来月からパートⅡの放送が決まったこのドラマ、現在、昼の時間帯に旧シリーズが再放送中です。遅れませながら、録画してチェック中です。
窪田 正孝さん主演ですが、放射線技師を主人公にしたドラマは初かと思います(実は放射線科医らしい。つまり医師免許を持ちながら、わざわざ放射線技師をやっている)。医師以外の医療従事者のドラマと言えば、何といっても看護師、ナースの話しかなかったと思います。その他、歯科医はあったと思いますが、理学療法士や柔道整復師のドラマは知りません。このドラマは医療関係者の注目はもちろん、私達にとっても興味深い場面ばかりです。普段接する整形外科医に次いで、放射線科医や放射線技師とも打ち合わせすることが多いのです。
以前もドラマ「コードブルー」からいくつか話題としましたが、私達の経験になぞらえて続けてみましょう。
第2話:「成長痛ではなく、MRI撮ったら骨肉腫だった・・」(秋葉のつけたタイトル)
小学生の男の子が膝の痛みを訴えています。レントゲンで問題なし、単なる成長痛と診断されました。
※ 成長痛…幼児から中学高校までの成長期の脚に多く起こる痛みの総称です。子どもが夕方から朝方にかけて膝のまわり・足の甲部分・かかと・股関節や足の付け根部分に痛みを訴えるものの、朝になると痛みは消え、検査をしても原因が見つからないことになります。このような場合は「成長痛」と診断、成長期の急激な骨の伸長による痛みが原因とされています。
↑この画像は子供さんの足首(脛骨遠位端)の成長線(骨端線損傷の診断)
しかし、五十嵐技師(窪田さん)は、疑問に思い、レントゲンをフィルムに焼いて精査します。この場面で、遠藤 憲一さん演じる小野寺技師長のセリフ「昔はフィルムの方がコンピューター画面よりきれいに映ると言われたが、今は画面もきれいになって、差が無くなった(うろ覚えのセリフですが)」と言っていました。現在、秋葉事務所でもレントゲンフィルムの保存はなく、すべてディスクです。初期のCR(レントゲンをコンピュータ画面で描出)はレントゲンに比べて落ちると思いましたが、現在はCRでもまったく問題ありません。むしろ、拡大できて、計測できて、線や文字も入れられますので便利です。10年前に下肢の短縮障害の立証で、レントゲンフィルムを繋げて、窓に貼り付けてメジャーで骨の長さを計測したことを思い出しました。かつてのアナログ時代から隔世の感、小野寺技師長と同じ感慨を持ちました。
話を戻しますが、五十嵐技師はきめ細かく描写されたレントゲンから、子供の脚(脛骨)の左右差に注目しました。そして、右膝部、脛骨近位端に不自然な影を見出します。そこで、本来、医師の指示で検査すべきところ、技師の立場から「MRI検査をして下さい!」と訴えるのです。
放射線技師の分際でMRI検査を訴える ⇒ 主治医に「無駄な検査だ」と反対される ⇒ 頼み込んで検査したら ⇒ 骨肉腫が発見された! ⇒ (検査を反対していたくせに)医師が患者から感謝される、つまり、早期発見のお手柄は放射線技師でなく医師に・・これが、このドラマの王道パターンとなっているようです。正確に医学的検証をすれば、すこし飛躍した話かと思いますが。
治療側による病変の発見・確認といった目的に外れますが、五十嵐技師に同じく、障害の立証のために左右両方の画像検査をお願いすることがあります。私達も画像検査の依頼で、医師から「ケガをしていない方の脚を撮ってどうするの? 過剰医療じゃないの#」と不興を買うことが少なくありません。しかし、人体は基本的に左右対称であることから、左右比較は骨折後の変形癒合の証明になるのです。思わず、五十嵐技師に感情移入してしまいました。
また、MRIの有用性について言えば、レントゲンでは骨の表面は映りますが、中部まで映りません。私達の業務では、足のかかとの踵骨や足首の距骨の骨折などで、癒合の完了を確認するためにMRI画像を欲しています。表面に骨折線が消えても中身は癒合不良がよくあるからです。また、脊椎の圧迫骨折でも、事故で潰れた新鮮骨折か、加齢と共に自然につぶれた陳旧性骨折かの判別にも、MRIが有用であることを常識としています。
わぁもう放送2回目から、私達の仕事の写し鏡のようなエピソードてんこ盛りです。頑張れ五十嵐技師! 本田 翼さんも広瀬 アリスさんも可愛いぞ!
つづく