手指の機能障害(多くは可動域制限)による後遺障害等級
 
 手指の障害の傷病名別の各論に入る前に、手指の機能障害について、まとめて等級を整理しておきましょう。
 
(1)機能障害の3パターン

 機能障害とは、① 骨折・脱臼後の変形などから物理的に関節が曲がらなくなる可動域制限と、② 神経麻痺・断裂などで自らの意志で曲げることができなくなる可動域制限があります。それぞれの計測に際して、前者は他動値で判断され、後者は自動値で判断します。

 問題は、医師がこの理屈を理解していないことです。多くの被害者さんは、未計測や誤計測で等級を取りこぼしていると思います。実際、間違った計測値や、自動値が未計測の診断書の方が多いくらいです。つまり、秋葉事務所の出番となります。

 機能障害では、他に ③「動揺性」といって、関節がぐらぐらになるものもあります。指の靭帯が切れて、関節の保持ができなくなる状態です。手指の動揺性による機能障害について、自賠責、労災共に基準が明示されていないようです。この場合、程度に応じて「〇級相当」で判定されるものと思います。
 
(2)等級表

 手指の全部の用を廃したものとは、母指ではIPより先、その他の指ではPIPより先の2分の1以上を失ったもの、また母指ではIP・MCPその他の指ではPIP・MCPのいずれかに正常可動域の2分の1以下に制限されたものを言います。両手であれば4級6号が、片手であれば、7級7号が認定されます。
 
(3)可動域の計測

 手指の関節は、母指にあっては、指先に近い方からIP、MCP関節、

 母指以外の手指にあっては、指先に近い方からDIP、PIP、MCP関節といいます。

 手指の関節に参考運動はありません。
 
① 母指 (第1指、親指)


 
 

② その他の指 (示指=人差し指、中指、環指=薬指、小指)


 
 

 
 
◆ 手指の機能障害に伴う後遺障害は、MCPとIP関節が対象で、どちらかの関節可動域が、健側に比較して2分の1以下にならない限り、用廃ではなく、非該当となる厳しいものです。毎度、専用の別表を用いて理学療法士さんに計測・記載頂いています。できるだけ立ち会って、その計測を見守ります。理学療法士さんは医師と違って、日々計測をしていますので、正確性が期待できます。やはり、餅は餅屋、関節の計測は医師ではなく、理学療法士さんが安定しています。
 
(4)後遺障害の実例 
 
Ⅰ. 手指全廃 = 7級7号
 
 片手の手指全廃の実例 👉 6級相当:上肢 屈筋腱損傷+正中神経損傷(30代女性・神奈川県)
 
Ⅱ. 母指

 ベネット骨折による機能障害 👉 10級7号:ベネット骨折(40代男性・埼玉県)
 
 第2中手骨骨折だが、母指の拘縮が認定 👉 10級7号:第2中手骨 骨幹部骨折(50代男性・埼玉県)
 
 珍しいIPでの認定例 👉 非該当⇒10級7号:母指基節骨粉砕骨折 異議申立(40代男性・東京都)
  
Ⅲ. 他の指

 人差し指&中指の用廃 👉 10級7号:手指骨折・脱臼、伸筋腱断裂(50代女性・神奈川県)

 小指の用廃 👉 13級6号:第5指中節骨骨折(40代男性・千葉県)
 
Ⅳ. DIP関節に至っては、屈伸することができない≒硬直の状態で、14級7号になります。 ↑ Ⅲ「10級7号」の例にも含まれています。
 
◆ DIPの可動域制限ですが、労災の基準でも屈伸不能の14級7号しか設定されていません。DIPについては、審査側にどう伝えるか・・毎度思案しています。
  
 参考 👉 DIP関節の等級認定は? 
 
◆ 機能障害に至らずとも疼痛を残したときは、理論上、14級9号、12級13が認定されます。ただし、変形はオペで修復しますし、予後も曲がるようにリハビリするはずですから、大多数は14級9号に落ち着くようです。
 
 指の障害でも14級9号が多い 👉 14級9号:中指末節骨骨折(30代男性・埼玉県)
 
 小指が痛い 👉 14級9号:第5指基節骨 剥離骨折(50代女性・埼玉県)
    
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