【事案】

自転車で交差点に進入したところ、自動車に衝突される。頭部を強打し、軽度意識障害がある中で救急搬送され、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、後頭骨骨折の診断が下された。

【問題点】

依頼者の過失が大きく、相手方保険会社からの一括対応が見込めなかったため、健康保険での治療が必須であった。過失や年齢のことも踏まえると、自賠責への請求で終わる可能性が極めて高く、救急搬送先からも早期の転院を迫られていた。
 
【立証ポイント】

事故2日後にご相談をいただき、今後のプランを説明。その後、弊所での面談を経て、入院先への訪問や医師面談を実施した。医師面談後、ご家族と2手に分かれ、1組はご本人と転院先へ、一方と弊所は市役所へ出向き、健康保険の手続きや破損したベンチ(市管理)の補償手続き等を済ませた。

高次脳機能障害の立証では、画像所見・診断名はクリアしていたが、意識障害が微妙なラインであった。しかし、性格変化や遂行能力、記憶力の低下等が出現していたため、国内最高峰の病院を紹介し、紆余曲折を経てなんとか受診できることとなった。検査の結果、知的機能が全般的に低下しており、中程度の高次脳機能障害であることは立証できたが、家族が一番困っている「幼児退行」については検査で立証することができない。そこで、日々の様子を写真や動画で残していただき、そのデータをUSBに収録し、添付資料として提出した。

こちらとしては、5級が認定されてくれれば勝利ラインと思っていたところ、自賠責窓口会社より「3級3号認定」の連絡があり、一同大喜びだったのだが、ここから思いもよらない事態が発生した。それは、自賠責の規定が変更となり、3級以上の認定では、後見人設定をしなければ自賠責保険金を送金することができないというものだった(事理弁識能力の問題であるため、脳に異常がなければ後見人は関係ないと思われる)。確かに中程度の高次脳機能障害ではあるものの、後見人を選定するほどの状態になく、裁判所の判断は「保佐人」とのこと。そこで、自賠責窓口の担当者に保佐人選定でも保険金を支払ってもらえるよう談判し、保佐人の手続きを進めることとなった。依頼人のご家族は、稀に見る優秀且つ円満だったため、保佐人設定の手続きはスムーズに終了し、保佐人からの再請求によって保険金がすんなり支払われた。

今回は依頼者の過失が大きいため、全てこちら側で行わなければならないという事態はあったものの、初動対応と早期の道筋作りによってご家族から大変感謝される解決となった。

(令和6年5月)