交通事故相談において、この質問も実に多く寄せられています。今までも散々、解説を試みてきましたが、どうも歯切れの悪い説明になっていたと思います。改めて、今年のセミナーのレジュメから引用します。より洗練された回答にまとめたつもりです。
 
 どちらに請求すべきか?

 交通事故の場合、真っ先に請求する相手は、加害者の保険会社ではないでしょうか。それは通勤災害、業務災害の場面でも同じかと思います。確かに、加害者が弁償するのが筋とは思います。ただし、「労災は請求できない」、これは間違った知識です。
 
 かつて、交通事故で労災を使いたいと申し出ると、
 
「相手(保険会社)のいる交通事故では、労災は使えません」
 
「相手に保険があるので、自賠責の120万円の枠が終わってからでないと、労災を適用することはできません」
 
 ・・・このような対応でした。社会保障制度ですから、じゃぶじゃぶ使われると困ります。加害者に支払い能力、つまり、何らかの保険がある場合は、そちらを優先させて、支払いを抑制しなければならない側面は理解できます。


 
 近年は、そのような担当者にあたることはなく、普通に使わせてくれます。なぜなら、健康保険に同じく、「使うか否か」、「その順番」でさえも、請求者の意思が第一と法で定められています。以下に結論します。
 
1. 会社との摩擦が無ければ、両方に請求すべきです。
  
2. 軽傷の場合は、手間や誰かに委託する費用と比べて、決めればよいと思います。
 
3. 自身に過失がある場合の事故や、重傷で治療費が莫大となるケースでは、なおさら労災を併用すべきと思います。
 
4. ただし、併用と言っても、両方から二重取りが出来るわけではありません。
 
5. それでも労災併用、最大のメリットは、休業給付と障害給付で、相手からの賠償金とは別腹の「特別給付金」がもらえることです。
  
・休業給付の20% 
 
・障害給付の障害特別支給金(等級ごとに定額)
 

 
6. さらに、労災支給は終わったが、後に悪化して再手術となった場合の「再発申請」や、重傷者で、障害給付の支給後でも継続して治療する場合、その治療費等を支給する、「アフターケア制度」もあります。

 

 実に至れり尽くせり、原則、労災を使うべきと断言します。