本件もコロナの影響下、症状固定が遅れに遅れました。長期間の治療費をみて頂けることはありがたいことです。しかし、治療期間が長いということは、回復が進んだ結果として後遺障害等級が薄まる危険性があります。
お金より、お体の回復が第一であることは言うまでもありません。しかし、積極的な治療が一段落すれば、適当な時期に、それもなるべく早く症状固定を推奨しています。別に治療がそこで終わるわけではありません。症状固定後は健保を使って治療を続けるだけです。
被害者さんの「相手の保険会社に何が何でも治るまで治療費を出させる!」意気込みは解りますが、中途半端な回復まで引っ張った結果、もらえるはずの後遺障害保険金が数10~100万円単位で下がり、その損失は得てして、相手に負担させる治療費より高額なのです。この点、被害者は損得勘定をすべきと思います。
これは、ズルい計算とは思いません。なぜなら、障害が今後軽快するのか、悪化するのか、未来のことはわかりません。誰も保証はしてくれないのです。だからこそ、症状固定という区切りで障害を決めるしかないのです。この選択こそ、被害者の権利と思っています。
本件はコロナはじめ様々な事情から延びてしまいましたが、
等級はなんとか薄まらず、想定通りに確保できました
10級10号:右橈骨遠位端骨折・左橈骨遠位端開放骨折、14級9号:脛骨高原骨折、9級16号:顔面線状痕(40代男性・埼玉県)
【事案】
バイクで幹線道路を直進中、右折してきた車に衝突される。救急搬送され、目視(左手首は開放骨折)・XP・CTにて骨折が判明、ただちに手術となり、およそ2ヶ月の入院と長いリハビリ通院を余儀なくされた。
【問題点】
治療期間に体調悪化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、症状固定まで4年以上も費やしてしまった。可動域制限の中途半端な回復が心配であった。さらに、顔の傷も薄くなる危険性があった。
【立証ポイント】
まず両手関節、本来であれば抜釘する案件ではあるが、経過や状況を鑑み症状固定とした。最後のリハビリから約2年経っており、両手関節とも拘縮が進んでいた。つまり、リハビリをサボったと疑われる可能性もあったが、ケガがあまりにも重篤であったせいか、両手関節とも難なく10級10号が認定(併合9級)となった。
膝に関しては、自覚症状をしっかり伝えるだけで14級程度は堅いであろうと予想、案の定14級9号が認定された。
顔面は、3年半ぶりに形成外科を受診し、残存した線状痕を計測していただいた。また、モノフィラメント知覚テスターを用いた知覚検査も実施していただき、神経症状も乗せた結果、想定通り9級16号認定となった。
以上から、最終的に併合8級にまとめ、連携弁護士に引き継いだ。