骨折しても、骨がきれいにくっついた場合、重大な後遺症は残らないのが一般的です。

 自賠責保険・労災では、障害の系統・序列を定めており、膝関節の場合、その序列を以下のように考えています。
 
1、切断肢 ・・・脚がズタズタで整復不能から切断
 
2、機能障害 ・・・可動域制限、あるいは動揺関節
 
3、変形 ・・・骨折後、曲がってくっついた
 
4、神経症状 ・・・痛み・しびれなど不具合
 
※ 醜状痕 ・・・傷や変色の残り。上記に被って認定されるので、別枠のイメージです。
 
 この中で、4の神経症状は、通常、12級13号と14級9号の選択になります。両者の賠償金は3倍ほどの開きになることもあり、賠償交渉を担う弁護士にとって注目の認定となります。

 その認定・判断を分ける要素は、器質的変化の有無です。簡単に言うと、骨折後の偽関節(結局、くっつかなかった)、変形癒合(形が変わった、きれいにくっつかなかった、余計な部分までくっついた)、転位(ズレてくっついた)、稀なケースですが異所性骨化 ※(余分な骨が形成された)などです。

 「すごく痛いから12級、それなりなら14級」で区別しているわけではありません。画像や検査結果で他覚的に証明されるか否か、つまり、証拠の有無が両者を区別しているのです。

 本件も、関節面の不整を勝負所とみて、癒合後の水平断画像を添付、アピールしました。
 
※ 異所性骨化・・・本来骨組織が存在しない部位、例えば、筋膜、靱帯、関節包などに異常に骨形成が起こる現象。骨梁構造を認める点が石灰化との違いとなる。好発部位は骨盤、股関節、膝関節、肩関節、肘関節など。
  
画像が勝負を決めます
 

12級13号:脛骨高原骨折(50代男性・東京都)

【事案】

自動二輪車にて走行中、右車線から追い抜いてきた車が急に左折したため、巻き込まれるような形となり衝突、受傷した。直後から強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

事故から半年が経過してからのご相談だったが、既に膝の可動域制限は12級の数値を逃しており、靭帯や半月板に問題なく、膝関節の動揺性もなかったので、神経症状の等級認定に向けてサポートすることとなった。

【立証ポイント】

すぐに病院同行し、現状の把握と主治医の方針を伺った。術後1年で抜釘し、1~2ヶ月後に終了予定とのことだったので、その間、復職へ向けてリハビリ病院でリハビリをこなすこととなった。

事故から1年3ヶ月後の後遺障害診断時には、自覚症状をまとめたものを主治医に渡し、12級を確保すべく丁寧な後遺障害診断書に仕上げた。また、関節面の癒合状態にわずかな不整がみられた。ここが運命を分けるポイント、それをアピールすべく事故当日のCT画像と症状固定時のレントゲン画像の打出しも添付し、勝負をかけた。


14級か12級か・・・関節面の不整を認めていただき、見事12級13号認定となった。