【事案】
歩行中、対向車に跳ねられ転倒。直後より頚部、腰部に神経症状を発症、吐き気・めまい等バレリュー症候群も重なる。何より自発的に小便が出なくなってしまった。
【問題点】
これは単なる打撲捻挫ではないので、初期は原因の特定と治療に奔走することになる。まず脊髄の異変を疑い専門医に受診、結果、脊髄の輝度変化はなく、脊髄損傷はなく安堵した。しかし原因不明の排尿障害については泌尿器科に通院するものの、まったく回復しなかった。
排尿障害は脊髄損傷を原因とするか、仙骨や腰椎の骨折、ヘルニアの突出による馬尾神経への圧迫で生じるもの・・・これが通常の説明です。しかし本件は「骨折等器質的損傷がなく、むち打ちの類で何故おしっこが出なくなるの?」と因果関係を否定されることが当然に予想されます。因果関係の解明に向け、厳しい戦いとなった。
【立証ポイント】
脊髄の専門医から紹介の紹介である泌尿器科の専門医にたどり着く。そこでウロダイナミクス検査を実施、閉尿の具体的な原因の究明を果たす。そして分析データにより「頚部神経症状がもたらした排尿筋括約筋強調不全」の診断結果に漕ぎ着けた。
調査事務所も6か月にわたる審査期間を要すことに。悩みに悩んだ様子が目に浮かぶようです。
結果、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当程度の支障を残すもの」として、異例とも思われる11級10号の認定となる。
治療も障害立証も専門医の協力と専門的な検査なくして成し得ない。厳しい現実を乗り越えた瞬間だった。
(平成24年7月)