久々の神経心理学検査シリーズ! 前記事 👉 高次脳機能障害の立証 3 <神経心理学検査>
 
佐藤が担当します!
 
 先日、言語聴覚士の方と打合せする機会があったのですが、「高次脳機能障害では、どのような検査がどこまで必要なのか分からなかったので、最初は短時間でできるMMSEとFAB検査を実施しようと思っています。」と言われたことがありました。MMSEは認知症が疑われる患者や入院当初に比較的実施される検査なので、よく目にすると思います。そのため、今回はFAB検査について記載していきます。
 
 FAB検査とは、Frontal Assessment Batteryの略で前頭葉機能検査のことを指します。Frontalは前頭葉、Assessmentは評価、Batteryは総合テストを意味しています。尚、FAB検査は6つの課題で構成されています。それでは順に見ていきましょう。
 
1.類似性

この問題は検査者が同じジャンルの単語を2つ、3つ言うので、そのジャンルを回答するというものです。例えば、「野球」、「サッカー」は?という質問に対しては、「スポーツ、球技」などが正解となります。このような問題を3問出題し、1問につき1点、3点満点で判断します。
 
2.語の流暢性

 この問題は一つの文字から始まる単語を60秒以内にできるだけたくさん言ってもらうものです。但し、人の名前や地名は除きます。例えは、「さ」で始まる単語の場合には、「砂糖」、「魚」、「侍」などです。「佐藤」や「埼玉県」はカウントされません。10語以上出せた場合は3点、6~9語は2点、3~5語は1点、2誤以下は0点となります。
 
3.運動プログラム

 この問題は検査者と被験者が鏡の状態となり、片方の手で3種類の動作を3回繰り返し行います。(3回繰り返したものを1回と呼びます。)最初の1回は検査者と一緒に行い、その後は被験者のみで行ってもらいます。単独で6回連続してできた場合は3点、3回連続してできた場合は2点、最初の1回(つまり検査者と一緒に3回できた)ができた場合は1点、それすらもできなかった場合は0点となります。
 
4.葛藤的指示

 この問題は検査者が1回机を叩いたら、被験者は2回机を叩く、検査者が2回机を叩いたら被験者は1回机を叩くという法則を伝えます。その法則を組み合わせたものを検査者が10回行い、間違いがなければ3点、1~2回の間違いで最後まで行えた場合は2点、3回以上間違えるが最後まで行えた場合は1点、4回以上連続して間違えた場合は0点となります。
 
5.抑制コントロール

 この問題は「4.葛藤的指示」の法則が変わるだけです。検査者が1回机を叩いたら被験者も1回机を叩く、検査者が2回机を叩いたら被験者は叩かないという法則を伝えます。採点基準は「4.葛藤的指示」と同じです。
 
6.被影響性

 この問題は被検査者に「手のひらを上にして、両手を机の上に乗せるよう」指示し、その上で検査者の手を握らないよう伝えます。検査者は目を合わせず無言で被験者の手に自身の手のひらをそっと付け、その反応を観察します。被検査者が握ってしまった場合は、再度手を握らないように伝え、同じ動作を繰り返します。指示通り、手を握らなければ3点、戸惑って何をすればいいか尋ねた場合には2点、戸惑うことなく手を握ってきた場合は1点(再度握らないよう伝え、その指示を守ることができた場合も含む)、再度握らないよう伝えても握ってくる場合は0点となります。
 
 1~6の検査を行い、18点満点のうち12点以下の場合には、前頭葉機能の低下と判断されます。尚。65歳以下の場合には15点以下であっても前頭葉機能の低下を疑われるようです。(若年性アルツハイマー等)
 
 この検査もMMSE同様、主に認知症患者のための検査であることが分かりますね。高齢者の高次脳機能障害に関するご相談が年々増加しています。頭部外傷とは違ったお怪我であっても、長期入院や運動不足、ストレスによって認知機能が低下しているといったご相談も多くいただいております。高次脳機能障害と認知症を切り分けることが、後遺障害認定において重要となってきます。ご相談する際には、高齢者の高次脳機能障害を十分に理解している事務所へのご相談が望ましいと思います。
 
※ 検査の内容についてもっと細かく記載してもよかったのですが、ルールを前もって知っているということは、本来の検査数値を反映するものではないと思いましたので、例題や具体的な指示についても曖昧にしています。