○ 男性の生殖器の損傷・障害
 
 男性では、勃起障害が多く見られます。勃起障害は、泌尿器科におけるリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査を受けて立証します。夜間の勃起も計測しますので、2泊~3泊の入院が必要です。それなりに大変な検査で、実施できる病院と診察できる医師も限られます。

 完全なる検査はリジスキャン検査です。他の検査として、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査、プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査があります。以下に図示・説明します。これらの検査により、勃起を支配している神経の損傷を立証しなければなりません。原因がわからず、とりあえずバイアグラが処方されている方もおりました。薬で改善するのであれば、心因性(勃起不全)かもしれません。
 

1、会陰部の知覚


会陰部とは、俗に蟻の門渡りと呼ばれる外陰部と肛門の間に位置していますが、肛門の周囲を針で刺して痛みがあれば正常とされています。

 

 
 
2、肛門括約筋の随意収縮

肛門に指を挿入、肛門収縮があれば正常とされています。

 

 

 

  
 

 
3、球海綿体筋反射

肛門に指を挿入し、亀頭や陰核をつかみます。肛門が収縮すれば正常、亢進すれば脳・脊髄に、消失すれば末梢神経の障害が予想されます。

 

 9級17号の勃起障害だけに留まらず、「生殖機能を完全に喪失したもの」は7級相当の認定になります。
  
 その珍しい認定例 ⇒ 6級相当:骨盤骨折・生殖機能障害 排尿障害(20代男性・東京都)
 

○ 女性の生殖器の損傷・障害

※左が女性(♀)、男性(♂)

 女性の狭骨盤、比較的狭骨盤についてですが、左側のイラストが女性の骨盤で、左右の寛骨・仙骨・2つの仙腸関節・恥骨結合をつなぐ輪を骨盤入口といい、赤ちゃんが通る産道となっています。女性の骨盤は、洗面器型と呼ばれ、妊娠・出産に適した形になっています。

 骨盤骨折による変形のために、骨盤腔が一部狭くなったときは、産婦人科で骨盤骨の計測を受ける必要があります、産科的結合線が9.5cm未満か、横径の最大距離が10.5cm未満を狭骨盤、産科的結合線が9.5~10.5cmあるいは横径が10.5~11.5cmのときは、比較的狭骨盤といいます。
 
 いずれも、分娩は、帝王切開が選択されることが多くなることから、11級相当が認定されます。以下が弊所での認定例です。この件では産婦人科医に見解を求めるなど、貴重な経験則になりました。
 
 その珍しい認定例 ⇒ 11級相当:骨盤骨折・狭骨盤(10代女性・長野県)
 
 ⇒ ⑩ 後遺障害のポイント (不安定型)Ⅳ