(5)腰椎の神経学的所見 ~ 検査のまとめ
① SLRテスト(下肢伸展拳上 = Straight leg raising)
L4/5ならびにL5/S1の椎間板ヘルニアの疼痛誘発テスト。下肢を伸展させたまま、上げさせる。70°未満で坐骨神経に沿った疼痛が誘発されれば陽性。
② ラセーグテスト(ラセーグ徴候)
L4/5ならびにL5/S1の椎間板ヘルニアの疼痛誘発テスト。下肢を膝で曲げて拳上させる。坐骨神経に沿った疼痛が誘発されれば陽性。
③ FNSテスト(大腿神経伸展)
股関節伸展で、大腿神経領域に誘発痛。腰椎間板ヘルニアと他の疾患を分別するのに有効な所見が得られます。
④ ヴァレー圧痛点
神経が筋や骨付近から体表近くに出る部位で、圧迫すると激しい疼痛を生じる部位。坐骨神経では殿部などにみられる。
⑤ 腱反射
膝蓋腱反射は、打腱器で膝のお皿のやや下を打ちます。アキレス腱反射は、名前の通り、アキレス腱を打ちます。亢進・軽度亢進・正常・低下・消失の5段階評価です。脊髄に異常がある場合、亢進・軽度亢進になります。神経圧迫ですと低下・消失になります。これも左右差で判断します。腱反射は嘘がつけませんから、自賠責保険の審査でも重視されていると思います。
⑥ バビンスキー反射、クローヌス(膝)(足)
この検査は、ヘルニアによる圧迫より深刻な、脊髄損傷や他の神経異常が疑われる場合に観察されます。腰椎捻挫の範疇であれば、参考程度に留まります。むしろ、他の疾患が疑われる場合でもなければ、ここまでやる医師は少ないと思います。
⑦ 知覚検査
針や刷毛(ブラシ)で下肢の表皮に刺激を与え、その感触の左右差をみます。針でツンツン「痛覚」を、ブラシでサワサワ「触覚」をみます。それぞれ、通常、過敏・正常・鈍麻・消失の4段階で判断します。
↓ 写真は、秋葉が使用しているものです(片側にそれぞれブラシと針がついた両用です)。
⑧ 筋委縮検査
左右どちらかの神経根に圧迫がある場合、通常、片側に症状がでます。その神経症状が続くと、片側の脚が痩せていくことがあります。大腿周径(太ももの太さ)、下腿周径(すねの太さ)を計ります。左右差をみるものですから、膝上(下)10cmと決めて、その周径を計ります。
これは、外見でもわかりますので、個人的には有力な所見と思っています。もっとも、スポーツ歴も事前にお伺いしています。スポーツ選手は、その長年の競技によって、左右、腕や足の長さや大きさに差違が生じるからです。
(6)後遺障害
多くは、症状の出現~軽快を繰り返す、慢性疾患に近いものなので、保険会社は保険金の支払いに嫌な顔をするものです。もちろん、事故前は症状がなかったが、外傷で発症したものについて、どうように事故の衝撃を受けたのか(受傷機転)とその症状の一貫性から、後遺障害認定の余地を残します。ほとんどは、14級9号「局部に神経症状を残すもの」が対象ですが、画像上、ヘルニアの圧迫が手術レベルで、上記の神経学的所見が明らかな件では、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定を得ています。
両者を分ける一番のポイントは、何より画像です。とくに神経への圧迫所見はMRIで描出されます。神経への圧迫所見が素人(例えば行政書士ごとき)がみても明らかな場合は、12級の対象です。12級認定では、さらに上記の神経学的所見の一致も必要です。画像、つまり、圧迫されている神経と、そこから起きる症状に矛盾があっては、12級から脱落します。結果として、96%は14級の対象となっています(秋葉事務所内の構成比)。その違いは、下記の実績を見比べて頂ければ、より理解が深まると思います。
14級9号の例 👉 腰椎捻挫14級の等級認定実績
12級13号の例 👉 腰椎捻挫12級の等級認定実績 12級の等級認定実績(異議申立)