(1)病態

 尺骨神経が、ギヨン管というトンネルの中で絞扼・圧迫されているものです。尺骨神経は、頚椎から上腕の内側を走行し、肘の内側を下降し、手首周辺で、有鈎骨の鈎と豆状骨で構成されるギオン管の中を通過します。

 有鈎骨骨折は、薬指と小指の中間、下方にある手根骨の1つで、手のひら側に、突起=鉤が存在する特異な骨です。交通事故では、バイクのアクセルを握った状態での出合い頭衝突で、右手に多く発症しています。自転車、バイクから転倒する際に、手をつくことでも発症しています。

 
 手のひら側のCT画像ですが、突起=鉤が骨折しているのが確認できます。有鈎骨の骨折により、ギヨン管症候群を発症します。

 
(2)治療

 神経伝達速度検査によって病変部位の特定が可能です。治療は保存的に低周波電気刺激療法やマッサージ、レーザー光線の照射が行われますが、効果が得られないものは神経剥離術、神経移行術がおこなわれます。これらが不可能なものは腱移植術をおこない、装具の装用で機能を補完することになります。専門医の執刀でなければなりません。
 
◆ 通常の整形外科医では対処できない手の疾患ですが、手の専門医は少なく、秋葉事務所では過去4院へ誘致しました。単に「手の専門外来」を擁していても、医師の力がそれほどでもない院もありました。執刀経験が多く、信頼できる医師に巡り合うのは簡単ではないと思います。
 
(3)後遺障害のポイント
 
 尺骨や手根骨、あるいはギヨン管に接する第4~5中手骨(近位端)の骨折後、癒合が正常ではなく、神経伝導速度で異常数値を検出した場合、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当します。

 骨に異常なく、検査数値を欠く場合でも、痛み・しびれ・不具合が残存した場合、14級9号「局部に神経症状を残すもの」の可能性が残ります。打撲・捻挫の診断名から発する場合、14級を取ることで精一杯となります。
 
 次回 ⇒ ズディック骨萎縮