モンテジア骨折 = 尺骨骨折 + 橈骨の肘関節脱臼
 
(1)病態

 尺骨骨幹部骨折と橈骨頭脱臼が同時に発生したものをモンテジア骨折と呼びます。事故直後は、尺骨骨折の痛みが強く、肘関節での橈骨頭脱臼が見逃されることが多いのです。


 
〇 Bado(バド)分類

 モンテジア骨折は脱臼の方向から3分類されます。Type4は橈骨の脱臼を伴った橈尺骨骨折ということになります。上のイラストはType2でしょか。


 
◆ 橈骨頭の前方脱臼では、前方を走行する後骨間神経を絞扼・圧迫することにより、指を伸ばせなくなり、下垂指という変形をきたすことがあります。


 
(2)治療

 治療は、成人であれば、骨折が不安定なこともあり、手術によるプレート固定が行われます。この整復術によって、変形癒合を防ぐことができます。

 受傷から6ヶ月以上の陳旧例では、尺骨の骨癒合は完成するも、橈骨頭の脱臼だけが残存しており、肘関節には可動域制限が認められる状況です。これを治癒させるには、尺骨の過矯正骨切り手術、あるいは橈骨頭の靭帯再建術を実施して、脱臼状態を整復します。橈骨頭の変形が著しいときは、橈骨頭切除術が実施されています。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. 尺骨がAOプレートとスクリューで固定されたものでは、深刻な後遺障害を残すことなく治癒しています。それでも、橈骨の脱臼がしばらく放置されたケースや、尺骨は癒合も、その長さが変わってしまったケースなど、肘関節の可動に影響を残すことがあります。以下、可動域制限が検討されます。



 
Ⅱ. 手関節の可動域に影響を残す場合もありました。レアケースと思います。
 

 
 手関節・機能障害の実例 👉 10級10号:モンテジア骨折・橈骨遠位端骨折(40代男性・埼玉県)
 
Ⅲ. 痛みや不具合の残存した場合、14級9号「局部に神経症状を残すもの」の可能性が残ります。長管骨の変形に該当する程の変形ではないが、変形癒合が明らかな場合、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当します。最近の固定術は安定しており、変形の残存は減少してるようです。
   
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