続けます。まず14級の内容をおさらいします。
1一眼のまぶたの一部に欠損を残し又は睫毛はげを残すもの、
2 三歯以上に対して歯科補綴を加えたもの、
3 一耳の聴力が 1m 以上の距離では小声を解することが出来ない程度になったもの、
4 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの、
5 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの、
6 一手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの、
7 一手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することが出来なくなったもの、
8 一足の第三の足指以下の 1 又は 2 の足指の用を廃したもの、
9 局部に神経症状を残すもの、
この9号が障害が「推察」される場合によく用いられる認定結果です。14級は最も軽い障害等級ですが、1号から8号までは軽いと言ってもそれなりに「治らない」「完治まで長期化」する障害です。6号など小指を詰めた?状態です。結構重いです。
痛みやしびれ、不定愁訴、関節可動域制限、これらが医学的に説明ができなくても、「それなりに大変のようだ」、「数年はしんどいかな」と被害者の訴えを信じる時に、この9号が当てはめられます。骨折や靭帯損傷はたいしたレベルではないが、「関節の曲がりが悪くなった」、この場合にも9号で説明されることがあります。むち打ちでも「痛い」と自覚症状を訴えただけで、とくに神経症状もなく、画像所見も曖昧・・・それでも受傷から一貫して頚部痛を訴えた長期通院者の場合、9号をもらえることがあります。これはまさに「努力賞」です。
「憲法9条の拡大解釈」?・・・私たち交通事故外傷のプロの間では「9号の拡大解釈」と呼びます。これによく助けられるのです。
昨日の成果を例にとります。足の甲を捻挫し、腫れがひどく、その腫れも長期間ひかない被害者に14級9号が認定されました。
この重篤な捻挫の原因は何か?骨折や周辺靭帯の損傷を精査すべく、3.0MRIにて技師に特に頼んで検査してもらいましたが、病変部がはっきりしませんでした。そして半年、諦めに近い後遺障害申請を行いました。診断書の内容を工夫し、写真添付など、可能な限り立証努力をしましたが、被害者さんには非該当を覚悟するように言いました。具体的には痛みと腫れによる靴サイズの左右差を訴えました。(詳しくは14級9号:右足挫傷(20代男性・東京都))
結果は9号「神経症状をのこすもの」となりました。これは理由も違っていますし、医学的、客観的な説明になっていません。しかし「あぁこれは気の毒だ」と調査事務所の審査員が同情したのかもしれません。打撲捻挫の類で等級が認められるのはレアケースなのですが、このような同情的?実情を考慮した?認定もありうるのです。
医学的な証拠をそろえるのが「立証」です。証拠無きものは存在しないと言えます。しかし、まず被害者に残存した困窮点は何か?それを主張することが後遺障害申請の出発点です。
立証は科学的な証明一辺倒ではありません。特に14級9号の認定傾向についてそのように感じます。