本日の病院同行は2件でした。いずれも鎖骨骨折の案件です。

 診断名に「鎖骨骨折」と記載されていますが、これだけでは不十分です。
 前提として鎖骨骨折から注意すべき後遺障害4つを説明します。

1、疼痛の残存

2、変形癒合

3、肩関節可動域制限

4、上腕神経麻痺


1、骨折の癒合が良好ながら、何らかの原因で痛みやしびれ、その他不具合が残存してしまったケースです。お馴染み「神経症状の残存」14級9号で評価します。

2、変形癒合はXP画像ももちろんですが、評価上「裸体で確認できる」レベルが必要です。12級5号となります。

3、肩関節可動域制限は全然動かないレベルで一上肢の「用廃」8級6号、半分以下の制限で「著しい障害」10級10号、4分の3以下の制限で「機能障害」12級6号です。

4、これは鎖骨下を走る上腕神経が骨折に伴い損傷したケースで、腕が動かなくなります。これは3に同じく可動域制限にて程度・等級を評価します。 

 さて、昨日2件のポイントは2の変形癒合か、3の可動域に注目するかの判別です。

 これは骨折の部分はどこかに依存します。肩関節に接する部分を「遠位端」、骨の幹の部分を「骨幹部」、胸鎖関節に接する部分を「近位端」と3分します。骨幹部骨折ならば、ひどい転位(骨がずれてくっつく)や短縮(骨が短くなってくっつく)がない限り、肩関節の可動域の制限は起きません。したがって2の変形がないか、4の上腕神経に影響はないかをチェックします。それらがない場合、残存する痛みやしびれ、その他不具合を申告してもらい、1の神経症状につなげます。

 今回の2件とも遠位端骨折でした。肩関節の不具合が当然予想される骨折画像も確認しました。腕の拳上に障害を残してしまったので、可動域制限の方針に絞られます。あとは3の説明の通り、拳上の程度によって等級が決まります。

 つまり、骨折部分の特定がスタートラインなのです。そして本件の診断書には正確に「右鎖骨遠位端骨折」と記載を直して頂きました。