側副靭帯損傷(そくふくじんたい そんしょう)
親指MP関節尺側側副靭帯の損傷 = スキーヤーズサム
(1)病態
手指関節の両側には、関節の側方への動揺性を制御し、横方向に曲がらないようにしている側副靭帯という組織があります。側副靭帯は転倒などで、側方への強い外力が加わったときに損傷します。受傷直後に適切な治療を行わないと、側方へ指が曲がる、力が入らない等、不安定性を残します。
母指MP関節尺側側副靭帯が好発部位です。スキーの滑降で、ストックを使用しているときに発症することが多く、この傷病名となっています。
(2)治療
母指第2関節の尺側の側副靭帯が断裂するもので、完全断裂のときは、ギブス固定を行っても治癒することはありません。最初から手術の選択となり、専門医の領域です。不安定性が少ないときは、2~4週間のギプス固定で、その後、徐々にリハビリが開始されます。XPで異常が確認されないときでも、一定期間の外固定は必要となります。それでも、不安定性が改善されないときは、手術が選択されます。
母指MP関節尺側側副靭帯損傷では、靭帯の断端が反転して、母指内転筋腱膜の下に挟まってしまう、ステナー障害を発症する可能性が高く、そうなると、治癒不能の状態が起こり、手術が必要です。受傷後早期では、靭帯縫合術が選択されますが、完全断裂で3週間以上が経過したときは、断端同士を縫合することが困難となり、側副靱帯再建術が必要となることが予想されます。
(3)後遺障害のポイント
指関節の拘縮を回避し、機能障害にまで至らない場合でも、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。
以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。
👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~ 手指の機能障害
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