伸筋腱損傷 (しんきんけんそんしょう)

(1)病態

 伸筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されることはなく、手指を伸ばすことができなくなります。つまり、曲がったままになります。切創や挫創による開放性損傷と、創がなくて生じる閉鎖性損傷、皮下断裂があります。

 皮下断裂は、突き指などの外力によって生じるもので、これが圧倒的多数です。開放損傷により、手の甲で腱が断裂したときは、MP関節での手指の伸展が不良となります。手背部の伸筋腱は、腱間結合という組織で隣の伸筋腱と連結しているので、完全に伸展することはできませんが、一定程度までの伸展は可能です。骨折と違い、強い疼痛を伴うことはありません。

 DIP、PIP関節の背側での皮下断裂は、放置すると伸筋腱のバランスが崩れ、スワンネック変形やボタンホール変形という手指の変形に発展します。

関節リウマチによるスワンネック変形

 
(2)治療

 開放性損傷では、早期に開創し、短縮している腱の断端を引き寄せて縫合しなければなりません。DIP、PIP関節背側での皮下断裂は、一般的には、保存療法で治療し、装具により、手指を伸ばした状態で4週間以上固定します。この間、固定を外さないようしなければなりません。

 病的断裂では、手関節背側で生じた皮下断裂は、手術が必要です。断裂した腱の断端同士を縫合ができないことが多く、腱移行術や腱移植術などが行われています。

 変形は関節リウマチでも起きる症状ですが、交通事故などの外傷では、伸筋腱の断裂を放置した結果です。あるいは骨折や脱臼の予後、骨の変形や転位を放置したまま、その圧迫により損傷した伸筋腱が固まってしまうケースもあります。また、閉鎖性損傷≒「つき指で位で・・」と軽視する医師もおりますので、早めに専門医の治療を受ける必要があります。変形に至らないよう、事前に処置することです。

 私の子供の頃は、野球で突き指した後に指が曲がって固まったまま・・の子供が少なからずおりました。無知から、処置がいい加減(冷やすだけ)で放置したからでしょう。
 
(3)後遺障害のポイント
 
 硬直した場合は、機能障害(可動域制限)での判定になります。機能障害を回避できたとして、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。
 
 以下、序論 手指の機能障害をご参照下さい。
 
 👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 Ⅰ~ 手指の機能障害
 
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