橈骨頭・頚部骨折 (とうこっとう・けいぶこっせつ)
 
(1)病態

 肘関節周囲骨折では最も多い骨折であり、交通事故では、腕を真っ直ぐに伸ばしてバイクを運転中の事故受傷で発生しています。

 この部位だけの骨折は稀で、多くで上腕骨内上顆骨折、尺骨近位端骨折、尺側側副靭帯損傷を合併します。 成人では骨頭骨折となり、小児では頚部骨折となることを特徴としています。

 
 
(2)治療
 
Type Ⅰ 転位のないもの
 
type Ⅱ 少しの転位はあるが、単一骨片にとどまるもの
 
Type  Ⅲ 橈骨頭が3つ以上に粉砕骨折しているもの
 
 TypeⅠでは、3~4週間のギプス固定、TypeⅡでは、スクリューによる固定術が行われます。TypeⅢの粉砕骨折で不安定性のあるものは、人工骨頭置換術、不安定性の少ないものは、橈骨頭切除術が選択されています。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. 本傷病名に先の骨折等を合併する場合、治療期間も1年近くを要し、可動域制限で12級6号10級10号の後遺障害を残す可能性が高いと言えます。肘関節の用廃=8級6号レベルの状態であれば、通常、人工関節置換術が実施され、その結果が良好であれば10級10号に落ち着くはずです。
 


  
Ⅱ. 結局癒合しなかった場合は、欠損障害が検討されます。以下の表は「遠位端」=手関節に近い方を想定していますが、「近位端」=肘関節(骨頭、頚部)でも同じ評価となります。通常、12級8号が検討されます。


 
◆ 等級の序列

 同じ等級でも、その〇号によって認定等級の優先があります。1.人工関節 2.機能障害 3.偽関節 4.変形 5.神経症状 の順番で判定されます。これは、自賠責保険が規定する等級の序列です。上位が認定されると、下位に重なる障害があったたとしても、併合することなく上位等級が認定され、下位等級はそれに含んだ認定とされます(部位・状態によっては、例外的に併合・相当されることはあります)。これは、他の部位でもおよそ同じです。

 号、つまり障害の種類によっては、後の賠償交渉における逸失利益の喪失年数が違います。弁護士は、とくに認定された号を気にしているのです。機能障害が比較的長い年数になり、賠償金が上昇します。
 
Ⅲ. 他に骨折や靭帯損傷を併発することなく、問題なく癒合を果たせば、予後は良好です。それでも、痛み・不具合等の症状が続けば、14級9号「局部に神経症状を残すもの」の余地を残します。
 
 TFCC損傷を併発も14級に留まった例 👉 14級9号:橈骨骨頭部骨折(30代男性・埼玉県)
 
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