【病態】
肘関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と2本の前腕骨(ぜんわんこつ)(橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)が組み合った関節で、上腕骨内側の滑車(かっしゃ)という部分と、尺骨の肘頭とカギ型の部分とが強くからみ合って、曲げ伸ばしの運動が行われています。この部分がはずれることを肘関節脱臼と呼びます。多くの場合、転倒した時に手をついて起こります。
尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼して(後方脱臼)、肘関節の屈伸ができなくなります。外側の橈骨頭だけがはずれる場合は、単に橈骨頭脱臼になります。
※ 骨折と脱臼の合併
肘の脱臼骨折は橈骨頭骨折を合併した肘関節脱臼と、腕尺関節の不安定性を生じる近位橈骨、尺骨骨折に大別されます。これらを含む骨折のパターンは以下の4つに分類できます。
1、橈骨頭骨折+肘関節後方脱臼
2、橈骨頭骨折+鉤状突起骨折+肘関節後方脱臼、いわゆるTerrible triad
3、前方への肘頭脱臼骨折、いわゆる経肘頭脱臼骨折
4、後方への肘関節脱臼骨折、Monteggia 骨折の最も近位のタイプ
【治療】
徒手整復が基本です。肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引すると、通常は簡単に整復されます。整復後、肘関節を安定度に応じて1~3週間程度ギプス固定をします。その後固定を解除し関節の自動運動を行います。
整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯(じんたい)損傷が疑われます。この場合、動揺性を残す後遺障害となる可能性がありますので、靭帯の損傷具合によって、手術による靭帯縫合も検討します。
① ② ③
① 脱臼した橈骨頭の周辺にキシロカイン(麻酔薬)を関節内注射します。
② 助手が上腕をけん引し、一方の手で前腕をけん引、他方の手で関節を押し込みます。
③ けん引を維持したまま、肘を屈曲して整復します。そのまま屈曲位で固定します。
【後遺障害】
上記のような治療がなされれば、後遺障害を残すことは稀です。骨折を伴う場合の可動域制限、変形は骨折を出発点として、骨折による後遺障害が評価されます。靭帯損傷を伴う場合の動揺性については多くの場合12級6号となります。