骨折後、癒合しない部分が小さい欠片(かけら)程度であれば、「遊離骨片」なんて呼ばれます。その骨片が、痛みの原因になった場合や、関節面に挟まって関節の動きを邪魔することなどがなければ、医師の判断は「そのままで」となります。後遺障害の判定においても、骨変形の等級は認められません。
一方、腕や脚の長管骨骨折後、癒合しない場合は「偽関節」となります。偽関節であれば、それは元通りにならない後遺障害ですから、12級8号「長管骨に変形を残すもの」の認定となります。
さて、尺骨茎状突起部です。過去、何度も偽関節で12級8号を得ています。しかし、本件では単なる骨片と判断されました。認定基準が変わったのか、担当者の独断なのか・・謎を残しました。何事も画像から判定する自賠責ですが、今後、同部位、12級8号の予想が難しくなったと思います。
画像判断? 納得いかないなぁ
12級6号:橈尺骨遠位端骨折(60代女性・東京都)
【事案】
信号のない横断歩道を横断中、右折してきた原付バイクに衝突される。救急搬送後、すぐに手術となり、約2ヶ月の入院を余儀なくされた。直後から手首の痛み、不具合に悩まされる。
【問題点】
相手方に任意保険の付帯がなく、加害者との交渉は難航した。毎度のごとく、無保険の相手では自賠責しか頼ることができなかった。また、手首の可動域制限の数値が12級になるかどうかギリギリのラインであった。
【立証ポイント】
本件は抜釘せずに症状固定とした。後遺障害診断では、医師に怒られながら計測に立ち会い、なんとか12級の数値に落とし込むことができた。
また、最終のレントゲンで尺骨茎状突起が癒合せずに遊離骨片となっていることを見つけたため、医師に追記を依頼し、偽関節での合わせ技で併合11級を獲得する方針で申請をかけた。1ヶ月で結果が返ってきたが、尺骨茎状突起の偽関節は認められず、可動域制限のみの認定であった。
尺骨茎状突起骨折の偽関節・・過去、長管骨の変形で12級8号が数件認められていることから、偽関節を主張して再び申請を行ったが、「遊離骨片となっていることは認めるが、骨端部のほとんどを欠損したものとは捉えられない」という理由で認定はされなかった。「偽関節」か「遊離骨片か」・・・根元からそっくり折れなきゃダメ?、骨片の大きさ? 担当者の独断? 認否を分かつ基準が不明瞭に感じた。
認定例 👉 12級8号:尺骨茎状突起骨折(20代男性・東京都)
この認定を覆すことは厳しいと判断し、12級6号で手続きを進めていくことにはなった。モヤモヤが残る案件となった。