手指の障害において、突き指は「変形障害」の起因となるケガの一つです。障害を残さぬよう、正しい処置が望まれます。今回は指の変形シリーズのまとめにもなります。   (1)病態

 突き指は、指を突いたときに指先から力が加わって、関節や靱帯、腱、骨などに損傷が加わることです。多くは、野球やバスケットなど、球技でボールを受け損ねて受傷します。また、ドアや壁などの固いものに指先を強くぶつけた場合でも起こります。つまり、交通事故外傷でもあり得ます。

 その突き方や強さなどによって、症状もさまざまであり、ケガそのものの状態も捻挫程度から脱臼や骨折までとさまざまです。手指の正常な状態では、上側に伸筋腱、下側に屈筋腱、関節の左右には、内・外側側副靱帯があり、それぞれ連結して、指の可動域を確保しています。骨折や靱帯損傷などの場合は関節が変形したり、後の動きに支障が出たりということもあるので、正しい処置が必要になります。昔はいい加減でした。冷やすだけなら良いのですが、曲がった指を無理やり引っ張るなど、間違った処置がされていました。これは靭帯に悪影響でしかありません。     (2)治療

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(1)病態と治療

    このサインは、国によって意味が異なります。英語圏では「幸運を」との意味が主流ですが、ギリシャでは「くたばれ」の意味だそうです。一説によると、日本の一部では「チョメチョメ」との意味でも使われるそうです(おそらく、昭和の山城 新伍さん由来?)。ここでは、骨折後の変形として話を進めます。

 患指がとなりの指の下側に潜り込むことを、クロスフィンガーと言います。示指中手骨骨折部が回旋した状態で骨癒合したことが原因です。通常は骨切り術で対応します。再骨折させ、指を曲げたときに重ならない位置に整複して、ミニプレートなどで固定する手術です。   (3)後遺障害のポイント

 クロスフィンガーにおける後遺障害についてですが、手の専門医の骨切り術でクロスフィンガーが矯正されれば、後遺障害を残しません。また、クロスフィンガーによる後遺障害は、等級認定表に定めがありません。

 毎度のごとく、以下、手指の機能障害をご参照下さい。変形が改善されて、可動域にも問題がなかったとしても、痛みや不具合が残れば、14級9号だけでも認定させたいところです。    👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~ 手指の機能障害    ◆ 交通事故110番の経験則

 損害賠償上では、クロスフィンガーによって日常・仕事上でどのような支障があるのかということを、丹念に証明していかなければなりません。

 一例をご紹介しますが、ある被害者の方は、事故により挫滅骨折をし、それが原因で人差し指がクロスフィンガーとなっていましたが、主治医の判断では骨切り術を実施しても、必ず元通りになるとは言えないとの所見でした。そこで、手術は断念することにし、後遺障害診断書には、「挫滅的な骨折の状況からクロスフィンガーを残したものである」旨の記載がなされました。

 その被害者の方は、建築設計事務所に勤務し、CADを使用して設計をしていたため、人差し指のクロスフィンガーは致命的でした。その作業の様子をビデオ撮影し、疼痛と作業効率の低下が認められ、結果として、後遺障害等級12級13号が認定されました。手指(骨)の変形として直接に等級が定められていないので、このような判定となったようです。    次回 ⇒ 続きを読む »

(1)病態

 指の第1関節が木槌(きづち)のように曲がった状態なので、マレット変形と呼びます。

 マレット変形は、伸ばすスジ(腱)である伸筋腱が伸びたために生じるものと、第1関節内の骨折が生じて起こるものに分かれます。痛みや腫れがひどく、自分の意志で曲げ伸ばしは不能です。他動での伸展・屈曲は可能です。   (2)治療

 伸筋腱の断裂を腱性マレットと呼び、剥離骨折は骨性マレットと呼ばれています。腱性マレットでは、装具やシーネを用いた固定による保存療法をおこない、必要に応じて鋼線による指を伸展した位置での固定や腱を縫合します。

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  (1)病態

 モノをつまむとき、ビンのふたを開けるときなど母指に力を必要とする関節をCM関節と呼びます。CM関節=第1手根中手骨関節は、母指が他の指と向き合って、物をつまむ動作ができるように働いています。

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(1)病態

 手指のまん中の関節の骨折です。手指の関節の骨折では、もっとも治療が困難で、手術が選択されることが多い骨折です。

 指先から2つ目の関節を脱臼することをPIP関節脱臼といい、しばしば骨折を伴う脱臼骨折となります。これは、突き指をしたときや、関節が本来動く範囲を超えて強制的に動かされたときに生じます。   (2)治療

 関節が安定していればシーネなどで外固定して治療します。指専用のアルフェンスシーネ(↓写真)で外固定します。関節が不安定で、関節面に40%以上のズレが認められるときは、手術が選択されます。細い骨の固定では毎度おなじみ、キルシュナー鋼線(という専用の針金)で固定します。靱帯断裂では、骨髄内からの陥没骨片の整復、ピンを用いた骨折の安定化などをおこないます。  拘縮や変形が進み、強く固定する必要がある時は、創外固定器という持続牽引装置が用いられてきました。最近は変形癒合のときは、良好な機能は期待できないため、再建手術を要します。矯正骨切り手術や、肋骨肋軟骨を移植して関節を再建する手術が行われます。手指であっても、人工関節置換術や関節固定術などが選択されることがあります。    (3)後遺障害のポイント

 処置が良好でも指関節の拘縮が避けられず、関節可動域制限を残した場合は、機能障害として可動域の計測を行い申請します。序論 手指の機能障害をご参照下さい。    👉 上肢の後遺障害 ...

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中手骨骨幹部骨折 (ちゅうしゅこつこつかんぶこっせつ)

(1)病態

 骨幹部骨折は、骨折線の方向によって横骨折と斜骨折に分類されています。関節部の骨折では、骨片が小さくズレが少ないときは、変形もなく、腫れや痛みなどの症状も比較的軽度であり、いわゆる突き指として放置されることが一般的です。骨片が小さく、転位が少ないとXPでは見逃されることも多くなります。

 早期に適切な治療がなされないと、ズレが増強し、後に大きな障害を残すことがあるので注意が必要です。   (2)治療

 基本的には、先の中手骨「頚部」「基底部」に同じです。軽度であれば、例えば亀裂骨折(ひびが入っただけ)は、サポーター等の外固定、保存療法で癒合を待ちます。およそ6週間程度の固定で改善が得られますが、重度の腱損傷や骨折を伴うときは、手術が選択されています。骨折部が連続性を失っている(折れた骨が離れている)場合は、骨の外側から、あるいは髄内にキルシュナー鋼線を通して固定します。さらに、転位(骨折部がズレてしまう)を防ぐため、外側からシーネで外固定も加えます。   (3)後遺障害のポイント    骨折部が指側、手首側に接していない骨幹部は、それぞれの関節可動域制限は起きづらいと思います。したがって、癒合後も痛み・不具合などの神経症状が残存した場合、骨癒合に変形や転位を残す場合は12級13号が、変形等なくいとも、症状一貫性から14級9号が残ります。

 しかしながら、骨癒合に問題がなくとも、シーネやサポーターのよる固定が長期化し、指関節を動かさないと関節拘縮が進んでしまいます。この点、自賠責保険は”リハビリをさぼった”可動域制限に対しては厳しく判断し、機能障害を認めないことがあります。「治す努力をしたが、残ってしまった障害」が後遺障害なのです。その基本を忘れてはなりません。最後に載せた10級7号の実例は、中手骨が砕けた重症例で、骨癒合が精一杯、リハビリでの改善は困難でした。例外的と言えます。    以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。    👉 続きを読む »

中手骨基底部骨折 (ちゅうしゅこつきていぶこっせつ)

(1)病態

 中手骨の基底部とは、手の甲の骨となる中手骨の手首側、根本です。単に基部と呼ぶこともあります。中手骨基底部と接する手根骨との間でCM関節を構成します。

 基底部骨折は、直接の打撲などで発症しています。脱臼骨折では、手部の隆起、突出、手指の顕著な変形が見られます。親指の中手骨骨折は、付け根部分に発生することが多いのですが、親指の中手骨基底部関節内の脱臼骨折では、尺側基底部に骨片を残し、遠位骨片が橈側近位へ向けてズレるものをベネット骨折と呼んでいます。    ベネット骨折の実例 👉 10級7号:ベネット骨折(40代男性・埼玉県)    交通事故では、手を固く握った状態で、打撃、打撲などの衝撃が加わって発症しています。この骨折は整復位保持が困難な骨折として知られており、わずかなズレが残っても痛みが持続します。とりわけ親指に機能障害を残すことから、ベネット骨折では手術が選択されています。   (2)治療

 基本的に先の中手骨「頚部骨折」に同じです。軽度であれば、例えば亀裂骨折(ひびが入っただけ)は、サポーター等の外固定、保存療法で癒合を待ちます。およそ6週間程度の固定で改善が得られますが、重度の腱損傷や骨折を伴うときは、手術が選択されています。骨折部が連続性を失っている(折れた骨が離れている)場合は、小型のプレート&スクリューで固定します。あるいは、髄内にキルシュナー鋼線を通して固定します。さらに、転位(骨折部がズレてしまう)を防ぐため、外側からシーネで外固定も加えます。

 骨折型、粉砕の程度、軟部組織の損傷の程度によっては、手術後に指関節の拘縮が起こりやすく、また、発生部位に関わらず、整復が不完全なときは、運動障害や運動痛を残します。   続きを読む »

 中手骨頚部骨折 (ちゅうしゅこつけいぶこっせつ)   (1)病態

 中手骨の頚部とは、上図の青字の部分(中手骨5本すべて)です。手の甲の骨が指の骨に接する骨頭部のくびれの部分にあたります。頚部骨折は頻度が高く、次に基底部骨折、骨幹部骨折、骨端線離開の順で発生しています。共通する症状として、外傷の衝撃後に激痛、骨折部位の圧痛、手指の機能不全、腫脹、変形、運動障害などを発症します。拳を握った状態で打撃、打撲による外力が加わったときに発症します。

 パンチ動作で発生することも多く、ボクサー骨折とも呼ばれます。好発部位は、環指や小指の中手骨によく発生します。交通事故では、バイクや自動車のハンドルを握ったまま正面衝突したときに、外力が中手指節関節から中手骨の長軸に向かうことで発生しています。

 腱と関節包との結合部位では剥離骨折が多く発生し、伸筋腱断裂によってマレットフィンガーと呼ばれる遠位指節間関節の屈曲変形が生じることがあります。 続きを読む »

側副靭帯損傷(そくふくじんたい そんしょう)

親指MP関節尺側側副靭帯の損傷 = スキーヤーズサム

(1)病態

 手指関節の両側には、関節の側方への動揺性を制御し、横方向に曲がらないようにしている側副靭帯という組織があります。側副靭帯は転倒などで、側方への強い外力が加わったときに損傷します。受傷直後に適切な治療を行わないと、側方へ指が曲がる、力が入らない等、不安定性を残します。

 母指MP関節尺側側副靭帯が好発部位です。スキーの滑降で、ストックを使用しているときに発症することが多く、この傷病名となっています。   続きを読む »

 屈筋腱(くっきんけん)

(1)病態

 手の掌側にある屈筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。

 切創や挫創による開放性損傷、創のない閉鎖性損傷、皮下断裂があります。屈筋腱の損傷では、同時に神経の断裂を伴うことが高頻度で起こります。このときは、屈筋腱と神経の修復を同時に行うことになり、専門医が登場する領域です。

 手指の屈筋腱は、親指は1つですが、親指以外は、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2つがあります。親指以外で、両方が断裂すると、手指が伸びた状態となり、まったく曲げることができなくなります。深指屈筋腱のみが断裂したときは、DIP関節だけが伸びた状態となり、曲げることができません。しかし、PIP関節は、曲げることができるのです。   (2)治療

 指関節の可動域制限があり、拘縮が進む場合、オペを検討する必要があります。屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいものの1つで、腱縫合術が必要です。年齢、受傷様式、受傷から手術までの期間、手術の技術、手術後の後療法、リハビリなどにより治療成績が左右されます。

 治療が難しい理由としては、再断裂と癒着の2つの問題があります。手術では、正確かつ丁寧な技術が求められ、手術後の後療法も非常に重要となります。   (3)後遺障害のポイント    以下に上げた実例は、損傷の程度がひどく、オペによる回復もわずかでした。損傷がオペで修復可能で、指の曲がりが改善、機能障害を回避できたとして、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。    以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。    👉 続きを読む »

伸筋腱 脱臼(しんきんけんだっきゅう)

(1)病態

 手を握って拳骨を作ったときの拳頭部分は、中手骨頭を覆うように伸筋腱が存在しています。この中手骨頭は丸い形をしており、矢状索と呼ばれる組織が、伸筋腱が中央部からずれることのないように支えています。

 この矢状索が損傷すると、伸筋腱を中央部に保持できなくなり、拳骨を握ると、伸筋腱が中手骨頭の横にズレ落ちるのです。この状態を伸筋腱脱臼と呼んでいます。   (2)治療

 治療は手術により、矢状索損傷部の縫合、もしくは伸筋腱の一部を用いて矢状索を再建する方法が実施されています。後述の後遺障害14級9号の実例では、指関節の可動に問題なく、ひどい痛みでもないケースでした。当然、オペはしません。保存療法のまま症状固定日を迎えました。脱臼といっても軽重があるようです。

 指のオペができる病院・医師は限られます。脱臼が整復された後も、指の曲がりが改善しているか、硬直していないか、慎重に観察を続けます。異常があっても漫然と「様子をみましょう」とせず、専門医の診察を継続すべきと思います。どうも、「指ごとき」と軽く考える医師もいるように思います。  

(3)後遺障害のポイント    指の曲がりが改善し、機能障害を回避できたとして、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。    14級を確保した実例 👉 14級9号:手指 伸筋腱脱臼(40代女性・静岡県)    以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。    👉 続きを読む »

 伸筋腱損傷 (しんきんけんそんしょう)

(1)病態

 伸筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されることはなく、手指を伸ばすことができなくなります。つまり、曲がったままになります。切創や挫創による開放性損傷と、創がなくて生じる閉鎖性損傷、皮下断裂があります。

 皮下断裂は、突き指などの外力によって生じるもので、これが圧倒的多数です。開放損傷により、手の甲で腱が断裂したときは、MP関節での手指の伸展が不良となります。手背部の伸筋腱は、腱間結合という組織で隣の伸筋腱と連結しているので、完全に伸展することはできませんが、一定程度までの伸展は可能です。骨折と違い、強い疼痛を伴うことはありません。

 DIP、PIP関節の背側での皮下断裂は、放置すると伸筋腱のバランスが崩れ、スワンネック変形やボタンホール変形という手指の変形に発展します。

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 手指の機能障害(多くは可動域制限)による後遺障害等級    手指の障害の傷病名別の各論に入る前に、手指の機能障害について、まとめて等級を整理しておきましょう。   (1)機能障害の3パターン

 機能障害とは、① 骨折・脱臼後の変形などから物理的に関節が曲がらなくなる可動域制限と、② 神経麻痺・断裂などで自らの意志で曲げることができなくなる可動域制限があります。それぞれの計測に際して、前者は他動値で判断され、後者は自動値で判断します。

 問題は、すべての医師がこの理屈を理解していないことです。多くの被害者さんは、未計測や誤計測で等級を取りこぼしていると思います。実際、間違った計測値や、自動値が未計測の診断書の方が多いくらいです。つまり、秋葉事務所の出番となります。

 機能障害では、他に ③「動揺性」といって、関節がぐらぐらになるものもあります。膝関節に多く、靭帯損傷後に残存する障害です。指の場合は、指の靭帯が切れて、関節の保持ができなくなる状態ですが、多くは手術で固定します。この場合、指の可動域に制限が加わりますが、動揺性よりは可動域制限に収めるようです。そのせいか、手指の動揺性による機能障害について、自賠責、労災共に基準が細かく明示されていないようです。かなりレアケースなので、指関節の動揺性の場合は、その程度を下図(2)「廃したもの」に照らして判定されるものと思います。   (2)等級表  手指の全部の用を廃したものとは、母指ではIPより先、その他の指ではPIPより先の2分の1以上を失ったもの、また母指ではIP・MCPその他の指ではPIP・MCPのいずれかに正常可動域の2分の1以下に制限されたものを言います。続きを読む »

 TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex = 三角線維軟骨複合体)

 TFCCは、尺骨三角骨靭帯、尺骨月状骨靭帯、掌側橈尺靭帯、背側橈尺靭帯、関節円板、尺側側副靱帯、三角靱帯の複合体です。

 秋葉事務所では長年取り組んできた症例で、全国からご相談が絶えません。数多くの症状、術式パターン、そして様々な認定例・・一口では捉えられません。決して簡単ではないと思います。  

(1)病態

 TFCCは、手関節の小指側、橈骨・尺骨・手根骨の間に囲まれた三角形の部分にあり、橈尺骨のスタビライザーの役目、回内・回外時の尺骨遠位端のクッションやベアリングとして働いています。TFCCは、関節円板といわれるもので、骨では硬すぎるので、成分は、三角線維軟骨複合体で、膝の半月版に相当する軟骨組織です。交通事故で転倒した際に、手をつくことで多発しています。

 実際に、事故直後にTFCC損傷と診断され、サポーターやギブス固定、さらには関節鏡視下手術により改善が得られる被害者の方は、一握りです。TFCCは三角線維軟骨複合体であり、XPで確認できません。ドアノブを回す際や、窓ふきで尺屈(小指側に曲げる、バイバイの動き)で激痛に気づきます。

 また、TFCC部が切れたり、はがれた場合、尺骨の骨頭(手首の小指側)が前後にぐらぐら動く(動揺性)も2例、経験しています。

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 手根不安定症(しゅこんふあんていしょう)

(1)病態

 手根骨脱臼・骨折に伴う、外傷性の二次性疾患のことです。手根骨は2列に配列された8つの小さな骨が、関節と靭帯で結合して構成されていますが、手根不安定症は、それぞれを連結する靭帯が断裂あるいは弛緩することにより、発症します。

 手関節の可動域制限、運動時痛、握力の低下、有痛性のクリック音等の症状をもたらす症候群を、手根不安定症といいます。やはり、通常のXPでは見逃されることが多く、専門医によるMRI、各種ストレス撮影や関節造影検査などで立証しなければなりません。   (2)対策

 本来の捻挫とは、靭帯、半月板、関節包、腱などの軟部組織の部分的な損傷のことです。今でも、XPで骨折や脱臼が認められないものは単なる捻挫の扱いで、治療が軽視されています。手がジクジク痛み、握力が低下しているときは、受傷から2ヶ月以内に、専門医を受診することをお勧めします。

 確かに、数週間の安静、固定で治癒するものが多数であることも事実ですが、不十分な固定と、その後の不適切なリハビリにより、部分的な損傷が完全な断裂に発展することや、本当は、完全に断裂していて、手術以外の治療では、改善が得られないものの見落としも発生しています。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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 キーンベック病 = 月状骨軟化症(げつじょうこつなんかしょう)

(1)病態

 キーンベック病は、月状骨無腐性壊死・月状骨軟化症とも呼ばれており、外傷後だけでなく、振動ドリル等で手を酷使する人、大工、農林漁業などで、手をよく使う人にも発症しています。

 月状骨は、周囲が軟骨に囲まれており、血行に乏しく、容易に壊死するのです。交通事故では、前腕骨、橈骨、尺骨の脱臼や骨折により、2つの骨のバランスが崩れ、手関節内で月状骨にかかる圧力が強くなり、二次的障害として発症しています。

 また、月状骨の不顕性骨折を見落としたことで、キーンベック病を発症することも予想されます。症状は、手首の疼痛、痛みを原因とした手関節の可動域制限、握力の低下です。月状骨が潰れる外傷で、初期では、血行不良により、XPやMRIで月状骨の輝度変化が出現します。末期には、無腐性壊死となり、潰れて扁平化します。

↑ 末期の月状骨は、潰れて扁平化します

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 三角・月状骨間 解離 (さんかく・げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、三角・月状骨間の靭帯が断裂して発症します。

 手関節の疼痛、可動域制限などがあり、月状骨と三角骨のある尺側部分に圧痛点が見られます。XPの舟状・月状骨角は20°以下で手根掌屈変形が認められます。XP、手関節正面像では、月状骨三角骨間での両骨間に間隙が存在します。月状・三角骨 開離は、前回の舟状・月状骨 開離に次いで高頻度に発生するものです。両骨間の靭帯が過伸展、あるいは断裂した状態なので、手根靱帯損傷(LT靱帯開離)とも言われます。    (2)治療

 単独損傷の場合、発見が難しいもので、通常のXPでは見逃されることが多く、ジクジクした痛みが続くときは、専門医によるMRI、各種ストレス撮影や関節造影検査などで立証しなければなりません。

 初期には保存療法とし、ギプスや装具で外固定します。ただし、改善の無いまま放置すると、慢性の手関節痛となります。また、TFCC損傷を併発することもあり、次いで、尺骨突き上げ症候群となれば、TFCCの円盤部の摩耗や断裂が生じ、進行するとLT靱帯が断裂します。

 痛みどころか、手関節の可動域制限が生じたとなれば手術適用です。まず、関節鏡から術式の検討をします。損傷程度により、鏡視下デブリードマンを実施、開離2mm以上でピンニング固定します。簡単に言いますと、デブリードマンは、両骨の間隙にある離開の原因となる不要な組織を取り除く掃除です。ピンニングは、両骨を細い金属ピンでホチキス止めのようにくっつけます。   続きを読む »

 舟状・月状骨間 解離 (しゅうじょう げつじょうこつかん かいり)

(1)病態

 ↑ 図の通り、舟状・月状骨間靭帯が舟状骨の靭帯付着部で断裂して発症します。

 舟状・月状骨角は、正常では30~60°ですが、70°以上となると手根背屈変形、舟状・月状骨間解離となり、XP手関節正面像では、舟状骨と月状骨の間が2mm以上の間隙が認められます。   (2)治療

 治療は、受傷後の早期では、手根骨の配列を整復、Kワイヤーで6週間、その後装具を6週間装着することになり、このレベルでも、職場復帰には、6ヶ月を要します。受傷後かなり経過しているときは、舟状骨を周囲の手根骨と固定する手術が実施されます。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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 月状骨脱臼 (げつじょうこつだっきゅう)

(1)病態

 手首の付け根の骨は、8個の小さな手根骨で構成されています。これらの手根骨は2列に並んでおり、1列目は親指側から、舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、2列目は、大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨と呼びます。これらの手根骨はお互いに関節を作って接しており、複雑な靭帯で結合されています。

 月状骨は、右手の背側では、舟状骨の右隣、有鈎骨の下部に位置しています。手根骨の脱臼では月状骨が圧倒的多数で、月状骨周囲脱臼と呼びます。手のひらをついて転倒した際に、月状骨が、有頭骨と橈骨の間に挟まれてはじき出されるように、手のひら側に転位・脱臼します。月状骨と橈骨の位置関係は正常ですが、月状骨とその他の手根骨との関係が異常となって背側に転位するもので、しばしば見逃されるので、注意しなければなりません。

 月状骨周辺の橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折を伴うこともあります。   (2)治療

 疼痛、運動制限、圧痛、腫脹を発症し、脱臼した月状骨が手根管圧迫や突出したときは、手根管症候群を生じることがあります。単純XPの側面画像で、月状骨が90°回転しているのが分かります。

 徒手整復が治療の中心ですが、整復できないケースや、再発予防・手根管症候群予防の必要から、手術を選択し、靭帯の縫合なども実施されています。近年、手根不安定症の発症を防止する観点から、手根骨間の徒手整復経皮的ピンニング(切開をしないで徒手で転位した手根骨を整復し、皮膚の外からワイヤーで固定する方法)や観血的靭帯縫合(切開手術で転位した手根骨を整復し、ワイヤーで固定、損傷した靭帯を縫合する方法)が積極的に実施されています。   (3)後遺障害のポイント 

Ⅰ.

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