坐骨神経麻痺(ざこつしんけいまひ)

 
 
(1)病態

 坐骨神経は背骨から出発、お尻を貫いて太ももの後面を下がり、ふくらはぎを通って足に分布します。

 坐骨神経は、末梢神経では、最も太くて、長さが1mの神経です。大腿後側の中央まで下降して、そこで、総腓骨神経と脛骨神経とに分岐しています。つまり、膝の裏までは、坐骨神経であり、そこから脛骨神経と腓骨神経の2手に分岐し、この2つの神経が足の運動と感覚を支配しているのです。
 
(2)症状

 坐骨神経麻痺では、ふくらはぎの裏側や足の裏の痺れや感覚鈍麻、うずき、灼熱感、疼痛を発症し、膝や足の脱力感を訴え、歩行困難となります。

 完全断裂では、足関節の自動運動不能、下垂足を示し、膝の屈曲が自動でできなくなります。
 
(3)診断と治療

 坐骨神経麻痺は、坐骨神経が圧迫されたことによる絞扼性神経障害もしくは座骨神経痛であることが大半であり、この因子を除去してやれば、改善が果たせます。

 MRI、針筋電図、神経伝達速度検査で診断されていますが、腰部脊柱管狭窄症、腰部椎間板ヘルニアに合併しているときは、ラセーグテストやアキレス腱反射の神経学的検査でも確認できます。

 治療は、保存療法が中心で、鎮痛消炎剤や筋弛緩剤の内服で、炎症を抑制しつつ、物理療法として超音波治療などが行われています。保存療法で改善が得られないときは、圧迫している梨状筋切離術などの手術が行われています。
 
(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 坐骨神経は、大腿骨頭のすぐ後方を走行しており、股関節の挫滅的な後方脱臼骨折、仙骨の縦断骨折であれば、完全断裂する可能性があります。断裂による重症例では、膝の自動による屈曲運動ができなくなり、足関節と足趾の自動運動が不能で、足関節は下垂足を示します。
 
 後遺障害等級は、1下肢の膝関節と足関節の用を廃したものとして6級7号、足趾の全ての用を廃したものとして9級15号、併合のルールでは、5級となります。ところが、1下肢を足関節以上で失ったもの、5級5号にはおよばないので、序列調整され、6級相当となります。
 
Ⅱ. MRI、神経伝達速度検査と針筋電図検査で、坐骨神経麻痺を立証します。
 
Ⅲ. 日本整形外科学会のホームページでは、神経損傷のあるものは、神経縫合術、神経移植術が行われ、神経の手術で回復の望みの少ないものは腱移行術が実施されるとありますが、坐骨神経、脛骨神経、腓骨神経となると、医学論文では、ラットで実験されている段階であり、現状で、完全断裂は、治療の施しようがない状況です。これらの神経の完全麻痺では、完治例をみたことがありません。
 
Ⅳ. 腰部脊柱管狭窄症、腰部椎間板ヘルニアを原因として発症するものは、多くが坐骨神経痛です。座骨神経痛であれば、時間はかかりますが、改善が得られるので、後遺障害の対象ではありません。秋葉事務所でも坐骨神経麻痺、単独での認定は今のところありません。
 
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