に参加した相談者さまの実例から計算してみましょう。    その前に、2019年10月にシリーズ化したまま途絶した前回記事は以下の通り。

👉 受傷機転について、その衝撃を科学する ② 自動車事故の衝撃度   

1、自動車の単独事故 ~ 壁に衝突した場合

 Aさんは小型自動車(日産マーチ 940kg)で壁に衝突、つまり自爆事故で負傷しました。その時のスピードは30kmだっだったそうです。マーチは全損となりました。シートベルトをしていなかった為、フロントガラスに顔面を強打、10針を縫うケガに。6か月の通院の後、後遺障害は醜状痕の9級16号、頚椎捻挫14級9号が認定されました。

 どの位の衝撃か、例の「ビル落下衝撃度」から計算してみましょう。   ○ 時速36km = 秒速10m/s の場合・・・5.1mの落下衝撃となります。

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 受傷機転とは、「どような事故状況で、どのように受傷部位に衝撃が加わったか」を説明したものです。これを、自賠責保険の後遺障害審査では非常に重視しています。受傷部位・診断名ごとにその理由を説明します。本日は毎度毎度のむち打ちです。      交通事故外傷の実に60%はむち打ちです。正式には、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、頚椎症などの診断名になります。これは、歩行中、自転車・バイク搭乗中でも頻発しますが、何と言っても代表的なケースは追突です。追突の衝撃によって、首が急激に前後に振られて痛めます。多くは、捻挫ですから、安静と消炎鎮痛処置を続ければ、痛みは軽減します。通常の捻挫であれば、後遺症などは残りません。しかし、頚椎は体幹部でも細く脆弱ながら、脊髄の神経を中心に、神経根~末梢神経など神経のターミナルです。これらに衝撃が加わると、しつこい神経症状を惹起することがあります。神経症状となれば、捻挫の腫れが引いても、上肢へのしびれ、頭痛、めまい、耳鳴り、不定愁訴、諸症状が長引く原因とされています。  しかし、保険会社はそれら目に見えない症状に、いつまでも耳を傾けてはくれません。打撲・捻挫の症状は、せいぜい3か月と基準しています。したがって、治療費支払いの延長には、単なる捻挫ではない神経症状を信じてもらうしかありません。それには、医師によるジャクソン・スパーリングテスト、腱反射など、またはMRI画像における神経圧迫所見など、他覚的所見を示さなければなりません。経験上、それらが明確であれば、自賠責の後遺障害認定にも有利に働きます。ところが、それら他覚的所見がほとんどみられない被害者さんが大多数なのです。つまり、本人が痛いと言っているだけで証拠がない。これが、交通事故外傷・むち打ちにおける最大の問題となるのです。

 「被害者は、被害者意識から大げさに症状をまくし立てる」と保険会社は確実に思っています。そのような相手に、いくら痛い、つらいと言っても、信じてもらえるでしょうか? ここでも受傷機転が大きく関与することになります。例えば、同じ追突でも、ノーブレーキの大型トラックに突っ込まれ、小型車が全壊、バールでドアをこじ開けて、救急搬送された場合・・これは大ケガだと推定されます。交差点で横っ腹に突っ込まれ、自車が横転した場合も大ケガの範疇です。むしろ、骨折なく、むち打ちで済んでよかったと思います。これなら、通院が長期化しても、保険会社の支払いは優しいものです。自賠責の後遺障害も、リハビリ通院が一貫して半年続けば、14級9号を認定し易くなります。

 一方、信号待ち停車中、後ろの軽自動車がブレーキから足を離したため、コツンと衝突、修理費はバンパー交換程度の10万円。誰がどうみても大ケガをしたとは思ってくれないはずです。駐車場内(低速度)で、車の角がちょこんと当たっただけ、直進道路で割り込みされて、左前のフェンダーをこすっただけ・・・大した衝撃ではないはずです。中には、すれ違いざまにお互いのサイドミラーがこすっただけで、入院した被害者さんもおりました。もちろん、これらは詐病者扱いされます。軽い衝撃でも、心配なので数回通院した程度ならOKですが、3か月以上も通おうものなら、保険会社は治療費をきっぱり打ち切ってきます。それでも、文句を言えば、弁護士を立ててくるでしょう。これを保険会社の横暴と思いますか?    確かに例外的に軽度の衝撃でも、不意打ちに弱い人体ですから、頚部に神経症状が起きることはあります。それらレアケースでも、保険会社は(どうせでない)明確な他覚所見を要求します。仮に頑張ってリハビリを半年続けて、自賠責に後遺障害の申請をしても、14級認定は絶望的です。最近も、提出後、自賠責保険・調査事務所から、「物損の見積もりを提出してくれませんか」と追加要請が入り、10数万円の見積もりを提出した瞬間、非該当と通知がきました。やはり、受傷機転をみています。車同士の場合は、衝突の衝撃程度=修理費でまず予断しています。そもそも、自動車搭乗中の受傷事故の場合、調査の第一歩は修理費の確認です。大まかに大破、中破、小破の3段階に分けています。小破の場合、その程度の衝撃で具体的にどのように痛めたのか、厳しく審査されるわけです。  

 「その程度の衝撃で、何か月も通院するケガのわけはない。被害者はいつも大げさだ」と思われても、仕方ないと言えます。稀に、軽度の衝撃に関わらず、神経症状が重い場合は、専門医の診断と検査を重ね、自ら立証しなけらばなりません。むち打ち裁判の多くは、明確に勝訴の判例は少なく・・自賠責が認めなかった「軽度の受傷機転」に裁判官も傾くようです。    自賠責保険は、まず常識で判断しているのです。    中には、不幸にも軽度の衝撃ながら、神経症状が重度化してしまった被害者さんもおります。その救済は、私達も大変です。あらゆる検査、検証を加えて、自賠責保険にすがりつくような申請を試みます。この場合、多くは受任せず、諦めるよう言います。可能性のある方だけ受任、頑張っても30%程度の勝率です。どこの事務所でも、受任するか否か、非常に迷うのです。  

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 昨日の実績投稿の解説に付随して、保険会社が定める治療期間について、意見を加えたいと思います。

 

90日後に打ち切られる被害者

   交通事故で被害者となりました。診断名は頚椎捻挫、いわゆる、むち打ちの類です。相手の保険会社は治療費を病院に直接払ってくれます。これを「一括払い」と呼んでいます。被害者さんは治療費の立替なく、安心して通院できます。そして、2か月を超えた頃、「症状はいかがですか?」⇒「そろそろ、治療は終わりませんか?」⇒「弊社としては3か月をもって治療費の対応を終わりたいと思います」・・このように、3か月の治療費打ち切りを徐々に切り出してきます。

 一方、被害者さんがそれまでに治れば、何ら問題はありません。しかし、中には神経症状がしつこく残り、理学療法を継続したい方もおります。そこで、「ふざけるな!治っていないのに打ち切りとは何事だ!」とケンカになります。治るまで治療費を払わせることは、被害者の当然の権利だと思っているのです。しかし、それは当然の権利ではありません。保険会社にしてみれば、便宜上、一括払いをしているに過ぎません。これは、裁判できっちり白黒ついています。保険会社は独自の判断で、いつ治療費を打ち切ってもなんら罪はないのです。

 もちろん、治療費支払いの継続を巡って争うことはできます。しかし、勝ち負け定かではなく、半年以上かかるかであろう裁判へ・・現実的ではありません(現実にやる被害者さんもおりますが)。その間、決着がつくまで、当然に治療費は自腹です。ここで、被害者さん達は、「100日後に死ぬワニ」ならぬ、「90日後に打ち切られる被害者」となります。

 

打撲捻挫は3か月間! の理由とは?

   3か月とは実にざっくりした数字です。患者個々に症状の程度は違います。症状の軽重や、患者の都合から、期間を一定に類別すること自体に無理があります。しかし、そんな悠長に考えていては、保険会社の仕事は進みません。SC(支払い部門)の職員によると、整形外科の医師が想定する、傷病名からの平均治療期間を定める基準が存在し、それを根拠に判断しているとのことです。どこどこの骨折の場合は〇か月等々、その資料をみたことがあります。十把一絡げ(じっぱひとからげ)の基準ですが、一応、臨床を重ねたデータから医学的に定めたものです。これを建前とします。

 では、根拠はそれだけでしょうか? 実は、任意保険会社(以下、任意社)の一括払いとは、治療費や休業損害、傷害慰謝料など支払った分は、自賠責保険からきっちり回収できます。つまり、その限度額である120万円までは、任意社のお腹は痛まないのです。すると、120万円まではわりと鷹揚に治療期間をみますが、休損や慰謝料を含めた金額の合計が限度額に近づく・・その期間がおよそ3か月であることに気が付きます。私は、SC勤務の経験のある秋葉は、任意社の本音はここにあると思ってしまうのです。

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 保険会社は無制限に治療費を払ってくれるわけではありません。被害者さんのケガの診断名や受傷機転(どのようにケガをしたのか)など、客観的な事実から、相当する治療期間を判断をしています。私は、この保険会社の姿勢を直ちに批判する気はありません。医者でもない保険会社社員こそ、平均値から判断せざるを得ないと思います。しかし、物事は平均的な基準では測れないことが多々あるものです。交通事故での典型例は、何と言っても「むち打ち」です。

 同じような受傷機転(どのように受傷したのか)、医師の下す同じ診断名でも、症状の個人差は絶大にあります。ある人はまったく病院に行くこともなく無症状です。また、仕事が忙しく通院できないと、湿布を貼って治す方もいます。そして、頚部の神経症状が惹起され、上肢~手指のしびれが収まらず、それこそ、半年から数年にわたって症状に悩まされる方も存在するのです。一方、大げさに症状を訴えて、慰謝料増額を期してか長期治療を画策する悪い人も少なくありません。そもそも、傷病そのものに対して、年齢、性別、体質、既往歴など、個人差があって当たり前です。

 このように千差万別の患者さんは、同じ程度の衝撃でも生まれるのですから、個々にその治療期間を断定するなど、端から難しいのです。

 それでも、治療費を払う側の保険会社は、むち打ち患者全員に一定の基準を押し付けてきます。打撲・捻挫の平均的な治療期間はおよそ3か月とみています(この3か月説に関するよもやま話は、明日の記事で追補しようと思います)。この治療費打ち切りの打診に、症状が残っている患者さんは大パニックです。でも、決して慌てる必要はないのです。本例のように、健保に切り替えて粛々と治療を続け、自賠責保険の後遺障害審査に付して、ここで症状を認めてもらい、後遺障害慰謝料と逸失利益(10年以上通えるほどの治療費に匹敵します)を確保すれば良いのです。

 さらに、14級認定となれば、途中から自腹だった治療費も取り戻すことが容易です。弁護士が、「後遺障害が認められたのに治療費を打ち切って・・保険会社(担当者)の判断ミスでしたね」と言えば足りす。まさに、大逆転の解決になります。

 治療費を巡って保険会社とケンカするなど、時間の無駄、愚の骨頂なのです。      治療費など些細な金額です。後の賠償金で取り返せばよいのです  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代男性・神奈川県)

【事案】

信号のない交差点で、一時停止無視の自動車と出会い頭衝突、首と腰を痛め通院するも、事故から三か月目に保険会社から治療の打切りをされる。

【問題点】

事故車の損傷度合いから、軽度な事故と判断されてもおかしくはなかった。保険会社から早めに治療の打切りを打診される予想から、早めに弁護士を介入する必要があり、契約を急ぐも、本人の都合が合わずになかなか弁護士介入が出来なかった。

そうこうしている内に、3ヶ月目で治療費一括対応の打切りを宣告され、ご本人から慌てて連絡が入った。

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 交通事故・科学の教科書において定番の、「ビル落下時の衝撃」から説明しましょう。

 自動車が衝突したときの衝撃について、そのスピードから換算すると以下の図のようになります。<『図解 交通資料集』立花書房より >・・いつも、参考にさせて頂いています。

 例えば、時速60km/hで壁に激突した場合、ビル4階(およそ高さ14m)から地面に落下した衝撃と同程度の衝撃となります。高速道路で80kmを超えるような追突だったら、車ごと人間も潰れてしまいそうです。逆に渋滞中、ブレーキから足が離れたクリープ走行で追突された場合、せいぜい10km以下ですから、衝撃はバンパーで十分吸収できます。つまり、大したことない衝撃となるはずです。  

 計算式は以下の通り。時速36km(秒速10m/s)の場合です。40キロに満たなくとも、すごい衝撃となります。

※ 空気抵抗を無視した計算です。考慮すると衝撃は少し下がります。    空気抵抗を加えると文系の私では手に負えない計算式となりますので、大よそはこの計算から衝撃度を想定します。このような計算は、弁護士が裁判で事故の衝撃を立証する際、用いられる科学的根拠=理屈です。加害者側保険会社においても、物損損害でもめた場合(自動車がそんなにひどく壊れたのか?)、アジャスターの損害調査に加えて、科学鑑定を依頼する場面に登場します。

 被害者の医療調査を請け負う私達も、知っておくべき知識です。もっとも、自賠責保険側が考える”衝撃度”の検討は、被害車両の修理額から小破・中破・大破でおおまかに分類、判断していると推測しています。当然、「少破程度の被害から、むち打ちで後遺症になった」としても説得力は下がります。

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 むち打ち・打撲捻挫の類は、骨折などの明らかな人体の破壊がないので、普通、その衝撃はそれほどでもない、大したケガではないと判断されます。

 相手保険会社は「打撲捻挫など腫れが引けば治るもの」と考え、3ヶ月を超えるような長期通院に理解など示しません。早期の治療費打切りに及ぶでしょう。さらに受傷時の衝撃具合は、後遺障害認定における14級9号の判定に絶大な影響を与えます。「その程度の衝撃で後遺症を残すほどの重傷なの?」・・・当たり前の疑問です。

 このような受傷時の衝撃を説明するものが「受傷機転」です。どのように接触・衝突、事故となったのか、です。バンパー交換程度の軽微な追突、交差点の出会い頭衝突でもバンパーの角がつぶれた程度、二車線道路で割り込み車とフェンダーがこすった程度、これらの衝撃で何日も病院に通うなど、誰がみても大げさにみられるのです。

 ところが、打撲捻挫でも症状が長引く被害者さんも一定数存在します。保険会社の冷たい対応を受けてご相談を頂きます。ご依頼となれば、症状の証明に奔走、後の後遺障害立証についても全力でフォローすることになります。しかし、受傷機転だけは変えようがありません。私達の努力が及ばない部分なのです。

 かつて、すれ違いざまに対向車とドアミラーがこすっただけの接触事故ながら、頚椎捻挫で数ヶ月通っている被害者さんの相談を受けました。頚部痛のみならず、めまいと頭痛、不眠、肩こり、不安症も重なり、今でも過呼吸で倒れそう・・心療内科へ一直線です。さらに、視力低下、難聴、便秘、生理不順、夫婦仲の悪化や子供の教育問題まで、ほとんど更年期障害の症状はおろか、交通事故による家庭崩壊まで訴えるのです。そして、保険会社の(治療費打切りの)横暴を1時間に渡りまくしたてます。

 残念ながらいくら熱弁しようにも、受傷機転から訴える症状の信憑性を見出すことはできません。主治医も、もはや面倒な患者に関与せず、医学的な証明など程遠いところに行ってます。せいぜい心因性の関与しか診断できないでしょう。対応できるのは心療内科医か、はたまた心霊治療、悪魔祓いの選択です。保険会社の治療費打切りが至極当然に思えます。  

 連携弁護士も丁寧にお話を伺い、色々と対策を思案します。しかし、事故状況・衝撃から発症したその症状は、あらゆる自然科学、物理法則に逆らうスーパーナチュラル(超自然現象)なのです。治療費の請求など絶対に通りません。常識や科学に反した請求など、ダメなものはダメなのです。  

 大なり小なり、このような相談を何十件、いや何百件も受けてまいりました。当然、お力にはなれません。それでも、数件は真剣に検討したものです。

 それは明日以降に。  

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 最近、めっきり相談者の減った脳脊髄液減少症ですが、一昨年、健保治療が復活して名前も改められました。

 CSFH は、 Cerebro Spinal Fluid Hypovolemia の略語です。健保適用から自由診療、再び健保適用へと変遷にあわせて傷病名も変わりました。現在、脳脊髄液減少症は低髄圧液症候群に戻りました(現場では脳脊髄液漏出症も合わせ、主に3つの傷病名で呼称されています)。この謎の症例には以下の診断基準が存在します。

image2701   (1)症状(自覚症状)

起立性頭痛

 国際頭痛分類の特発性低髄液性頭痛を手本として、起立性頭痛とは、頭部全体に及ぶ鈍い頭痛で、坐位または立位をとると 15 分以内に増悪する頭痛と説明されています。

 CSFHを訴える患者さんは横になると症状が緩和されるそうです。また、応急処置として水分を取ることも有効のようです。点滴で体液を増やす?処置も多く目にしています。

体位による症状の変化

 国際頭痛分類の頭痛以外の症状としては、項部硬直、耳鳴り、聴力の低下、光過敏、悪心、これらの5つの症状です。しかし、多くの患者さんはこの5つに留まらず、あらゆる不定愁訴を訴えています。    (2)基準(他覚的所見)

MRIアンギオで、びまん性の硬膜肥厚が増強すること

 この診断基準は、荏原病院放射線科の井田正博医師が、「低髄液圧の ...

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 14級9号の文例を分析します。    調査事務所の調査結果について、自賠責保険窓口会社(名)で文章回答がなされますが、大量処理の為、テンプレート(文章のひな型)を少し改造して作成している様子がわかります。  

段落 本文 解説 結 論

自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。 結果は最初に書かれます。

理 由

前 段

頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、 これは主に後遺障害診断書の自覚症状に書かれていることを抜粋しています。また医師の診断内容を抜粋することもあります。

中 段

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では昨日の解答から。Aさんの認定結果の全文を掲載します。

  <結論>

 自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。   <理由>

 頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、提出上の頚部画像上、本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。    しかしながら、治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。    Aさんは14級9号が認められました。赤字の部分は先日の<理由>に続く後段です。画像や診断がはっきりしなくても、「局部に神経症状を残すもの」と推定された結果です。つまり症状を信じてもらえた?ということです。ではもう一つのケースを。  

ある被害者Bさん(40才 男性 会社員)のケース

 この方も同じく停車中、追突を受け、首を痛めました。痛みがひどいのでその日のうちに病院へ。そこで頚椎捻挫、腰椎捻挫の診断を受けました。翌日から職場に出社しています。やはり首の痛み、腰の痛みがひどく、市内の総合病院でXP(レントゲン)を撮っていただきましたが、骨には異常ないそうです。この総合病院へは月に1回通院し、あとは土日も開いている近所の接骨院で治療を進めました。

 ・・・6か月を超過する頃、相手の保険会社は治療費の打切りを執拗に迫ってきました。Aさんに同じく、仕方がないので症状固定とし、腰に比べてよりひどい頚部痛の残存を訴えた後遺障害診断書を医師に記載してもらいました。通院日数は40日を超えた位でした。そして同じように後遺障害等級の申請を行いました。

 待つこと40日、「結果」が文章で届きました。今度は最初から全文を読んでみましょう。   <結論>

自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。   続きを読む »

ある被害者Aさん(38才 女性 事務職)のケース

 OLのAさん、停車中に追突を受け、首を痛めました。痛みがひどいので直後に病院へ。そこで、むち打ち「頚椎捻挫」の診断を受けました。

 数日で仕事に復帰したものの、首の痛みや手先のしびれが治まりません。医師もムチ打ち程度と軽く考えています。しかし念のため神経症状が長引くことを心配し、MRIだけは撮っていただきました。しかし目立った病変、異常は画像に出ませんでした。

 その後も依然として症状は良くなりません。少し症状が楽になるので、理学療法(電気治療)だけは継続しました。仕事で毎日の通院はできませんが、土曜日や仕事帰りに近所の整形外科に通うことができたからです。

 ・・・6か月を超過する頃、相手の保険会社は治療費の打切りを執拗に迫ってきました。さすがにムチ打ちで長期間の治療は気が引けます。仕方がないので症状固定とし、痛みとしびれの残存を訴えた後遺障害診断書を医師に記載してもらい、後遺障害等級の申請を行いました。    待つこと40日、「結果」と「理由」が文章で届きました。理由の上段落を読んでみましょう。   <理由>

 頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、提出上の頚部画像上、本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。・・・・    ここで問題です。さて、この方、14級9号の認定はされたのでしょうか やはり非該当?   (答えは明日) ⇒ 後遺障害認定結果の文例 2  

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 レーザーを星状神経節近傍に照射することで、局所麻酔薬を用いての星状神経節ブロックに類似の効果をもたらすレーザーSGBについて。

※ SGB…stellate ganglion block  訳すると「星状神経節ブロック」です。現場の麻酔医は星状神経節ブロックと言わず、SGBと言っています。

■ レーザーSGB

 星状神経節ブロックと同じ要領で、第6または7の頚椎(C6またはC7)横突起のやや内側に(胸椎T1付近が正しい)、半導体レーザーのプローブを圧迫気味に当てます。照射時間は、60mWでは5分間、150mWで3分間、1000mWで1分間が目安です。レーザー照射により、頭頚部および上肢の局所温度上昇に伴い、疼痛の軽減、しびれ感の改善および患部の温感を自覚します。つまり、星状神経節ブロックに近似の効果をもたらします。

 神経ブロックとは異なり、ホルネルの徴候(縮瞳、眼球陥没、眼瞼下垂)の発現をみることはほとんどありません。また、ブロックではブロック側だけの局所温度上昇を認めますが、レーザー照射では両側の温度上昇がみられます。

 ブロックと比較して、レーザー照射の場合には、手技が容易で、合併症がなく、局所麻酔薬を用いないので薬物アレルギーの心配もありません。注射針を使用しないので痛みや恐怖感もありません。浦和のペインの先生から聞きましたが、女性は「早くブロック注射を!」と言いますが男性は「まずはレーザーで・・」との傾向だそうです。男性は度胸がないようです。

 レーザー照射の効果はブロックに比較すれば穏やかですが、効果の持続時間は、ほぼ同程度です。レーザー照射は、星状神経節ブロックの適応となる非定型顔面痛、緊張性頭痛、偏頭痛、群発頭痛、レーノー現象などの有痛性疾患、無痛性疾患である顔面神経麻痺、突発性難聴、鼻アレルギー、網膜血管閉塞症などに応用できます。高齢者や年少者に対する適応は大きく、頻回の治療が必要となる場合には、とくに有用な手段となります。

 開心術後患者などの抗凝固治療中の患者や糖尿病患者などでは、ブロックに伴う出血や感染が危惧されますので、レーザー照射が有用となります。     バレリュー症状がひどい場合、やはりブロック注射が望ましいと思います。しかしペインクリニックの現場では、まずレーザー+投薬で様子を見て、次に注射とする傾向です。    次回 ⇒ 腰部への神経ブロック    

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■ 自律神経について

 バレ・リューの代表的な症状、めまい、ふらつき、不眠、吐き気、耳鳴り、倦怠感はどのようにしておこるのでしょうか?これは自律神経の異常からおこる症状です。

 自律神経系には、交感神経系と副交感神経系とがあり、その中枢は間脳の視床下部にあります。呼吸、脈拍、血圧、体温、発汗、排尿、排便など、みんな自律神経によってコントロールされています。早い話、眠っているときでもちゃんと呼吸をして、心臓も止まらず、生命が維持できるのは、自律神経が働いているからです。

 交感神経と副交感神経は、拮抗的に働き、心拍数は交換神経が興奮すると早くなり、副交感神経が働くと遅くなります。運動している時=交感神経、休んでいる時=副交感神経、両者の関係はアクセルとブレーキに例えられます。 バレリュー症候群のしくみは自律神経の失調でも、とりわけ交感神経、副交感神経両者の異常亢進があげられます。つまり、アクセルとブレーキを逆に踏む、両方踏む状態です。日中は副交感神経が働き、だるくなり、眠りに入る時は交感神経が興奮して眠れない・・・。

 これらの悪循環を断ち切らない限り、患者の体力は奪われ、回復どころではなくなるのです。星状神経節ブロックは交感神経の異常亢進を抑え込むことを目的とします。星状神経節は胸から上の皮膚、内蔵の交換神経が集まっている、交感神経のバスターミナルのようなところです。ここの交通整理をすることで、自律神経の失調を回復させます。    つづく ⇒  レーザーSGB?  

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