骨、筋肉、靭帯、神経と解剖が続きました。いよいよ症状別各論に入ります。やはり図・写真の多用は避けられません。長い文章より如実に語ることができます。

■ 病態説明

 顆部骨折(長管骨の両端、関節部分)の骨折すべてに言えますが、骨粗鬆症に関連した中高年に多く、転倒の際、肩からはもちろん、手をついて転倒した際にも受傷がみられます。

<上腕骨近位端の部位名称>

① 上腕骨頭  ② 小結節

③ 大結節   ④ 骨幹部

a: 解剖頚  b:外科頚 

 

 

 
■ 治療

 骨片の部位、転移の程度、肩関節脱臼、さらに神経血管損傷など合併症の有無で治療方針が異なります。つまり観血的手術によるボルト(髄内釘やプレートを使用)やワイヤー固定(Kワイヤーやラッシュピン)、保存療法として三角巾固定、吊り下げギブス固定(ハンギングキャスト)です。  
 

← 骨片の状況によって以下の後遺症が続きます 

 

① 大結節は棘上筋腱部が付着し、転位(ずれて骨がくっつく)が残存すると腱板機能障害や肩峰下インピンジメントの原因となります。(参照→肩の後遺障害 3

② 上腕骨頭は関節内の為、骨膜性仮骨(骨がくっつく過程で接合部分位に薄い膜が形成する)が期待できない。転位が大きいと骨頭壊死を起こす危険性があります。

③ 右図は上腕骨近位端の脱臼骨折です。

 画像骨片が大きく4部位(①~④)に分かれています。右図では骨頭骨片が後方に脱臼しています。これは整復が大変そうです。

■ 後遺障害

 顆部骨折は一般的に骨の癒合に時間がかかるうえに、わずかな変形、骨棘形成でも関節の可動に深刻な障害を残しやすいと言えます。これは足・膝関節や股関節と同様にやっかいです。

① 可動域制限

外転、屈曲で健側(ケガをしていない方の腕)に比べて2分の1以下で10級、4分の3以下なら12級です。
  

部位

主要運動

参考運動

肩関節

屈曲

外転

内転

合計

伸展

外旋

内旋

正常値

180 °

180 °

0 °

360 °

50 °

60 °

80 °

8 級
6 号

20 °

20 °

0 °

40 °

10 級
10 号

90°

90 °

0 °

180 °

25 °

30 °

40 °

12 級
6 号

135 °

135 °

0 °

270 °

40 °

45 °

60 °

 

② 人工関節置換術

 小結節、骨幹部で転位の強いものは、前述のとおり骨頭壊死を発症する場合があります。そうなると人工骨頭置換術です。
 近年新素材の開発とあいまって安全・安価な手術となり、病院の廊下によくポスターを見かけます。これはいずれ股関節置換術で詳しく取り上げたいと思います。
人工骨頭置換術で10級10号が認定されます。