手指の障害において、突き指は「変形障害」の起因となるケガの一つです。障害を残さぬよう、正しい処置が望まれます。今回は指の変形シリーズのまとめにもなります。
 
(1)病態

 突き指は、指を突いたときに指先から力が加わって、関節や靱帯、腱、骨などに損傷が加わることです。多くは、野球やバスケットなど、球技でボールを受け損ねて受傷します。また、ドアや壁などの固いものに指先を強くぶつけた場合でも起こります。つまり、交通事故外傷でもあり得ます。

 その突き方や強さなどによって、症状もさまざまであり、ケガそのものの状態も捻挫程度から脱臼や骨折までとさまざまです。手指の正常な状態では、上側に伸筋腱、下側に屈筋腱、関節の左右には、内・外側側副靱帯があり、それぞれ連結して、指の可動域を確保しています。骨折や靱帯損傷などの場合は関節が変形したり、後の動きに支障が出たりということもあるので、正しい処置が必要になります。昔はいい加減でした。冷やすだけなら良いのですが、曲がった指を無理やり引っ張るなど、間違った処置がされていました。これは靭帯に悪影響でしかありません。

   
(2)治療

① 腱断裂

 イラスト(左上)では、示指の伸筋腱が、DIP関節のところで断裂しています。突き指の外力で生じた皮下断裂であり、突き指=伸筋腱の断裂が圧倒的多数です。断裂した先の手指は、伸ばすことはできません。

 DIP、PIP関節上部での皮下断裂は、一般的には、保存療法で治療し、装具により、手指を伸ばした状態で4週間以上の固定が行われるのが一般的です。指先の腱断裂であっても、開放性では、早期に開創、短縮している腱の断端を引き寄せ、縫合しなければなりません。しかし、伸筋腱の皮下断裂では、時間が経過すると、それほど大きな痛みを感じません。
 
 👉 手指の伸筋腱 損傷 
  
② 裂離骨折

 イラスト(左下)をご覧ください。これは、示指の伸筋腱が、DIP関節より先の付着部から断裂して外れたことを意味します。これは裂離骨折もしくは剥離骨折と呼ばれています。腱と関節包との結合部位では剥離骨折が多く、伸筋腱断裂によってマレットフィンガーと呼ばれる遠位指節間関節の屈曲変形が生じることがあります。
 
 👉 マレットフィンガー
 
 軽度であれば6週間程度の固定で改善が得られますが、重度の腱損傷や骨折を伴うときは、手術が選択されています。骨折型、粉砕の程度、軟部組織の損傷の程度によっては、手術後に指拘縮が起こりやすく、また、発生部位に関わらず、整復が不完全なときは、運動障害や運動痛を残します。
 
③ 脱臼骨折(右上)

 イラストは、右示指の真ん中、PIP関節部における脱臼骨折で、交通事故による突き指では、最も頻度が高いものです。手指の関節の骨折では、もっとも治療が困難で、手術が選択されることが多いのです。

 関節が安定していればシーネなどで固定して治療しますが、関節が不安定で、関節面に40%以上のズレが認められるときは、手術が選択されます。
  
 👉 PIP関節脱臼骨折
 
④ 側副靱帯の断裂(右下)

 イラストでは、右手示指のPIP関節部、内側側副靱帯が断裂しています。手指関節の両側には、関節の側方への動揺性を制御し、横方向に曲がらないようにしている側副靭帯という組織があります。側副靭帯は転倒などで、側方への強い外力が加わったときに損傷します。受傷直後に適切な治療を行わないと、側方へ指が曲がる、前回に解説したクロスフィンガーや、指で握れない、不安定性を残します。実は、示指よりも、母指MP関節尺側側副靭帯の損傷が好発部位です。
 
 👉 クロスフィンガー
 
 母指第2関節の尺側の側副靭帯の完全断裂では、ギプス固定を行っても治癒することはありません。最初から手術の選択となり、専門医の領域です。不安定性が少ないときは、2~4週間のギプス固定で、その後、徐々にリハビリが開始されます。XPで異常が確認されないときでも、一定期間の外固定は必要となります。それでも、不安定性が改善されないときは、手術が選択されています。 
 
(3)後遺障害のポイント

 このように、たかが突き指といえど、症状によっては軽視できないものです。子供の頃、野球で突き指して処置せずそのまま・・大人になっても指が曲がったままの方も多いのではないでしょうか。立派な後遺症、後遺障害ですが、指先の第一関節(DIP関節)の拘縮は14級7号止まりが痛いところです。
 
 詳しくは以下、指の機能障害を参照して下さい。
 
 👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~  手指の機能障害
 
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